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おばあちゃん日記その8【できることがどんどん減っていく現実】

「ダメだ、もう疲れちゃった」

86歳のおばあちゃんの最近の口癖はこれで、必ず毎日、5分おきくらいに言っている。

さすがにこれだけ毎日頻繁に言われると、言霊のせいなのか、おばあちゃんの呪いなのか、私も疲れてきてしまう…。

空腹のせいなのかと思い、おばあちゃんの大好物のバナナを間食用に渡したり、ご近所のおじいちゃんおばあちゃん愛用のエナジードリンクのおすそわけをもらったので、うちのおばあちゃんにも渡してみた。

「はじめて飲むわ。ちょっとは元気になった気がする」

と、そんなに即効性があるのかはさておき、気持ちの面ででも元気と感じることができたならば、それはそれでしあわせなのかもしれない。

「ごめんね、疲れちゃってもう何もできない」

名作漫画『あしたのジョー』の燃え尽きたジョーとまったく同じ姿で壁にもたれかかる、おばあちゃん。

内心、いつも特になにかやっているわけではないから、こちらとしては大きな変化はないように感じているものの、おばあちゃんは元気な時はそれなりに動いているつもりなのだろう。

(散らかりまくってるのは目を瞑ってください。笑)

おばあちゃんができることは日に日に限られてきており、現時点で心から安心してお願いできることは、洗濯物関係と食器洗い、そして料理の下ごしらえ。

料理に関しては味覚がだいぶ衰えており、以前、味噌汁の味付けをお願いしたときには「薄めだけどいいかしら?」と言って味付けしてもらったものを飲んでみたら、濃くて驚いた。

そうして、できることをどんどん制限していくということは、おばあちゃん自身の自己肯定感も下がるだろうし、お願いできることはどんどんしたいと思いつつも、なかなか難しい現実がある。

最近では、いよいよ皿洗いがめちゃくちゃ雑になってきて、先日は豚キムチのお皿が唐辛子の赤色が広範囲に付着したままだったり、梅干しのタネが皿の後ろにくっついていたりと、ちょっと目を疑うような皿洗いの芸が繰り広げられている。

「これ洗ってないよね?」とついつい言いたくなる衝動を抑えられず、それを言葉にすると「はいはいはい、何もできませんよ」と拗ねてしまうから、これまた難しい。

おそらくは集中力が切れているからなのだと思うが、だからといって、皿洗いも禁止!とすると、残るは洗濯物関係しかできることがなくなってしまう。

そもそも洗濯物も、私たちが畳む時は収納を考えて、人物別に衣服を分けながら畳んで置いて、キッチン用タオル、浴室用タオル…など用途別にも分けながら行うわけだが、おばあちゃんにはそれがわからない。そのため、すべてがごっちゃ混ぜに置かれてしまうので、子どもたちが自分の衣類を探すのにひっくり返して、また畳み直しなんてことも日常茶飯事。

そんなわけなので、おばあちゃんに完璧を求めることはとうの昔にやめた。

家事をこなしてもらうという感覚よりは、おばあちゃんのやりがいのために、家事という作業を通して「自分はまだできる」という感覚を失わないようにしてもらっているという感じだ。

(100歳まで生きる!と宣言してたのが遥か昔のことのよう)

暑い夏が続いていく中で、86歳にとっては体力の消耗も激しいのだろう。

めざせ100歳と言っていた夏のはじまりから一転、

「もうここまで頑張って生きたからいいでしょう」

と気弱気味な最近。来月はそんなおばあちゃんの87回目のお誕生日がやってくる。

下町育ちのおばあちゃんは、うなぎが大好きなので、誕生日はうなぎを食べにいくのが恒例。

87回目のお誕生日もうなぎを食べに行けますように。

みなさまも暑い夏、ご自愛くださいね。

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