帰郷

単純で愉快だ
僕が見たままが全てだった
「本当はこうだよ」なんて全部大嘘で
正しさと間違いの話も意味なしで
その時そこで見たものが全て
感じたことが全て
何も考える必要などなかったし
何を探す必要もなかった

帰って辞書を引いたり
検索したりしなくてもいい
だってその場のことはまだ
誰も何にも記録してない
僕の日記が最初だ

僕が嫌だと思えば苦痛があったし
僕が怖ければ恐怖があって
僕が楽しければ愉悦があった

矛盾にまみれて筋道がなくて
気分屋で流され易くて臆病で大胆で
常に葛藤したがり
どんなに散らかっていてもそれが僕で
だからそれが何だと言うのか

取り残した気持ちを一つ一つ拾う
あの時は本当に嫌だった
あの時は本当に怖かった
あの時は本当に楽しかった
僕が語るそれが僕の軌跡
誰かがそれを評価しようが
中身は微塵も変わりはしない

僕は僕に還ってきたよ
記憶は勿論あてにならないけど
今持つ記憶とイメージが僕の過去だ
それを眺め淡々と認め続ける
僕はずっと僕だった

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