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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に… もっと詳しく
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#森公美子

異常な出来事に人間が本来持っている可能性や優しさで向き合った人々の姿を通じて絆の本質をえぐり出したミュージカル。トップ俳優たちが「全員が主人公」の物語を演じ、演劇というものの新しい可能性さえたぐりよせた…★劇評★【ミュージカル=カム フロム アウェイ(2024)】

 「9.11」。この数字の羅列、あるいは日付が特別な意味を持つようになったのは、あらためて説明するまでもなく米国東部時間2001年9月11日朝(日本時間11日夜)に起きた米中枢同時多発テロからである。主な標的となったニューヨークのワールド・トレード・センターやワシントンの国防総省ペンタゴンのほか、世界中の様々な場所での、それぞれの人の「9.11」があったはずだ。テロの手段として旅客機が使用されるという特殊性から、さらなる被害を防ぐため、テロの直後から領空が閉鎖された北米地区で

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大ヒットした映画の世界を壊すことなく作品への敬意を保ち、光り輝く舞台作品として昇華。さらに情緒の深い咲妃みゆのモリー像は秀逸…★劇評★【ミュージカル=GHOST(咲妃みゆ出演回)(2021)】

 「GHOST」という物語が優れているのは、単なる生死を超えた愛の物語として謳い上げるだけではなく、「生」の世界に渦巻くおぞましい闇と、「死」の世界に広がる生への執着心を創造性豊かに描き、その上で、まるでSFのような設定と霊媒師を介したファンタジーを結びつけることによって、全員が目的の達成に向けて疾走するスピード感を獲得していることだ。大ヒットした映画の世界を壊すことなく作品への敬意を保ち、光り輝く舞台作品として昇華させたミュージカル「GHOST」は、成功を収めた2018年の

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愛は消滅するのか…★劇評★【ミュージカル=ゴースト(2018)】

 愛はそれを宿す肉体が消滅してしまっても、どこかに存在しているのか。そんな哲学的な問い掛けにどう答えていいのか分からなくなったら、この作品を観れば良い。日米をはじめ世界中で大ヒットした映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年公開)をもとにしたミュージカル「ゴースト」には、その答えが秘められているだけでなく、大切なあの人への愛のためにいまこの瞬間何をしなくてはいけないのかのヒントもたくさん詰まっている。主演の浦井健治とWキャストヒロインである咲妃みゆ・秋元才加が織りなす究

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濃密な空気の中に響く信念と狂気のせめぎ合い…★劇評★【ミュージカル=レベッカ 涼風真世・桜井玲香バージョン(2018-2019)】

 20世紀半ばに活躍した女流作家、ダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier)の一世一代の小説がウィーンで舞台化されたミュージカル「レベッカ」が、日本初演から3度目の上演が続いている。しかも8年前の2度目の公演は帝国劇場などの大劇場バージョンとして上演されたため、もともとシアタークリエのオープニングシリーズ第3弾として上演された2008年の日本初演からは10年ぶりのシアタークリエ公演となり、コンパクトな空間の中で人々の怨念や魂の叫びが響く濃密な公演と

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揺るぎない信念に癒しの力で立ち向かうスケールの大きな物語…★劇評★【ミュージカル=レベッカ 保坂知寿・平野綾バージョン(2018-2019)】

 あのレベッカが帰ってきた-。20世紀半ばに活躍した女流作家、ダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier)の一世一代の小説がウィーンで舞台化され、2008年の日本人キャストによる公演も大きな反響を呼んだミュージカル「レベッカ」が、日本初演から数えて3度目の上演が続いている。しかも8年前の2度目の公演は帝国劇場などの大劇場バージョンとして上演されたため、もともとシアタークリエのオープニングシリーズ第3弾として上演された2008年の日本初演からは10年ぶ

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複雑に組み合わされたその運命から聞こえてくるのは、極めてシンプルなもの…★劇評★【ミュージカル=レ・ミゼラブル(吉原光夫・伊礼彼方・濱田めぐみ・唯月ふうか・三浦宏規・生田絵梨花・斎藤司・森公美子・相葉裕樹出演回)(2019)】

 運命という言葉があるが、ある一人の人間のことだけを考えるのであれば、それは大いなるうねりを持ったひとつの物語だ。しかしある瞬間に同時に生きている人すべての運命がジグソーパズルのようにぴたりとはまっているのだということを考えると、物語などという暢気なことを言っていられなくなるほど、事は壮大で重大だ。私は神を信じないし、せいぜい「(科学的な)宇宙の論理」を信じる程度だが、19世紀の最重要な小説家、ヴィクトル・ユゴーは、欧米人やキリスト教徒が言うところのそうした「神の摂理(あるい

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