2代目、3代目社長(仮)の苦悩
自分の親が中小企業の社長や個人事業主をしていると、自身もその事業を継いだ方がいいのかなと思うことがあるかと思います。
筆者の祖父も事業の創業者であり、私もその事業を継承したいと考えています。今回の記事は私が経営コンサルタントという立場上、経営者とお付き合いしてきた中で感じたことや、事業を継承して二代目、三代目社長(仮)になりたいと考えている立場からお伝えします。
■家業があることのメリットは
私の周りの人に
「将来は家業を継ぎたいと考えている」
と伝えると、恵まれているねと言われることが多いです。この「恵まれてい
るね」と意図は以下の3つだと考えています。
①経済的に恵まれている
②雇用者ではない立場が確約されて恵まれている
③自分の目標を定めやすくて恵まれている
①に関しては、雇用される側(雇用者)と比較して経済的に恵まれているという意味。
②に関しては、やはり雇用主は自由に仕事ができるイメージがあるからですね。
③に関しては、自身が家業を継ぎたいと考えれば、その目標に向かって自分の人生を設計しやすくなるためですね。
これらのメリットが自分の努力の結果、勝ちとったのではなく生まれたときからあることが「恵まれている」という言葉の本質だと思います。
しかし長所のうらっ返しは短所。
メリットのうらっ返しはデメリットがあります。
■家業のデメリット
先ほど挙げたメリットのうらっ返しをしていきます。
①経済的に恵まれている
⇒会社の業績により経済的に困窮することもある
②雇用者ではない立場が確約されて恵まれている
⇒雇用主として責任感を伴う
③自分の目標を定めやすくて恵まれている
⇒自分の人生を狭めて考えてしまう
このように、自身の力で経営をし、雇用者の生活を守る責任感を抱え、自分の将来も狭めてしまう可能性があるのです。
とくに③は深刻な問題だと私は考えます。
■「三代目で会社はつぶれる」の本質
③に関連する中小企業経営、オーナー企業によく言われる名言があります。
「三代目で会社はつぶれる」
この言葉の本質は、1代目が一番優秀であり事業承継を進めて行くにつれて、経営者が優秀でなくなるからという意味ではありません。
この言葉の本質は「熱量」だと私は考えます。
1代目が一番、「事業への熱量」があり事業承継を進めて行くにつれて、経営者の「事業への熱量」がなくなるから、が答えなのではないでしょうか。
この「熱量」とは何に起因しているのでしょうか。それは、以下の問いと大きく関係しています。
「本当にそれは自分がしたかったことなのか」
二代目、三代目経営者は幼少期から
「事業を継いだほうがいい」
と言われていることがあったのではないでしょうか。
自分の内から出てくる「本音」ではない行動は、「本当にそれは自分がしたかったこと」と乖離してしまい、「熱量」なんて存在しません。
つまり、親(祖父母)が興した事業は親(祖父母)がしたかったことであって、自分がしたかったことではない。
これが「三代目で会社がつぶれる」の本質ではないでしょうか。
■本当に経営者になりたいのだろうか
ここからは、筆者の実体験をダラダラと書いていきます。
私は将来、家業を継ぎたいと考えて大学卒業後、中小企業向け最大手の経営コンサルティング会社に入社しました。自分自身も筋が通った良い選択だと思います。
入社3年目まではがむしゃらに自分に与えられた仕事をこなしていました。
しかし4年目、5年目から次第に仕事に向き合えなくなり、自分にある問いが生まれたのです。
「自分は家業の経営を良くするために、経営コンサルティング会社に入社しているのに仕事に向き合えないのはなぜだろう」
そもそも私は経営コンサルティング会社にはいって仕事をすることを、「修行」と考えていました。将来、会社経営に必要な投資であると。しかし私はこの「修行」を以下のどちらの意識でやっているのかわからなくなっていました。
①自分自身が「修行」をしたいから、「修行」している
②自分自身は「修行」をしたくないけど、「修行」をしなきゃいけない
入社5年目、確実に入社当時より②の意識が強くなっています。
なるほど、自分が本当にしたいことを見失っているから、今の仕事に一生懸命になれない、向き合えないいことがわかりました。
じゃあ自分の本当にしたいことはなんだろうか。
私は家業を継承したくないのか?
なんで自分は家業を継ぎたいんだっけ?
雇用主というポジションがほしいだけだったのか?
経済的に豊かだった自分の家庭を踏襲したかっただけ?
こんな状況の人間が会社を経営するとどうなるでしょう。確実に上手くいきませんよね。それほど会社経営には「熱量」が必要だと思います。
■さいごに
私は中学生のころから「継承する事業がある」という余裕があったといまでは思います。
この余裕にしがみつきながら私は15年くらい生きてきました。人生の半分以上です。この事業継承ができるという権利を放棄することで、私は初めて自由に生きられるのでしょうか。
しかし、二代目、三代目社長でも事業拡大などに成功し、経営がむしろ良くなっている会社もあります。
この問題には正解なんてありませんが、一つ言えることは継承した会社が成功しようと、倒産するにしよ、「本当に自分のしたかったこと」なのかが重要だと思います。
①本当にしたかった会社を継承して、事業が成功した
②本当はしたくなかった会社を継承して、事業が成功した
③本当にしたかった会社を継承して、事業が失敗した
④本当はしたくなかった会社を継承して、事業が失敗した
このなかで一番してはいけないことは④ですよね。②と③はまあオッケイ。
事業が成功するかどうかなんて誰にもわからない変数なのですから、本当に自分がしたいかどうか、これを見極めることが、二代目、三代目の宿命なのではないでしょうか。
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