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仮称いぬカプセル

少年がリュックを背負っている。
なかなか個性的なフォルムで明らかに立体構造がある。なかに潰れると困るものをいれるタイプのリュックだ。ただしカタチはちゃんとリュック様(よう)で、上にファスナーが付いていて両脇には小さな小物入れのファスナーも見える。一般的なリュックと決定的に違うのはカバンに大きな窓が付いているところだ。ピクミンのオリマーが乗っている宇宙船のように丸くてドーム状のナウシカが喜んだ王蟲のぬけがらだ。そこから中がみえるのだがどうやら動物が入っている。いぬだろうか。窓の高さには胸が見えていて、お座り状態であることしか確認することができない。
少年的にはピカチュウを肩に乗せているような気分なのだろか。日常生活に相棒が寄り添ってくれている感覚。とてもほほえましい。自由に走り回ったりはできないので、いぬ(仮)的にはどうなのかわからないが吠えてもいなかったし意外と気分のいいものなのかもしれない。
このリュックを見て「すきなものを身近に置いて生活するのもわるくないな」とあたまをよぎった。なにも生き物だけではない。カレーや寿司、グラタンにハンバーグでもいい。なんならとうふだってよさそうだ。スーパーで買っただけでは買い物帰りの荷物でしかないかもしれないが、あんなふうなこだわりのお気に入りカバンのようなカプセルなんかにいれて持ち運んだら素敵かもしれない。小さな窓が付いていて中の様子が見えたりして。食品というより、相棒になる気がする。
たとえばより愛着がわくような工夫として、カプセルの着せ替えとか、LEDで好きな色に光らせたり、とうふのかどをぶつけ合ってどっちがくずれるかバトルしてもいい。お好みの調味料用のミニカプセルも一緒にぶら下げて「周りのみんなと差をつけろ!」といった調子だ。
お腹が減ったら食べてもいいし、保冷剤もいれておけば衛生的にもましになるなぁ。などと、どんどん相棒感がなくなってきたところで、隣のテーブルの子連れのお母さん二人組が「この椅子借りてもいいですか?」とたずねてきて我に返った。
今いるフードコートはがらがらなのだがなぜか自分の周りだけぎゅうぎゅうに人が集まってきていた。
当初誰もいなかったのでひろびろ使っていた4人席(いまは椅子が2脚しかない)を離れると、本当にそのへんの席以外はがらがらで、もしかして、なんかいぬカプいぬカプぶつぶつ独り言を言っていたのでアイデアを盗み聞きしに集まってきたのかもしれない。
そんなわけないか。

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