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新築住宅のエアコン計画について

我が家では、毎年壁に穴をあけ、様々なエアコン計画を実験しています。現在、天井点検口の数は8か所。特に、夏の2階のエアコン計画が難しい。

そんな「日本で最も自宅でエアコン実験をしているであろう男」が行き着いた、エアコン計画の王道パターンをご紹介します。

エアコン無し/1台で暮らすのは無理

「エアコン無しでエコな暮らし!」などというPRを時々見かけますが、どれだけ家を高性能にしても無理です。唯一方法があるとすれば、耐えること。確実に身体に悪いのでやめましょう。

また、「エアコン一台で快適な暮らし!」という家も危険。こうPRする会社のほとんどが、全館空調システムを導入していると思いますが、大きな落とし穴があるので、後ほど説明します。

結論:新築住宅のエアコン計画の王道パターン

■1階
リビングに高性能壁掛けエアコン1台(14畳用200v)
■2階
各居室に最低限性能の壁掛けエアコン1台ずつ(6畳用)

めっちゃ普通~3周くらい回って、いろいろ試した結果、これが王道です。

冬は難しくない

冬は、高性能住宅(オール樹脂サッシ、UA値0.6以下、C値0.7以下)であれば、1階1台でいい感じになります。温かい空気は上昇するので、1階の暖気が2階に上昇し、2階も暖かくなります。

1階よりは少し寒いですが、主に寝るので布団をかけるのと、人間の身体は熱を発することで、ちょうどいい感じになるわけです。

1階エアコンのサイズ

エアコンの畳数表示は、昔の無断熱住宅を基準にしてるので、今の家で畳数通りにエアコンをつける、超オーバースペック。高性能住宅であれば、畳数表示の4~5倍くらいまで行けます。

おすすめは、最もエネルギー効率が良い14畳200V。14畳×4~5=56畳~70畳(35坪)なので、だいたい35坪以下の家なら、14畳200VでOKです。

1階エアコンのタイプ

壁掛けエアコン最強です。壁掛けエアコンが、各メーカー開発に力を入れているので、性能コスパともにGOOD。エネルギー効率が良いので、光熱費が抑えられます。

一方、天井カセットエアコンや全館空調に使われる特殊エアコンは、エネルギー効率が悪く、交換費用も高いので、一般住宅には不向きと言えます。光熱費にびっくりするかもしれません。

1階エアコンのグレード

いろんなグレードがありますが、●●イオンとか〇〇フレッシュとかいう類は、お守り程度に考えましょう。あと、加湿機能も効果は限定的なので、不要です。

必要なのは、内部クリーン機能と風量。フィルター掃除を小まめに行うのは必須ですが、内部クリーン機能があるとないでは、エネルギー効率に大きな差がでます。

また、広い空間を空調するので、それなりの風量が必要。各メーカーで設定は違いますが、1階のエアコンは、上から2番目くらいのグレードがちょうど良いと思います。

床下エアコン(暖房)は?

悪くはありませんが、デメリットや注意点があるので、知っておきましょう。

・夏は役に立たない
床下エアコンは冬専用。冬は暖気が床下からじわ~っとリビングに上がってきますが、夏は冷気が十分にリビングに上がってこないので、別途壁掛けエアコンが必要。もったいない。
・住宅会社の慣れ
基礎断熱の精度、基礎の気密性、エアコン設置箇所の気密性などの正しい施工があって初めて効果がでます。施工に慣れていない住宅会社での床下エアコン導入はリスク高めです。

難しいのが夏の2階

夏のエアコン計画、特に2階の計画は実に難しい。冬のように、1階リビング1台では、無理です。理由はこの通り。

冷気は下に沈みます。コンビニのアイスコーナーに蓋がなくても冷えるのはこのため。なので、1階で冷やした冷気が2階に上がらず、かつ、屋根からの熱をもろに受けるので、2階はめちゃ暑くなります。

さらに、就寝時に人間が熱を発するので、ちゃんと冷房しないと寝苦しく、体調を崩してしまう原因に。ということで、1階リビングの1台では、夏の2階は地獄になります。

各居室に1台ずつは勿体ない?

「でも、6畳の部屋に6畳用はオーバースペックですよね?各部屋に1台ずつって、もったいなくないですか?」

という声が聞こえてきそうですが、はい、まったくもってその通りです。その通りなんですが、様々なパターンを一通り検討して結果、これが一番無難という結論に行き着きました。

では、夏の2階エアコン計画、いろんなパターンを見ていきましょう。

パターン①:1階リビングエアコンだけでがんばる

前述の通り、夏の2階は地獄と化します。リアルに命の危険があるので、絶対にやめましょう。

パターン②:全館空調システム(特殊エアコン・ダクト給気)を入れる

セントラル空調システムとも言います。特殊エアコンで空気を冷やし、ダクトを通して、冷気を各居室に送風する仕組み。

これなら、エアコン1台で家じゅう涼しくなります。ですが、大きな問題点が複数あるので、非推奨です。以下の通り。

・特殊エアコンのランニング/メンテ費用
特殊エアコンはエネルギー効率が悪いので、光熱費が高いです。かつ、故障時の修理費用(交換費用)が数十万円、ひどいときは100万円以上するので、金銭的負担が大きすぎる。
・ダクト給気型のリスク
ダクトを通って空気を各部屋に送るので、ダクト内が汚れると、汚れた空気が部屋に供給され続けることになります。定期的にダクト清掃すればOKですが、専門業者に依頼する必要があり、手間もお金もかかります。
・換気不足のリスク
特殊エアコンが故障すると家全体の換気も止まります。修理費用が高いので、全館空調はやめて、壁掛けエアコンに切り替える人がいますが、これでは家の換気が止まってしまうので、NG。換気不足は健康を害します。

