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密林のサクラ

はじめに

なんとか1つ論文を読み終えることができた。
ゴリゴリ計算してる長い論文はきつそうだったので、質的研究の短めの論文をチョイス
思ったより投稿が遅くなったけど、先月には読み終わっていたので許してほしい
ベイスターズの緊急事態宣言はいつ解除されるのでしょうか...

論文紹介

今回選んだ論文は Rajvardhan Oakの「The Fault in the Stars: Understanding the Underground Market of Amazon Reviews」<https://arxiv.org/abs/2102.04217> である。
Amazonでのフェイクレビューについてのインタビューをまとめた論文である。

問題設定

Amazonの商品ページには数多くのレビューがついている。けどそのレビューが信頼できないケースが多々ある。いわゆるサクラってやつ。業者の息がかかった人が好意的なレビューをつける行為である。そのサクラは複数のアクターが関わる複雑な闇市場によって生み出されている。
この論文は、インタビューによってどのようにサクラが生み出されるのかを調査した質的研究である。

登場するアクター

サクラレビューに関わるアクターは2つ存在する。
Agent/Seller, Buyerである。
Agent/Sellerはレビューを斡旋する仕事である。
BuyerはAgent/Sellerからレビューの依頼を受けてレビューを書く仕事である。仕事の流れはこんな感じ

1. Agent/SellerがFacebookやInstagramでレビューを書いてくれる人を募集する。
2. Agent/SellerがBuyerのAmazonアカウントを確認して、レビューを書いても垢BANされないかチェックする。
3. BuyerのPaypalアカウントの確認。金銭のやり取りはPaypalで行われる。
4. Agentが製品のキーワードと画像をBuyerに送って、レビューしてほしい製品を指示する。
5. Buyerが注文して、数量と値段などをスクショでAgentに送る
6. 注文が通った後、レビューを書いてこれもスクショで送る
7. レビューが通った後、製品の金額をPaypalで送る

モチベーション

Agent, Buyerのモチベーションはお金である。
Agentはレビューを1件斡旋するごとに4USD~10USD貰える契約がある。
この額は途上国では結構な金額になる。パキスタンだと5食分だ。
ネットワークだけあればできるこの仕事は途上国にとって魅力的なのだ。
しかも欧州とやり取りするので、時差的に夜にできて副業にもってこいなのだ。
Buyerも商品をタダで買える。しかも商品を売れば儲けることもできる。
なんてwin-winな関係なのでしょう

SNSの役割

AgentとBuyerとのやり取りや募集はFacebookを通して行われる。
恐るべきはFacebookのターゲット広告である。一度サクラレビュー募集の広告(インフルエンサー募集とかテスター募集とかそんな感じのタイトルらしい)をクリックすると、それからずっと同じような広告しか出なくなる。
そこで広告から専用のページに飛び、チャットボットの指示に従ってアカウント情報などを入れていく流れになる。ちなみにインスタはFacebookによって運営されているので、Facebookとインスタを連携させていれば、インスタの広告も汚染される。
レビュー募集では、Facebookのグループを使って行われている。AgentとBuyerがいるグループでAgentがレビューを書いてくれるBuyerを募集するのだ。中には200人規模のグループも存在する。
Facebookもこうしたコミュニティを摘発しようとしているが、彼らは強かで、表記ゆれを駆使して、なんとか垢BANを逃れている。例えば、reviewをre3viewとしたり、refundをr*fuundとしたり、amazonをamz*nとしたりする感じだ。

垢BAN逃れの方法

Amazon側もサクラレビューを放置しているわけではない。機械学習などのアルゴリズムを使って怪しいレビューやアカウントを削除している。
ただ、相手側も手強く、垢BANされないための方法が徹底されている。
その方法をいくつか紹介しよう。

1. リンクで製品を指定するな!
レビューを書いてもらう時、製品はもちろん、売っている業者も指定された所から買わなきゃいけない。結構めんどくさい。でもリンク経由で製品を買うとAmazonから目を付けられる。だから頑張って製品名で検索しなきゃいけない。ブランド名も入れない方がよい。

2. すぐ注文するな!
製品を買う時にすぐ注文してはいけない。あまりに早く注文すると、Amazonから目を付けられる。商品を買うときは少なくとも1分くらいは関連商品をチェックするとよい。

3. ギフトカードは使うな!
Amazonから目を付けられるわけではないけど、ギフトカードは使わない方がよい。なぜなら、Agentからの返金が減るから。彼らは細かくチェックしていないのだ。後、クーポンも正規の顧客のためのものだから使ったらダメ

4. すぐレビューするな!
レビューするタイミング、頻度には注意した方がいい。なぜなら、Amazonから(以下略) 商品が届いてからレビューするまで10日は待った方がよい。さらに頻繫にレビューすると怪しまれる。週に3つ、月に10程度までにとどめたほうがいい。それでも多い気がするけど

5. 文字や画像をいっぱい使え!
レビューする内容には当然気を配ろう。少なくとも100語くらいは書いといた方がいい。中にはレビューの長さでプラスにお金を払ってくれるAgentもいるくらいだ。さらに画像や動画をつけとくと安心。なんと製品と関係ない画像でも問題ない。売っている業者については触れない方がよい。面倒なことが起きるらしい。

6. 同じヤツから買うな!
同じAgent、Sellerから連続して何回も買わない方がいい。同じストアで買うには大体2ヶ月くらいは空けておくべきだ。
さらに、Amazonのアルゴリズムは同じAgent経由で製品を購入していると、それを学習してしまう。同じAgentから連続して買うのも控えたほうがいい。

7. ☆5ばっかりつけるな!
☆5ばっかり付けると、Amazonから(以下略)
不思議なのは、プレミアム会員になってると垢BANされづらいらしい。さらにアカウントを作ってからすぐレビューするのもやめといた方がいい。

最後に

この論文では、Amazonのサクラレビューについて当事者へのインタビューから地下市場のメカニズムを分析した論文である。彼らの垢BAN逃れの方法を分析することでサクラレビューを減らせるかもね。
次は頑張って数式ゴリゴリ論文を読みたいね。

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