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6年待った、バニラズ武道館。〜②ライブ後〜

初めての日本武道館。開演前の会場は、見慣れたデザインの服を身に纏ったファンが立ち並ぶ。
「ただいま、密の状態になっています!速やかにお進みください!」という独特のアナウンスが係員から発せられる。
長蛇の列を進み、遂に場内へ足を踏み入れた。
広がる八角形の会場。堂々と掲げられる日本国旗。中央に広がる69(ロック)のステージ。定刻より少し遅れて、真っ暗になりライブが始まった。

意外にも、メンバーが登場した瞬間は僕の中であっさりしていた。それは楽しみなあまり、会えることを明確にイメージしていたからだと思う。僕の涙腺が崩壊したのはそのあと。西側の席だった。いつもと同じ、だけどさらに魂のこもった、プリティさんの思いっきり叫ぶ歌声にもう耐えきれなかった。文字通り、生き返った事実を知っているから。その過程をファンとして一緒に見てきたから。今その声が、プリティさんの作った新曲で、ド直球な歌詞で日本武道館に響いている。その事実が誇らしく、素直に感動した。こういう場面で響くのは間違いなくストレートな歌詞だと痛感した。

yeah 取り返しにいけよ
yeah 逆らっていけ
yeah このままじゃあまだ終われねぇよな

(『バウムクーヘン』)

バンドとして新しい形を定着させた、全員が作詞作曲して歌うという取り組み。正直僕は、ビートルズのことをよく知らない。おそらくそういうファンは多くいると思う。牧さんが話していた、日本武道館で初めてライブをしたロックバンドだという事実や、メンバーが全員歌っているなどは、バニラズから学んだ。ロックの歴史を知った。
そのリスペクトを凄く良い形で魅せていたのがセイヤさんのボーカル曲。歴史に詳しくないものの、僕はロックに対して、所謂スクールカーストの中央値以下の人が聴く音楽だと思っている。だからぶっ刺さる。くそったれな世界に提言する、僕らの言葉を代弁してくれる、別に本場なんか知らなくてもいい、バニラズが創るロックンロールそのものだった。

やりたいことは山ほどあるぜ
邪魔すんなよ!俺が俺でいる為に
LET'S GO!!ROCK'N'ROLL!!!

(『JETT ROCK SCHOOL』)

さらに僕の中で響いたのは、何度も見てきたしんちゃんのコールアンドレスポンス。加入当初はおぼつかなかった。別にディスではなく、歴史あるチームに入る上でその緊張感は当然だと思うし、それからどんどん重しが外れてしんちゃんのターンとして定着するのを見てきた。しかしこの日、みんな声が出せない。だから手拍子でコールアンドレスポンスを実現した。凄く良かった。その流れから、しんちゃんが加入して一番最初の曲。当時のお披露目ライブやMVが鮮明に浮かんだ。僕はまた泣いていた。

不可能を可能にしたって束の間の休息と苦悩
板挟みの感情揺さぶってふざけたトークでバカを装った
顔色うかがうことで自分誤魔化すのはもうやめて

(『カウンターアクション』)


以前のシングルやアルバム曲は、とにかく一曲一曲に込められた思い出が蘇る。当時の景色、感情、匂いまでもが感じ取れて、タイムスリップする。それでいて、日本武道館でバニラズの曲を聴いている、という事実に感極まる。
本編は、オリエントで始まり、人間讃歌で終わった。
ライブ中も幾度となく語ったバニラズの歴史の中で、これ以上の集大成はないと思った。

アンコール1曲目では、これまた大学時代の思い出を呼び起こす爆発を見届けた。あのワンマンで、あのフェスで、ラストにやってくれた瞬間が蘇った。
そしてアンコール2曲目。本当にラスト。ここまで歌詞が生きることがあるだろうか。こういうところにコンテンツとして残すことの強さを感じるし、それをバニラズやファンが大切に育ててきた結果が現れ、そしてこれからも大切に育てていくと確信する瞬間だった。

どうかまた会える日まで
さよならは言わないよ
笑顔でいてほしいから

(『ギフト』)

ライブ前、僕は一人で東京に来たことを必死に肯定しようとしていた。ライブに行きたくても行けない、という事実は、物理的、金銭的、世間的…色んな理由があって、それはどれも課題だと思う。正解不正解はなく、まさに鏡で牧さんが歌っているように、「変わるもの 変わらない答え」を自分で探すんだ。
ずっとずっと楽しみにしていたライブを終えた後、僕の中にあった迷いやもやもやは消え去っていた。

必ずまた会おう。牧さんが言ってくれたように、生きていれば必ず、また。
僕はもぎる前のチケットを、次は必ず一緒に行こう、と約束した友達に贈ることにした。

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