見出し画像

社会養護施設(児相)子どもへのリスク

社会養護施設(児相)子どもへのリスク 2

Factsheet_Lumos_Risks.pdf (contentfiles.net)
Lumos Factsheet: The Risks - Resources - Lumos (wearelumos.org)

はじめに

■社会養護施設(児相)

世界には(両親から関係を断絶した)社会的養育施設として、孤児院、児童養護施設、乳児院など多くの施設があります。

施設名称、規模、立地に関わらず、社会的養育施設は、以下の特徴によって定義されています。

●家族や親族関係のない無関係の子ども達は、給与受給による大人によって養育されます(愛情、好意、ボランティアによる結びつきに欠ける)

●子どもたちは、家族、親族、多くの場合、出生地などの、コミュニティから断絶されています。多くの場合、彼らは、有給養育者と、個人的な結びつき(愛情、好意などによる)関係性を結ぶ機会がありません。個人的な(親密な)人間関係や絆を結べない。

●社会養育施設は、個々の子どもの個性やニーズに応じて対応し、養育するのではなく、給与受給を基礎とする職場のルーティンによって運営されています。

ごく一部の社会養育施設、教育機関には、責任を伴った専任の職員が豊富に配置されていますが、家族に代替できるレベルには至りません。

80年間の社会養護施設における子どもの発達の研究によると、社会養育施設においては、子どもの虐待リスクが非常に高く(施設措置そのものが児童虐待)、子どもの健康、子どもの脳の発達、進学、就職、将来設計において、悪影響を及ぼすことが報告されてきています。

子どもの発達へのリスク

■子どもの健康への悪影響

社会養育施設における子どもたちは、制限された環境(拘束的な環境)、外部との交流の欠如による、物理的に有害な(虐待的)養育環境下にあるために、心身ともに、不健康な状態に苦しめられています。以下に、いくつかの事例を示します。

●栄養失調

栄養失調は、社会養育施設において、食事時間や栄養調整を必要とする子どもにとって、共通のリスクとなっています。食習慣において、アレルギー、偏食などの特性を持つ子どもは、個別対応に欠けるため、食事の機会提供があったとしても、栄養失調となり、健全な育成を果たすことができません。

●給与受給(愛情ではない)養育者によるストレス

社会養育施設における、給与受給による養育者によって、子どもにとって有毒なストレスが軽減されず、増強される場合、子どもの脳は、常に警戒状態となり、脳の神経接続が減少し、成人病のリスクが高まります。安らげない、くつろげない、施設に長期収容されると、成人病リスクが増大する。

●免疫力の低下

拘束的環境、外出制限(建物内制限)、室内制限などに、子どもが閉じ込められた場合、免疫システムが適切に機能せず、施設内に、感染症などのクラスターが発生しやすくなります。(コロナ)

●学習障害、身体機能低下

拘束的な施設環境下では、子ども達が受ける外界からの刺激が欠如するため、学習障害(学力低下)、身体機能低下、意欲低下などが引き起こされて、悪化します。(改善しません)

●聴覚、視力低下

栄養不良、適正な感覚の刺激欠如が原因で、発生します。聴覚障害、視力低下は、しばしば診断も治療もされないままに放置されます。

子どもの脳の発達上のリスク

■子どもの脳の発達上のリスク

大人の養育者との個人的な関わり合いは、脳の発達上で、脳の回路を発達、成長させて、子供が知的、肉体的、感情的に発達することを可能とします。大人の養育者との関りあいが強く結びつけばつくほどに、子どもの脳は発達します。

幼い頃に社会養育施設に入れられた子どもの多くは、これらの脳の発達の分野で遅れを示します。悪辣な社会養育施設下に置かれた、子ども達は、4歳までに、落ち着いて、座ったり、立ったり、歩いたり、話したりすることすらできずに、発達が遅延します。

Berens and Nelson(2015)は、幼児期に社会養育施設で養育された子どもと、里親で養育された同年代の子どもを比較研究しました。結果は以下です。

●身体的成長阻害

The Bucharest Early Intervention Project の研究報告では、社会養育施設内における子どもは、2.6か月ごとに1か月の通常の成長が阻害されました。中国、ロシアでの他の社会養育施設における研究でも同様の結果(3.0または3.4か月ごとに1か月の成長遅延)となっています。

●社会的および心理的発達の阻害

ヨーロッパ諸国でのいくつかの研究結果では、社会養育施設内では、乳幼児は、大人の養育者(給与による)への愛着不全を示すことが報告されています。この大人の養育者への愛着不全は、後年、行動異常、うつ病、不安障害、適応障害などの精神障害の原因となることが関連づけられています。

●IQ低下(脳発達阻害)

Van Ijzendoornetal(2008)は、19カ国の4000人の子供たちのIQに関する分析データを分析しました。

出生後、家族または里親で育った子どもの平均IQ=104
社会養育施設で育てられた子どもの平均IQ=84

Bucharest Project 研究結果によると、社会養育施設で育った子どもの脳は、活動域が狭く低く、不活発であるのに対して、一度も社会養育施設で育ったことのない子どもの脳の活動域は広く高く、脳が活性化しているのが、画像からわかります。

