コンビニ前にて

「懐に入るには」
「入るには？」
「気配を消すこと」
「気配を消すこと？」
「そう、気配を殺す。殺気を殺す。限りなく無に近づく」
「ふむ、そしてトロイの木馬するの？」
「いや、俺はしない」
「懐に入る目的は？」
「寒いから？」
「ハムスターか」
「ハムスターはかわいいなぁ」
「…寒いからか」
「…んー。懐に入らないと見えないものがあって、それを見るためかな」
「何が見えるの」
「何だろう、家族百景みたいなやつ」
「見てどうすんの」
「見ることが目的」
「考古学かよ」
「ああ…そんなもんかもな」
「お前歴史苦手じゃん」
「未来に生きてるからな」
「もし未来へ行ったらさ」
「あ？」
「デロリアンで俺ん家の前に来いよな」
「いいぜ」
「指切りしとくか」
「ダセーよ。血の掟式は？」
「それ不衛生」
「口約束じゃダメなのかよ」
「お前すぐ忘れそうだから」
「女子かよ」
「ジェンダーは幻想だぞ」
「あとで一筆書くよ」
「忘れんなよ」
「お前がな」