追懐

君と手を繋いだ時
多分思い出してしまったんだ
どこまでも続く緑のトンネルを
誰かに手を引かれ歩いた
いつかの日々を

その時も僕は
このままこの気持ちが
ずっと続きますようにと願っていた
どうかこの康寧を
壊さないで汚さないで消さないで
このままどこにも辿り着かないで
満たされるまで…

追懐に呑まれた僕を君は抱き寄せたけど
僕は怖かったんだ
思い出のその先が

恐怖がすれ違って
冷たい言葉がボタボタと床に落ちた
僕は君を見ていて
君は僕を見ているから
二人の景色が重なることは無いのだと
誰も気付いてなかった

僕と手を繋いで
どこまでも歩いてくれる人は
どこにもいなかったし
これからもどこにもいない
時の存在を知る前に叶わなかった夢は
砕けて二度と帰りはしない

砂時計を抱いて眠る僕を
抱き締めて朝まで
先に夢に堕ちた君の隣
寂しさの塊になった僕が待つ
冬の白い朝

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