他の研究では、社会養育施設で養育された子どもには、自己評価の低さ、共感力の欠如、攻撃性、自傷行為、自殺行為、言語発達の遅延など、さらなる悪影響が報告されています。


■社会養育施設における、ネグレクト、虐待、搾取のリスク

国連子どもの権利委員会は、社会養育施設においては、子どもに対して、体罰、身体的拘束、治療と称した「電気、向精神薬投与」などの児童虐待が行われていることが報告されています。

メキシコの精神科施設では、自傷行為(壁に頭をぶつける等)を行う子どもを放置したままにする、あるいは、半永久的に身体的拘束を行う等の人権侵害が行われているとの報告がなされています。

ヨーロッパの研究では、特に障害のある子供に対して、同様に虐待的な措置が行われていることが報告されています。

このような社会養育施設へ、予算増額や職員増員措置がなされても、根本的な解決策とはなりません。それどころか、予算増額や職員増員措置は、より多くの子どもがより長期にわたり社会養育施設に入所させられる弊害となります。

チェコスロバキア(旧共産圏)では、多くの子ども達が、社会養育施設入所とされており、ひとりの養育者(給与受給者)につき5人の子どもを養育するという非常に高い水準での対応がなされてはいますが。それでも、チェコスロバキア政府の研究結果では、施設入所の過半数の子どもが一度は施設から脱走し、施設出所後、半数の子どもが犯罪に加担するという結果が報告されています。


■進学、就職、子どもの将来を台無しにするリスク

社会養育施設で育った子どもたちは、成人期に不可欠なスキルである社会的なネットワークを構築できず、引きこもりとなります。就職するのが難しく、行動障害、健康障害、精神障害に、生涯、苦しめられて、性依存、性感染症、アルコール依存、薬物依存、暴力などの依存症やトラブルに苦しめられます。就職できず、経済的に自立できず、犯罪に巻き込まれて、生活保護受給や、刑務所措置となるケースが多い。

ロシアの社会養育施設で養育された子どもの調査データによりますと、
1/3 は、ホームレス
1/5 は、犯罪歴
1/7 は、性風俗業(買春関与)
1/10 は、自殺

障害を持つ子どもたちは、生涯にわたって社会養育施設に拘束されて、自己決定権すら保持する機会(禁治産者)を得ません。

社会的養護施設リスクへの解決策

■解決策

子どもを社会養育施設に入所させる必要性はありません。ひとつの選択肢にすぎません。家庭環境で子どもを養育するほうが、経済効率が良く、子どもの発達に寄与します。

  1. 家族断絶を防止する

地域社会コミュニティのサービスは、家族の分離を防止し、子どもを社会養育施設へ措置することを食い止める効果があります。子を含む家族のために、地域の学校、医療機関、金融および法務機関が各種サポートを行い、障害児ケア、育児指導、社会的保護、家族向けのサービスを提供することです。幸いにも、社会サービスによって、子どもを育てる家族を支援するほうが、社会養育施設へ措置よりも、経済的に経費が抑えられることが証明されています。(子ども1人/1年間で500万円が児相施設=社会養護施設へ予算措置されているそうです。成人するまでに1億5千万円措置されているといいます。しかし成人後も、生活保護、犯罪者、精神障害など自立できず廃人とするわけですので、子育て家庭に500万円/年、配ったほうが、子どもが大卒で就職できるわけですので、費用対効果が良いと言えます)

2.家族の再統合

社会養育施設の子どもたちの80%は少なくとも一人の親がいて、親子分離される理由としては、貧困、障害、教育へのアクセス、緊急事態となっています。適切な社会コミュニティ・ベースのサービスが提供された場合、子ども達は、もとの家族のもとへ戻ることが出来ます。社会養育施設に入所した子どもたちを、彼らの最善の利益となる環境(家庭)復帰させるためには入念に準備することが必要です。

3.代替家族、親族、里親

虐待、ネグレクトの場合を含め、出生家族に戻れない場合、子ども達は、親族、里親、養子縁組で、家庭的な代替環境で生活することが可能です。これらの全ての潜在的養育家族は、注意深く、スクリーニングされて、訓練を受けて、子どもの最善の利益に資することが出来る保護的環境であるということを、監査されます。年長の子ども達には、ときに、小規模グループホームが必要とされます。


■社会養育施設から家庭的養育への過渡期

先進国の多くは、すでに、社会養育施設から、家庭的養育へと移行しています。子ども達が、愛されて、必要とされていると感じる家族と共に暮らせるように、高品質かつ費用対効果の高い養育リソース(家庭型養育環境)への政策変換を可能とする、政府への情報提供と、支援サービスを提供するコンサルティング会社も先進諸国ではみられます。CM; Lumos(養育シンクタンク、コンサルティング NPO)

参考文献




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?