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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2018年11月の記事一覧

繊細な歌や演技の表現力はこの作品を単なる歴史絵巻に終わらせず、さらに高い哲学性を秘めたものに昇華させている…★劇評★【ミュージカル=マリー・アントワネット(笹本玲奈・古川雄大・ソニン・佐藤隆紀出演回)(2018)】

 歴史の登場人物の中には、善と悪、どちらか一方からの視点のみで描くことが決してできない人物がいる。本来ならどちらか一方から描けば物語の輪郭がはっきりするし、なんといっても人物像が分かりやすい。現代の人々が認識している方で描けば満足度も高いだろう。しかし現代の人々は人間というものがそんなに簡単な二元論で描き出せるなどとは思わなくなってきているし、どんな人の中にも天使と悪魔が棲んでいることにはみんな気付いている。フランスの王妃マリー・アントワネットの場合、やさしく慈愛に満ちた性格

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日々の舞台のたびごとに生き、逝き、果てしない命の再生の連環の中でピアフの生が繰り返されていく…★劇評★【舞台=ピアフ(2018)】

 優れた歌手の声や身体には、歌によって悲しみを癒し、穢れを浄化する作用があるとされるが、フランスの不世出のシャンソン歌手、エディット・ピアフはまさにその代表格である。絶望をかすかな希望に変え、過ぎ去った過去を未来への懸け橋にする、そんな歌をたくさん歌って来たピアフ。究極的な悲哀を歌っていても、私たちがそれを聴くときもう一度立ち上がるための活力が心の一番底から湧き上がってくるのはそのためだ。しかしその悲しみの浄化をしているアーティスト本人は心も体もずたずたになる。彼女自身、悲劇

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