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我が家とリバプール vol.3 出発

発熱

 2010年が終わりを迎える頃には全ての荷物が片付き、東京の自宅をあけ渡し、2011年の正月は実家で迎えました。年明けに市役所で最後の手続きを終えパッキングも済んだ出発前日の夕方、どうも生後7ヶ月の息子の様子がおかしい。

 鼻水が出て顔も赤い。悪いタイミングで風邪ひいちゃったなぁ、と熱をはかったらなんと40度超え😰。みるみるぐったりしてきたので救急医療センターに駆け込みました(国民保険証があってよかった!)。

 医師からは「単なる風邪ですが、もし明日の朝の段階で39度超えていたら飛行機はあきらめてください」と言われ、解熱剤として座薬を処方された。もう数時間後には妻の父が迎えに来てくれて、空港へ向かう予定になっている。

 僕らはほとんど眠ることもできず、1時間おきに息子のおでこを触り祈る気持ちで朝を迎えた。出発するときは座薬が効いてさすがに熱は下がっていたけど、静岡から成田まで車で3時間ほど、チェックインして搭乗までは2時間ほどあるだろう。

 たしか搭乗前には37度くらいになっていたと思う。なんとかボーディングして、初めての赤ちゃん用コットに息子を寝かせたけど、ここからロンドンまで12時間。機内でずっと息子の心配をしていたことしか覚えていない。

引っ越し

 さて、また引っ越しだ。

 前年の11月、日本の会社を退社する前に、今後の仕事内容や一緒に働く部署のメンバーと打ち合わせるために訪れたとき、現地スタッフがリバプール近郊(市外)のチェスターとかノースウィッチといった小さくて素敵な街の郊外にある不動産回りに連れて行ってくれたのだけれど、どうもしっくり来る物件がみつからない。

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 地元の人にとっては郊外の裏庭付きの一戸建ては安全で家族でも住みやすいのだろうけど、便利極まりない東京都内から引っ越してくる自分たちにとっては、普段の買い物など利便性をまったく感じないエリアばかりだった(というのもあるが、正直言って高級すぎる家が多くてひいた)。リバプールからも離れている。

 妻は英語は理解するけど会話は初心者レベル。いくら日本と同じ左側通行だといっても、始めての海外暮らしでいきなり車であちこち買い物にいかせるのも負担が大きいし心配だ。

 親切に自分のクルマで何件も内見につきあってくれた同僚には丁重に御礼を伝えて、やはりリバプールの中心地に近いフラットを探しにひとりで不動産屋に飛び込んだ。

 ここからがあっと言う間の出来事だった。

「すみませーん、来月日本から引っ越してくるので部屋を探しているんですけど...」と言い終わるやいなや、バン!っと分厚いファイルをデスクに置いてこう言った。

 「俺はこの街に住んでいる日本人夫婦を知っている。すごく良い人たちだから彼らと同じフラットに住め。イギリスもリバプールも初めてなんだろう?幸い一部屋空いている。オーナーも良い人だ。悪いことは言わないからここに決めなさい。」

 僕より10歳くらい年下かなぁ、でもきっとアジア人の僕のことは年下だと思ってるんだろうなぁ、でも実直で信用できそうな人柄だったし、とりあえず内見してみることにした。

 (住んでみてわかったのだけど、リバプールの日本人家族率はかなり低い。僕たちが知り合ったのは3家族だけで、そのうち1家族は短期滞在ですぐに帰国してしまった。)

 そこは本当に街のど真ん中にあって、でも東京ほど高い建物ばかりじゃなく、商店街(Bold Street)も歩いて1分もかからない。窓からの眺めもいい。これはいいんじゃない?気持ちが上がった。

 よし、ここに住むことに決めた!家具付きの部屋だからあれこれ買い揃える必要もない。

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 洋服でもクルマでもそうだけど、これまでの個人的な経験上、直感的に短時間で決めたものは案外当たりが多い。ヨーロッパ最古のチャイナタウンは目と鼻の先で、日本食材を買えるスーパーなんかもあるらしい。

 家賃はたしか広めの1ベッドルームとリビング&ダイニングで、月750ポンドくらいだったと思う。保証金を250ポンド支払って契約終わり。日本のように保証人だの敷金礼金取られてさらに引っ越しで費用かかってうんざり...みたいなことは全くなくて感動した。

 よし、あとは家族で来るだけだ!

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 親切なことに、不動産屋の担当者は同じフラットに住む日本人夫婦の部屋番号を教えてくれて、彼らへ連絡までしておいてくれた。

 僕はリバプールのこういう人々のあたたかさが好きだ。住んでからも何度も似たような経験をした。ほんとうに気さくで親切な人が多い(酔っ払いに絡まれるとかなり面倒だけど)。

 ちなみに、そのひとつ前に行った別の不動産屋で紹介された部屋に行くと担当者が、「実はここはその昔、ジョン・レノンが住んでいた部屋なんだ。」と真顔で言われたけど絶対に嘘だったと思う。


 というわけで、とうとう家族でリバプールの地を踏んだ。

 息子も元気を取り戻し、一安心。

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 でもでもでもー!

 はい、めでたしめでたし〜、とはいかなかった...

 そこに大きな罠があったことは住み始めた最初の夜に気が付いた。内見は基本的に日中に行われる。

 僕らは夜のリバプールを知らなかった😭


続く。





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