リアリティのないリアル

今日から授業が始まった。長い長い休暇の終わり。いつものように7時に起きて支度した。けれど洋服に悩む必要も席を取っておく必要もないらしい。淹れたてのコーヒーと読みかけの本をもってって、時間がくるのを待つのもいい。

授業が始まる。誰もいない部屋で機械に向かって話しかける教授、ある人は眠たそうに、ある人は緊張の面持ちで、またある人は真剣に、授業をきいている。皆それぞれ、新学期のスタートをきっていた。

興味深い授業だった。リアルとフィクションの話。人間はテレビや映画などのメディア、つまりはフィクションの世界に刺激を求めてきた。そうして平和な日々を過ごしてきた。平和なリアルの世界で見るフィクションは刺激的でおもしろい。確かに。

最近はどうだろう。得体の知れないウイルスにその平和な暮らしを脅かされながら生きている。リアリティのないことがリアルで起こってしまっている。そうして人々の興味は連日報道されるニュースに変わった。恐ろしいリアルをなんとか乗り越えようとする。新薬の開発、国の政策、予防方法。そんなものを期待してニュースを見るようになった。人々がフィクションのようなリアルを生きるいま、人々にとってメディアはフィクションを提供する媒体からリアルを取り戻す媒体になった。

私は私のリアルから逃げ出すように、本を読み、映像を見る。フィクションの世界へ逃げる。

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