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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2022年9月の記事一覧

互いに共鳴し合う有機的なつながり。記憶をめぐって描き出される生命感にあふれた世界の響き…★劇評★【ミュージカル=COLOR(2022)】

 劇中のすべてのせりふが音楽が、そしてすべての要素が、互いに共鳴し合って、有機的なつながりを創り上げている-。そんな不思議な感覚を味わわせてくれる新作ミュージカルが誕生した。ミュージカル「COLOR」は、草木染作家の坪倉優介さんが、芸術大学で学んでいたころに遭遇したオートバイの事故で記憶喪失に陥った経験から導き出された、記憶といのちの物語。記憶を失うとはどういうことなのか、記憶のない状態は「無」なのか、記憶を失った状態から何かを生み出せるのか。舞台上には坪倉さんが乗り越えた、

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井上芳雄が注ぎ続ける愛情と上白石萌音の繊細な美しさ。心の中に忘れがたい旋律を持った記憶が永遠に響き続ける作品になった…★劇評★【ミュージカル=ダディ・ロング・レッグズ 足ながおじさんより(2022)】

 昔からよく知っている物語なのに、ジョン・ケアード演出のミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ 足ながおじさんより」を2012年の日本初演で初めて観て、ジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」がこんなに豊かな感情にあふれ、こんなに大人びた知性のぶつかり合いを内包した小説であったのかと衝撃を受けたことをよく覚えている。子ども向けに書き直されたお話が記憶の中に残り過ぎていたのかもしれないが、篤志家・慈善家である謎の人物と、孤児院出身でビビッドな感性と文才をその人物に見込まれた少

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