羅列

言葉の羅列
お行儀よく
それはあるべき場所に
大人しく座っているべきで
飛び出した言葉は
消しゴムで綺麗にされてゆく

美しさは模様
均等に配置された目鼻なら
どんな軌道を辿ろうとも輝く
善は悪の対極にあるべきであり
混ざっていては胸が悪くなる

水平線に重なりたいのに
嵐は駒のようにぶつかり弾け続ける
止まって転がることもなく
きっとここには重力がない

風にさらわれたいのに
錨は絆より頑丈な鎖で僕に繋がれている
翼になるはずの羽根は
おかしなところから生えてくる
誰かとすれ違うたびに
笑い声が聞こえる

愛して欲しいと頼み込んだところで
もう故郷は焼けて跡形もない
砂糖をまぶさずに口に入れれば
何もかも薬みたいな味しかしない

破壊に再生が追い付かなくなった時
僕の血液は臓器を保てなくなっていく
同じ仕組みでとうに壊れていたはずの心が
なぜ痛みだけは常に感じ続けているのか

世界中に散らばってしまった瞬きを
僕は残らず吸い込んで夏の水面に吹き与えた
相応しい場所に収まっていること
僕が記憶に望むことは
今やそれだけだ

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