ヘッドホンの寿命

ヘッドホンは音楽再生のツールの中で、唯一体に密着させるという特徴を持っていますが、そのために、皮脂という厄介者との戦いの場でもあります。
付け心地を追求するがゆえに、ソフトでありながら確実なフィット感を持たせるために、さまざまな素材を駆使して製品は作られています。メーカー独自の考えがそこには反映されており、販売されている製品には、発音部分の構造には何の問題もないのに、イヤーパッドの性能低下が著しいと、交換費用がバカになりません。

そういった観点で振り返ってみると、かつてのパイオニアのモニターシリーズは実によくできていた製品だと思います。存在感を感じさせるデザイン、高めの側圧でしっかりと本体を頭部に固定しながらも、側圧で耳たぶが痛くあることはありませんでした。また、イヤーパッドもしっかりとした作りで、交換も楽でしたし、何より交換部品が安めの価格に設定されていたので、へたってきたなと思ったら頻繁に交換しても、お財布には優しかったですね。

また、ヘッドバンドにも妥協することなく、プラスチックなどは使わず皮革を縫製していましたので、接触ノイズにも強いという、体に密着させて使うという特徴をしっかりと意識した製品コンセプトは、素晴らしいとも思いました。コンシューマー向けの製品は、いったん販路を閉ざしてしまうと、再開するのは困難であることを承知でのお願いですが、パイオニアの伝統を引き継いだ新型ヘッドホンの開発と製造・販売の再開を待ち望んでいます。

その点、日本を代表するS社のヘッドホンは、ノイズキャンセリングでは断トツの技術力を誇り、ラインナップの多さにしても、そこまで手を広げなくてもよいのではないかと思えるほどですが、そこには大きな問題が見え隠れしています。特に耳たぶを刺激せずのコンセプトに立ったイヤーパッドは、かなり使い心地を追求した製品ですので、初期性能は大変に高いものですが、残念ながら耐久性に乏しいのです。

先のパイオニアのヘッドホンで一番長く使ったのは、10年を超えていたと思います。ところが。S社のヘッドホンを使いだして、3か月もしないうちにイヤーパッドの振動板の保護のためのネットが、赤くなってきたのです。毎回使用後は乾いた布等で優しく拭いてきていたのに、なんでこんなに?
そして、1年も使わないうちに、イヤーパッドにいきなり亀裂が走り、その後裂けてしまいました。交換しようとネットで注文しようとしたら、これがバカ高いんです。ものを大事にしようと思っても、それが許されないような製品設定であったなら、SDG’sに逆行します。

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