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フレネルの波動光学

オーギュスタン・ジャン・フレネル(1788-1827)は,ナポレオン時代のフランスの数学者です.

■フレネルレンズ

フレネルは,フレネルレンズ(1819)やゾーンプレートの発明でも知られます.注)ブリタニカ(https://www.britannica.com/technology/Fresnel-lens)によると,レンズの表面を同心円状のリングに分割するというアイデアは古く,Georges-Louis Leclerc de Buffon(1748)で,フレネルは,1821年に灯台レンズの製造に採用したとあります.ビュフォンもフランスの数学者で確率論の実験「ビュフォンの針」で有名です.

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フレネルレンズの概念(断面図はwikiより)

灯台の凸レンズは巨大で重いのが問題でしたが,フレネルレンズによりこの問題を解決しました.今日ではプラスチックを用いることで,この原理を使った平板レンズが,ルーペなどの小さいものから,太陽光集光用の大型の製品まで作られています.

■ゾーンプレート

フレネルゾーンプレートは,単色の光を集光することができます.X線や光や電波は,皆,電磁波の仲間ですが,ゾーンプレートは,屈折させて集光するレンズが作れないX線に対しても集光することができます.

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■アンテナとフレネルゾーン

フレネルゾーンは,無線通信でも使われる言葉です.無線通信で「見通しが良い」ということは,送信アンテナと受信アンテナの間に障害物がなく,お互いにアンテナが見通せるという意味ではなく,フレネルゾーンが確保されている状態を指します.フレネルゾーンは,送信アンテナと受信アンテナの位置を軸とする楕円体の形で,第1フレネルゾーン,その外側に,第2フレネルゾーン…と広がっていき,隣り合うゾーンの位相は互いに反対です.

私の家の立地では,携帯4Gの電波強度が非常に弱いので,屋外にドナーアンテナを設置してもらっています.私の場合では,800MHz(18バンド)ですが,例えば基地アンテナからdの距離があるとすると,第1フレネルゾーン半径r_1は,r_1=√(λ・d)/2=9.7mとなります.ただし,λは800MHz電波の波長37.5cm,d=1,000mを用いた.第1フレネルゾーンの楕円体の60%程度が確保できれば良い通信状況と言えますが,この途中で障害物が邪魔をするのです.一般的な話をすれば,地上から高い位置に受信アンテナを設置できれば,第1フレネルゾーンの60%確保がしやすいということになります.

レンズアンテナと反射型アンテナ

電波望遠鏡,衛星放送アンテナは,良く知られるように反射型のパラボラアンテナが使われます.これは,特定の方向からやってくる平行電波を集光する反射型アンテナです.しかし,ゾーンプレートの原理を使って集光するアンテナもあります.

一寸,脱線しますが,ルネベルグレンズは,球形の誘電体レンズ(同心殻で誘電率を変化させている)で,マイクロ波電波を屈折させて集光するレンズアンテナです.球体が乗っているレーターの写真を見たことがおありでしょう.私は昔,衛星放送受信用のルネQアンテナを使用していました.残念ながら今は販売されていないようです.

■フレネル反射率

フレネルは若くして(39歳)で亡くなりましたが,フレネル反射率は死の4年前の発表(1932)です.

物質の表面や界面で反射や透過する光の電場の振幅は,電場の界面平行成分と電束密度の界面垂直成分は連続になります.
物質0と物質1との界面を問題にするとき,この界面で反射される電場の振幅の比ρをフレネルの振幅反射率といいます.エネルギー反射率はρ^2です.
屈折率の低い物質から高い物質に向かう界面で反射するときには,ρが負になりますが,これは振幅の位相が180°変わることを意味します.エネルギー反射率はρの2乗なので負にはなりません.

反射図

■フレネルは,光学の分野で色々な研究をしました.そこで現れる数学「フレネル積分」の話をするのが,実は本題ですが,長くなったので,稿を改めて別の機会にします.



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