パターン③:全館空調システム(壁掛けエアコン空調室・ダクト給気)を入れる

空調室を作って、そこで一旦空気を冷やし、その冷気を各部屋にダクトで送るというシステム。特殊エアコンのデメリットがなくなるので、ましですが、ダクト給気型のリスクは消えません。

さらに、かなり強めのファンを複数設置する必要があるので、初期費用もメンテ費用も高くつきます。さらにさらに、フィルターの数が多いので、日々のメンテナンスも大変。と、デメリットが多いので非推奨。

パターン④:主寝室を冷やして、その冷気を子供部屋に送る

エアコンの吹き出す方向を子供部屋に向けておけば、それなりに子供部屋も冷えますが、ドアを閉めたらアウト。いくらドアにスリット(隙間)を入れても、子供部屋は冷えません。

ドアを常に開けておくという条件下なら、ありかもしれませんが、それなら個室にする意味がないですよね。

パターン⑤:廊下を冷やして、その冷気を主寝室・子供部屋に送る

パターン④と同様に、エアコンの吹き出す方向に全ての部屋があり、ドアを常に開けておくという条件を満たすなら、ありですが、現実的ではありません。また、廊下なのでエアコン設置できる場所が限られるという問題もあります。

パターン⑥:主寝室/廊下を冷やして、小型ファンで冷気を子供部屋に送る

パターン④⑤+ファン送風という方法。一見よさそうですが、以下の問題があります。

・ファンの音
ファンが結構うるさい。暑さより音で眠れない。
・音漏れ
壁に穴が開くので、ファンを付けていないとき(夏以外)は音が漏れる。個室にした意味がない。
・費用
ファンは数万円するので、それを全部屋につけていると、それなりに高くつく。それなら各部屋にエアコン付けた方がよくね?となる。

パターン⑦:屋根裏エアコンを活用する

屋根裏を冷やして、その冷気を各部屋に落とす仕組み。冷気は下に沈むので、理屈上はよさそうですが、以下問題点があります。

・逆結露リスク
屋根裏の断熱気密性能が低いと、結露が起きるリスクが。住宅会社の性能への意識と正確な施工が必須。
・日中の暑さ
就寝時は天井からじんわりと冷えて快適ですが、日中は暑い。
・家族ごとに温度を変えられない
屋根裏は共通なので暑がりの家族は暑いみたい。冷房嫌いの人ならちょうどいいですが。
・費用
メンテ用のロフトはしご、各部屋のスリット点検口(冷気の落とし口)が必要なので、エアコン以外で10万円以上かかる。各部屋にエアコンより安いが、それなりの費用感。

なので、高性能住宅で、日中2階で過ごさず、家族に寝る時暑がりがいない、のであれば、アリだと思います。

パターン⑧:屋根裏エアコン+ファン送風

パターン⑦+ファン送風という方法。悪くはないですが、ファンの音がうるさいのと、⑦よりさらに費用がかかって、それなら各部屋にエアコン付けた方がよくね?となっていきます。

パターン⑨:輻射式冷房を活用する

冷気ではなく、輻射熱を使って身体から熱を奪うことで、部屋を快適にするとい比較的新しい空調機器。販売店のデータや理屈的には、とても良さそうなので、私も100万円近くかけて家に試験設置してみましたが・・・

思ったような効果は得られず。壁が少なく性能の低い建物(体育館や施設等)であれば、効果的なのかもしれませんが、壁が多く性能の高い建物(高性能住宅)には向かないという結論になりました。

パターン⑩:その他(階間エアコン、壁内冷房など)

いろんな方法が開発されていますが、どれも、十分に冷えなかったり、費用が高かったり。住宅業界として、これからもチャレンジを続けていくべき分野かと思われます。

夏の除湿運転は効果が高いか?

除湿するためにはエアコン内の温度をグッと下げる必要があるため、室温が下がりすぎて不快です。光熱費も上がります。なので、夏は無理に湿度を下げようとせず、通常の冷房運転で、少し設定温度を低めにするのが、ちょうどいい塩梅。

除湿で冷えすぎた空気を温めて部屋に送る、再熱除湿式のエアコンがありますが、冷やして温めるので光熱費が高いです。それを覚悟の上であれば、室温を下げすぎず湿度だけ下げてくれるので快適になります。

ま、そこまでやらずに、ふつうに温度を下げて、快適に過ごすのが良いのでは?と私は思います。

サーキュレーターの活用&エアコンつけっぱなしを

体感温度は、温度と湿度だけでなく、気流によっても下がります。サーキュレーター(最悪扇風機でも可)で、一定方向に風を送り続けると、室内に気流が生まれ、体感温度下げてくれますので、ぜひ試してみてください。

さらに、体感温度は、周壁温度(壁や天井の温度)によっても変わります。エアコンを切って、一度温まってしまった壁や天井はなかなか冷えませんので、基本エアコンはつけっぱなしを推奨します。

とうことで結論はやっぱり・・・

ということで、いろいろ考えてはみたけれど、いろいろ実験はしてみたけれど、結局2階は、「各部屋にエアコン設置が無難じゃね?」という結論に至りました。

■1階
リビングに高性能壁掛けエアコン1台(14畳用200v)
■2階
各居室に最低限性能の壁掛けエアコン1台ずつ(6畳用)

■床下エアコン・屋根裏エアコン
悪くはないが、デメリット/注意点があるので、よく勉強した上で採用してください。
■暖房の加湿機能
あまり期待できない
■冷房の除湿運転
部屋が寒くなり、光熱費が高いので、非推奨
■再熱除湿式のエアコン
光熱費が高いので非推奨だが、それでもOKなら部屋は快適に

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