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来訪者

これは私が仕事で地方に出張した時に体験したお話です。
大きなプロジェクトで滅多に無い長期出張だった為、マンスリーマンションを借りて活動していました。

忙しい日々の中、中休みを頂ける事になりその街を探索してみようと外に出掛けました。周りは都会と違いちらほら田んぼがあり、昔ながらの商店街がありました。

その商店街の終わりの方に普段なら決して足を踏み入れない骨董店に、なぜか惹かれて入ったのです。
そこで綺麗に装飾された手鏡に強く惹かれずっと眺めていました。

『これ、下さい。』

店主がはいはいと奥から現れ私の手元の鏡を見て驚いた表情をする。

『…そ、それは…どこで?』

???
一瞬何を言っているのか理解できず黙って見つめ合う。

『いや、そこの棚にありましたよ?売り物では無いのですか??』
『……売り物ではあるのだが…』

何だろう?売り物だけど売りたく無いみたいな煮え切らない態度だ。
もしかして物凄いお高いアンティークとかだったらどうしよう…。

『あ、あの。凄く気に入ったので欲しいのですが…お高いのですか?』
『…………どうしても欲しいのかね?』
『は、はい。』
『では、持って行きなさい』

へっ?!

店主の唐突な言葉にキョトンとして見つめる、そんな私に対してこちらを一切見ず言葉を付け加える。

『ただし、何か…いや、不要だと思ったらすぐに持って来なさい』

そう言い残して奥に引っ込んでしまった、変わった人何だろうか?
私は大きめの声でお礼を伝え店を後にする。
お目当てのものが手に入り私は気分良くマンションに帰るが、この日から恐怖の日々が始まるとは思いもしなかった。

その夜。
お風呂から上がりビールを飲んで寛いでいたら、凄く視線を感じ何だか気味が悪いと何気なくカーテンを少し開ける。

『おわっ!』

思わず声を上げてしまう、ベランダの窓から見える街灯下に白いワンピースの長い髪の女性が立っていた。

な、何してんの?こんな時間に……。

するとゆっくりと歩き出し何処かに行ってしまった。

なんだぁ、たまたま立ち止まってただけか〜、もう驚かせないでよ〜。
怖すぎだから!

そう思いカーテンをしっかり閉めてその夜は過ぎて行った。

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