新人研修2

前回のように、入社してすぐ行われるような
研修らしい研修はなかった。
週に一度ぐらい、店舗が閉まってから
入社して3か月程度の者ばかり集められて
簡単なサイズの測り方などを教わった記憶はある。
そしてそれらは
「自分たちのためになることだから」という理由で
残業代は出なかった。今考えるとひどい話だが
そういうのが罷り通っていた時代でもあった。
ガソリンスタンドで働いていたというU、
なにやら土建屋で手伝いをしていたというN、
この会社でアルバイトしていて、そのまま社員に
なったというK、自衛隊を辞めて入社してきた
Mという男たちと一緒に、その手の「残業なし研修会」
に参加した。
彼らはまったく洋服に興味などなかったので
その研修もまったく無意味なものになっていたが
何もしないよりはマシだったのだろう、その後も
何度か開催された。



年齢は一つかふたつ下だが、入社は2年ほど
早かった男がいた。Yという名前だったと思う。
これがなかなかくせのある奴、平たく言うとイヤな
男で、新人をいじめるのを日々の楽しみにしていた。
私はそれほど直接の被害はなかったが(というのも、
直接イヤなことをされたらすぐに反撃するからだろう)
いろいろとイヤな目には遭った。
まず私をあごで使うことに快感を覚えていたようだ。
当時は電子メールなんてものはなかったので、
取引先との連絡は電話かFAXだった。
店舗にはFAXがなく、別棟の本部に設置されていたのだが
Yは送受信にわざわざ本部まで行くのが面倒くさい。
Yが必要とするFAXの送受信はすべて私の仕事になった。
「俺の手足になったらエエんや」と度々言っていたYから
の指示は、3回に一回は無視した。
舌打ちしたり睨んだりしていたようだが完全無視した。
やがてFAX送受信を頼まれることはなくなり、
1年後に彼は他の店舗に異動していった。
ほどなく何やら大言壮語の末退職したようだ。

(続く、か?)

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