松屋のカレーに味噌汁をつけるべき理由
松屋の味噌汁が好きだ。私も、貴方も。
牛丼を食べる合間合間に味噌汁を飲んで、最後に少し余らせたご飯を味噌汁と一緒に流し込むと、ちょっとした幸せを味わえる。
そんな味噌汁を無料でセットにしてくれる、だから数ある牛丼屋の中から松屋を選ぶ、という人は多いはずだ。
しかし、牛丼や定食には文句なしにマッチしたこの味噌汁も、カレーとセットになると……少し悩ましい存在になる。
辛味とは厳密に言えば味覚ではなく、痛覚だ。
辛いものを食べる度に、私たちは口のなかを少しだけ少しだけ傷つけている。
例え、どんなに美味しくても。
つまり、辛いものと一緒に味噌汁を飲むのは、傷口に熱湯をかけるようなものだ。当然痛い。
だから私は松屋でカレーを頼む度に「味噌汁いらないな……美味しいから飲むけど……口の中痛いな……美味しいな……」というモヤモヤを抱えてしまう。
いっそのこと、カレーだけは味噌汁の有無を選べるようにしてもらえないだろうか。
味噌汁抜きならマイナス30円、みたいな。
……しかし、そうなると「牛丼や定食も味噌汁抜きを選びたい」という意見も多少は出てくるだろう。
じゃあ牛丼も味噌汁抜きを選べるようにすればいい。同じようにマイナス30円で。
これでみんながハッピーになれる。
いや、そうではない。
ハッピーになんてなれてないのだ。
この選択肢が生まれると、「味噌汁をつけない方が安い」という事実に繋がる。
そうなると、私のようにケチな人間は、選んでしまうのだ、安い方を。
牛丼に味噌汁がついてると少し幸せを味わえる。
それは30円よりはよっぽど価値のある「少し」だと知ってるはずなのに、安い方を選んでしまう。
選択肢がないというのは、場合によっては素晴らしいことだ。
わざわざ不幸を選ぶ自由がないということだ。
だから私は甘んじて、カレーと味噌汁のセットを受け入れ続けよう。
口の中を痛め続けよう。
素晴らしい不自由を守るために。