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生きることの力強さと輝き。再演重ね備わってきたオリジナルミュージカルの風格…★劇評★【ミュージカル=生きる(市村正親・上原理生出演回)(2023)】

 「生きる」。この物語が世界中の人々の心を打つのは、よく練られた美談だからではない。死を目の前にして偉業を成し遂げた英雄譚だからでもない。監督の黒澤明自身も橋本忍や小國英雄と脚本を立ち上げながら、いかにこの物語を美談のように感じさせないかに腐心したというから、やはり肝心なのは死の恐怖に抗いながら進んだ主人公の美しさではなく、人生の最後の最後に短いながらも確かに歩んだ主人公の力強さなのだ。つまりは、生きることの輝きなのである。2018年に世界で初めてミュージカル化されたことで、作品の持つ普遍的なペーソスはより増幅され、明確な目標を失いながらもがむしゃらに歩んできた戦後日本人の虚無感と焦燥感まであぶりだすことに成功した本作は、再演を重ねてより明確な人生のメッセージを私たちに届けてくれる堂々たるオリジナルミュージカルとしての風格を備えてきたと言えそうだ。(写真はミュージカル「生きる」とは関係ありません。単なるイメージです)
 
 ミュージカル「生きる」は2023年9月7~23日に東京・初台の新国立劇場中劇場で、9月29日~10月1日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで上演される。
 
★序文は阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログにのみ掲載しています

 
★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。市村正親さん、村井良大さん、上原理生さん、高野菜々さん、実咲凜音さん、福井晶一さん、鶴見辰吾さんら俳優陣の演技に関する批評や、宮本亜門さんの演出や舞台表現に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 なお、ミュージカル「生きる」は主役が市村正親と鹿賀丈史のダブルキャストで、小説家役が上原理生と平方元基のダブルキャストであることから4種類の組み合わせが存在しますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、ミュージカル「生きる」(市村正親・上原理生出演回に限らせていただきます。ご了承ください。
 この組み合わせではカバーできない鹿賀丈史さんと平方元基さんのファンや関係者の皆さま方には大変心苦しく感じております。人気公演のため取材機会も限られます。なにとぞご容赦ください。
 
 ただし、舞台写真はホリプ様のご協力を得て、両キャストの写真を掲載いたします。劇評の文章内ではお二人には言及いたしませんが、写真でお楽しみください。
 
★ミュージカル「生きる」公式サイト

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