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【小説】ハトを知らない人々

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ハトと知らない自分とハトを知らない人々のお話です。
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2018年9月の記事一覧

3.大会議

3.大会議



ある日ひとりの旅人が町を訪れました。それで町中大騒ぎになりました。外部から人がやってくることなんて、千年に一度あるかないかの出来事だったからです。

食堂の仲間たちも、テーブルを囲んでああだこうだと旅人について論じ合っていました。ハトはテーブルの上で様子をうかがっていました。それで尋ねました。

「外から人間が来ることがそんなに珍しいことですか?」

食堂の息子が大きくうなずいて答えました。

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2.食堂の仲間たち

2.食堂の仲間たち



ハトは毎日仲間たちがいる食堂に行っては、日が暮れるまで一緒に過ごしていました。

食堂の仲間の中には、町いちばんの美人さんもいましたし、町いちばんの勉強家もいました。食堂のおばさんはいつもおいしい料理をつくってくれたし、その息子はギターを弾きながら上手に歌を歌いました。また、となりに住んでいる子供たちも遊びに来ました。ハトは食堂の仲間たちと毎日歌ったり踊ったりして楽しみました。

けれどもハト

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1.ちび

1.ちび

町に一羽の小さなハトが住んでいました。

ハトは人間たちが好きでしたし人間たちもハトが大好きでした。

けれども人間たちはハトが「鳥」だと知りませんでしたし、「ハト」という名前も知りませんでした。だから人間たちは、ハトをただ見た目が小さいから「ちび」と呼んでいました。

(続く)