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#18 バクテリアも物理で壊す時代に

今回は面白い論文を発見したのでアウトプットしていきます。

その論文はこちら⬇
Arron Elbourne et al. "Antibacterial Liquid Metals: Biofilm Treatment via Magnetic Activation" 2020 ACS NANO
<目次>
・概要
・背景
・特徴
・学び

概要

抗生物質が効かないバクテリア(通称スーパーバグ)を液体金属と磁石を用いて破壊することに成功しました。

背景

本来人間に悪影響を及ぼすバクテリアに対しては化学反応を引き起こす「抗生物質」を投与することで、その影響を軽減していました。
しかし、バクテリア側もその抗生物質に対抗して変異を起こし、抗生物質の影響を妨げる形に変化していきました。
この抗生物質に対して耐性を持つスーパーバグの存在が脅威となっています。
今まで抗生物質が効いていたバクテリアも近い未来スーパーバグ化することでやっかいな病気につながる危険性があります。

特徴

本研究では、そのようなスーパーバグに対して化学的ではなく物理的に対抗しようとしている点があたらしいです。

具体的には「液体金属と磁石を使う」というものです。
液体金属は、磁石にくっつくという金属の性質を持ちつつも、広く浸透するという液体の性質を持つものになります。
今回ガリウムに加え、磁力に反応しやすい鉄やニッケルなどを用いておち、人間の体温では液体になり、水中では極小の球体で存在します。

彼らは合金の成分比を変え、磁石の強さを変えることで、鋭いナイフ型に変形させることに成功しました。

そして、実際に黄色ブドウ球菌を標的にして確かめてみると、90分で黄色ブドウ球菌の99%を破壊することができました。

人体への影響は気になるところですが、彼らはヒト細胞にたいする同様の実験データから問題ないと語っています。

というのも、バクテリアとヒト細胞を比較すると、大きさが根本的に違うということがあります。
ヒト細胞はバクテリアと比べて表面積が極端に大きいため、液体金属ナイフで破壊することはできません。

また、ヒト細胞はバクテリアと比べて柔軟性があるため、同じ圧力で液体金属ナイフが刺さっても問題はありません。

学び

化学的な手法ではなく物理的な手法で解決するという見方に驚きました。
既存の考え方に固執することなく新たな手法を取り入れていく価値を感じました。

今回はじめて論文紹介みたいなものをしましたが、意外と面白かったです。
またなにかおもしろい記事見つけたらここでアウトプットしていきます。

SezakiN