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ダイナミック・レンジ

はじめてのマスタリング。
作者さんからご意見を色々と頂きました。
概ね喜んでいただけたものの、私が余計なお世話をしてしまった所もある。
電話で希望を伺って、昨日のうちに新たに2パターン作ってお送りしました。

そもそもマスタリングにのめり込んだきっかけは、バイノーラル作品の仕上げに定番のアナログモデリングのプラグインを使ったら、形が崩れてしまったから。
実機のアウトボードでも同じだろうし、これは避けて通れないと試行錯誤を始めました。
ヘッドフォンやイヤフォンで聴くメジャーな作品でも、耳のすぐそこで鳴るのに、やたらと耳に痛いものがありますからね。

で、今回これだけマスタリングの勉強に集中したのは、自分から「あなたの作品のマスタリングをやらせてください」とお願いしたのに、途中でビビってしまったから。

つまり。
いざやってみたら、歯が立たなかったんです。

私ではどうすることも出来ない箇所があったので、2回ほどミックスの修正をお願いした上で「後は何とかする」とお預かりしたのに、「やっぱり出来ませんでした」とは流石に言えない。

本当に辛かったし、まだまだ終わらないんだけど、収穫というか、新しい宿題もあります。

今回、仕上がりのラウドネス値の目安を指定されていたのですが、お話を伺っていると、どうやらもう少し余裕のある音を望まれているのではないか?

それで昨日は勝手に別パターンを作って添えたのですが、ダイナミック・レンジが大き過ぎても聴きづらいという一部での定説があって、曲や使用目的によるとしても、私は賛同しがたい気持ちがあったんですね。

ラウドネス・ノーマライゼーションが話題になった時に、よく取り上げられていたエンジニアさんが居て。
その方に仕事でマスタリングしていただく機会に恵まれて、どんなゆとりのある仕上がりになるのだろうかと楽しみにしていたら、それは見事な海苔波形だった。
もちろん、一昔前と今とでは海苔波形の質が変わったらしいことは知っています。

この経験が私の中で「しこり」になっていて、他のエンジニアさんに相談しても「そういうものだ」と諭されるだけでしたので、今回若い作者さんに「耳が圧迫されるみたいで嫌だ」と指摘されて嬉しかったのです。

喜んで修正しますよと。

マスタリングの勉強を始めてみて。
それなりに長く作曲をして来たつもりですが、私は音楽のことを何も知らないどころか、音楽を聴いたことが無かったんだ。
私に聴こえていたのは、作品の本当の姿ではなかった。
そう痛感しております。

何より、新しい勉強を始めるのは面白いですね。
この歳になると、大きな成長を感じることも、若い方々に指摘されて図星を突かれることも、どうしても減っちゃいますから。
試したいことが増えれば、やりたいことも、作りたいものも増えていく。

音を聴く人になりたい。
今の私は、ツールさえあれば誰でも出来るレベル。
この段階を抜けるのに20年掛かるということかな。

その前にツールが進化して、教科書があるものは須らく人間の価値が落ちちゃうかな。
佐藤航陽さんも今朝、これからは「新しい価値観やスキルを『身につけては捨てる』ような狂戦士タイプじゃないと厳しい」と投稿されていましたね。
かなりリスキーな長期投資の始まりです。

最後に。
霜降り明星のお二人がMCで、斉藤由貴さんとヒコロヒーさんが中島みゆきさんについて語る番組が先週ありました。
私も小学生の頃から敬愛しているのですが、立体音響的な耳で聴いたらどうなるだろうかと、この番組以降試していて。

アコギとエフェクティブなベースによる「異国」や、パイプオルガンだけの「かもめはかもめ」が、立体音響で作られたんじゃないかと見紛うばかりに素晴らしいんですね。
逆に、要素が多くてガチャガチャしたアレンジの歌は、わざわざヘッドフォンで聴かなくてもいいかな。
ちなみに「炎と水」は普段からリファレンスにしています。

単に私の好みなだけでしょうが、大きな発見でした。

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