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【Focus=川口春奈が帰蝶役でブレークするこれだけの理由、注目の「麒麟がくる」19日スタート(2020)】

 川口春奈が急遽、重要な役柄「帰蝶」に抜擢された2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」が1月19日夜、ついにスタートする。明智光秀を演じる主演の長谷川博己の演技ももちろん楽しみだが、沢尻エリカの降板という緊急事態を受けて、帰蝶役に白羽の矢が立った女優、川口春奈がどんな演技で周囲の期待に応えてくれるかもまた大きな楽しみなのである。川口にとっては突然の起用だが、俳優という商売は奇妙なもので、突然のこうしたピンチが大きなチャンスに化ける不思議な仕事。もちろん誰しもがチャンスに化けさせることができるわけではないが、川口にはそれが確実に起きる兆候がある。「人気」という字に「気」という字が入っていることでも分かるように、俳優という仕事はさまざまな気というエネルギーが支えている。ここ1年の川口にはそのエネルギーがいたるところに見え、帰蝶役でのブレークという一点に向かって大きな流れが出来ていたのだ。もちろんエネルギーとは曖昧な空気のようなものではなく、本人の心身の中に根付くもっと確かなもの。それは川口が努力を続けてきた女優だからこそつかむことのできたものなのである。

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★大河ドラマ「麒麟がくる」公式サイト:帰蝶=川口春奈

 川口が演じる帰蝶は「濃姫」という名の方が有名で、戦国時代の闘将、斎藤道三の娘である。その後政略結婚によって織田信長の正妻になった人物だ。
 織田信長に嫁いだこと以外は歴史史料に記述が少なく、謎の多い女性とされている。
 母親は道三の正室で、明智家出身。光秀のおばにあたり、つまりは帰蝶と光秀はいとこ同士となる。
 道三の娘という所から既に肝の据わった女性であることがうかがわれ、なかおつ政略結婚で送り込まれた織田家で立派に正室の座を務め、側室の管理などもきちんとこなして、天下人を目指した奔放な織田信長を支えた-。これらの逸話から「一本筋の通った女性」を思い浮かべる。
 NHKあるいは脚本の池端俊作が帰蝶をどのように描き、どのようなエピソードの中に彼女を絡ませるのか。史実と創作をどういうバランスで描くのかなどはまだ不透明であるため、どのような役割を川口に与えるのかは分からないが、戦国の風雲児、時代の開拓者である信長にも負けず劣らずの清新さと柔軟性を持つ女性であることがうかがえる。

 これまで和久井映見や斉藤由貴、柴咲コウ、内田有紀、中谷美紀、観月ありさ、小雪、涼風真世、かたせ梨乃、佐久間良子らが演じてきており、帰蝶(濃姫)が「美しいだけでなく、芯のある女性」というイメージでクリエイターに捉えられていたことが分かる。沢尻エリカの起用もその延長線上だったに違いない。

 川口は可憐なルックスに目を奪われるために見逃しがちなのだが、実はとても強い意志を持った女性。マイペースというとのんびり屋さんのように聞こえるが、他の人の考えではなく、自分というものを強く持った女優なのだ。
 実際、昨年末に自身のInstagramに投稿したメッセージの中で「職業柄、日々いろんな声が聞こえてきますが、全く私には刺さりません」ときっぱり話しているし、「私にしか出来ないこと、私にしかないストロングポイント。大切な人の言葉に耳を傾けて自分を信じてやるのみです」としっかりとした芯を感じさせるコメントで自らを鼓舞している。強がりではなく、それが彼女の強みなのだろう。

 そしておそらくそれは彼女自身も自分の中で高まってきているエネルギーに気が付いているからに違いない。
 この1年だけを見てみても、2019年1~3月ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」では
以前勤めていた法律事務所でセクハラに遭い、相手を殴ったことで辞めざるを得なかったという過去を持つ新人弁護士で、坂口健太郎が演じる暴走気味の弁護士に時には声を上げて反発しながらも、やがて理解を深めていく役柄を担った。
 背景も含めて難しい設定であることは間違いなく、ヒロインとしても大変な役柄だったが、川口は見事にこなしている。

 撮影は2018年以前になるだろうが、2019年に公開された高橋一生とのダブル主演映画『九月の恋と出会うまで』では、芸術家が集まるアパートに引っ越した女性が1年後から話し掛けているという不思議な男性の声の頼みで、その男性の現在の実体の尾行を始めるというパラドックスにあふれた設定の作品に出演。そんな設定の中でもさわやかで密やかで、それでも親密な恋が芽生えていくヒロインを瑞々しい演技で表現して評判を高めた。

 そして今年2020年に入ってドラマファンを震撼させたのが木村拓哉主演で、川口も警察学校の生徒の一人として出演したドラマ「教場」だ。
 デリケートな精神を持つ同級生の中で、ひとり堂々と我が道を行く菱沼羽津希を熱演。川口の演技が明らかに鋭さを増してきたことを多くの人に感じさせる演技を披露した。

 余談だが、CMキャラクターを務めるシャンプー&コンディショナー「いち髪」の人気度も快調に推移している。

 もちろん、ネットを中心に川口の大河ドラマ起用に不安の声があったことは事実だ。
 例えば「時代劇が初めて」だから所作ができないのではないか、というたぐいの声である。
 しかし、時代劇を体験していなくても、日本人女性としての伝統的な仕草や着物のさばき方、畳の間の歩き方などは、女優としての基本中の基本。専門的な教室に通っているかどうかは別にして、それらを身に付ける機会がなかったはずはない。
 それに何度かの取材で私自身も感じたことだが、NHKはそれら時代劇の所作を指導する極めて優秀な専門家を抱えており、指導体制はほぼ完璧と言っていい。
 川口はきちんとやり遂げてくれるに違いない。

 それに、松下洸平や林遣都の名を挙げるまでもなく、NHKは普段から若い俳優たちのテレビや映画、舞台での演技をつぶさにチェックしており、確かな確信をもって出演オファーを掛けている。

 とにかくそんな入口論で批判していないで演技そのものを見てあげてほしい。
 さまざまに高まってきた演技のエネルギーが、この「麒麟がくる」で一気に噴き出す気配がかつてないほど高まっているのだ。

 さあ、まもなく「麒麟がくる」が始まる。

★大河ドラマ「麒麟がくる」公式サイト


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