伝えてどうする

言葉とは
初めに光であったらしいが

崇め奉り従わねばならぬ
支配のツールである前に
自分自身の気持ちを
内的な何かを
他者に伝達するためのものではなかったか

共有するためのもの
花園の場所を
餌の在り処を
誰かに伝えるためのもの
頭の中にしか存在しないものを
誰かに伝えるためのもの

道具
道具
道具…

言葉を知っているつもりでいた
言葉を使っているつもりでいた
だけどもしかしたら私は
伝えるためにはそれを
使ってこなかったのかも知れない

「伝えてどうする」
という声がする
それは無視され拒絶され否定され棄却され破棄され排斥された
私の気持ちと言葉が出した結論だ
「伝えてどうする」
そう、壊されるだけだ
だから私はそれを伝えるために使うことをやめた

言葉は道具だ
命令し、支配し、操り、惑わせ、騙し、壊して
身を守るための武器だ

安全でない世界では
言葉はそのような使い道をされる
ではもし安全な世界だったなら
言葉はきっと
より仲良くなるために
より幸せになるために
花園の場所を教えるために
使われたことだろう

あっちに沢山菜の花が咲いていたよ
そして美味しい蜂蜜ができました

あっちに泣いている子がいたよ
たいへんすぐに行って抱いてやりましょう

ここに泣いている私がいる
私の悲しみがある
打算なく
策略なく
意図なく
意味なく
ただ誰かにそれを
私は伝えたい

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