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luckyのunluckyな寝袋

モロッコのフェズ駅に明け方4時位に電車が着いた。

駅から徒歩1時間位にある宿に向かおうと駅構内を出ると、何人もの客引きが、大きい声で行きたい所に送ってやるから俺のタクシーに乗れ、とたかってくる。
もちろんボッタクリ目的。流石世界三大ウザイ国のモロッコである。

他の人客引きに客を取られまいと必死なのはわかるが、これでは完全に客はドンびく。完全に逆効果じゃないかと常々思う。

そもそも、予約を取った宿の門扉は8時にならないと開かず、宿の中に入れてもらえない。
この客引きの様子じゃあ、外で時間を潰すというのは危険極まりないと悟った。

これではぼったくられるどころかワラワラ集られている隙に貴重品をひったくられる危険性もあると思い、駅構内に戻った。

するとそこには同じように考えたであろう日本人カップルがいた。

そのカップルに向かって軽く会釈をした。

するとそのカップルも、会釈を仕返してくれたので話しかけた。男性はユウさん、女性はケイコさんとおっしゃった。

僕「客引きがすごいですね。思わず駅に戻っちゃいましたよ。」

ユウさん「ですよね。どうやらこの時間帯は早く宿に行きたがる人も多いから、深夜料金だとか言ってぼったくられる事も多いらしいですよ。彼女と話してたんですけど、夜が明けて、宿が開くまで駅にいる方が得策かもしれません。」

僕「そうですね。なぜか分かりませんが、客引きは駅構内には入ってこなさそうですし、あの隅っこ辺で時間をつぶしましょう。」

そうして、宿が開く時間まで誰か監視出来る体制にして、交代交代で各々自前の寝袋で休むことになった。

程なくすると、外から一人の金髪の女性がウンザリした様子で駅構内に入って来た。

どうやら私達と同じように、客引きの勢いに危険を感じたのであろう。

ユウさんとケイコさんはかなり英語ができるらしく、積極的にその女性に話しかけていた。

金髪の女性はアメリカ人で、あだ名はluckyとのこと。

なんだかんだで、4人体制で宿が開く時間まで待つことになった。

代わる代わる寝て、時間を過ごすと空が白んできた。

すると段々と駅の外にいた客引きも、自分の仕事の時間なのか分からないが、段々と減り、閑散としてきた。

7時位になり、そろそろ宿に向かえば丁度よい時間になるだろうと言う話になり、皆寝袋を片付け始めた。

我々日本人は寝袋を、収納袋に入る様にキレイに畳んで、収納袋に入れていた。

ところがアメリカ人のluckyの様子を見て我々日本人はどよめいた。

収納袋に寝袋を畳むことなく押し込んでいる、そこまでは、まぁそういう人もいるかと許容できるのだが、なんとluckyは拳を握り寝袋を殴りながら押し込んでいる。

寝袋に強い恨みを抱いているのかと思う程、luckyはドスドス殴りながら押し込んでいる。寝袋だけでなく収納袋も破れてしまうのではないかと思うほど力強く。

ユウさんとケイコさんと僕はその光景を唖然としながら見ていた。

だんだん、その寝袋に同情の念が湧いてきた。

僕は「lucky落ち着いて!きちんと畳めば簡単に寝袋は収まるんだよ!それじゃあ寝袋がunluckyだ!」とluckyに言ってやりたかったが、lucky本人はあまりにも手慣れた感じで、殴り叩き収めていくものだから、口の出しようが無い。

しかし、そんな念もluckyとunluckyな寝袋達には届くはずも無く、次第にluckyのunluckyな寝袋は無情にも収納袋に殴り叩き込まれていく。そして遂には収納袋に納まった。

luckyとはと言うと、ふぃ〜、やっと納まった〜、と一仕事終えたと言わんばかりに爽やかな笑顔と、グッドサインを我々に向けた。

お、おぉ、そ、それで収まるんだね。と我々日本人3人は苦笑いで、思わず拍手をした。

女性陣と男性陣に自然と分かれて宿に向かった。

ユウさん「すごかったですね。スマブラのホームランコンテストでもするのかと思っちゃいました。」

僕「ですね。あの様子だとかなり良い記録でそうですね。」

ユウさん「あ、彼女はそれとなくluckyに、畳むことを伝えたいから、距離取ってって言ってました。」

我々日本人はluckyの寝袋達の身を案じていたのだ。

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