バベル

ここがどこかわからない
そんな気持ちがずっと続いていた
誰にも言葉が通じない
そんな悲しさをずっと抱えていた

誰もが僕に理解を期待し
耳を傾ければ安心した笑顔を見せる
しかしその「見返り」かのごとく降ってくる
「愛」のふりがなを振られ
持ち主を離れ暴走した孤独が
僕を苛んだ

望んだのは同じもの
理解に他ならない
共に僕を解体し分析し
狂った回路を修正して欲しい
それにしか興味がない僕を
冷たいと声と言葉が責めた

「馴れ合いながら騙し騙し生きるのが人生」
その方法論は苦痛が許容範囲内に収まっている人間のものだ

優しい顔して穏やかな声して
僕の背中刺して足を払って
無様と笑った人間の顔を百人は思い浮かべられるけど
何より僕が情けないのは
そんな人間にさえ何か―誤魔化すのはやめよう、理解を―求めていた
寂しさだ

それこそ僕が僕の手で抱くしかない
エゴで縁取られた孤独で
それを忌み嫌われた記憶は強烈に
僕の根幹を貫いていた

ああ、世界でただ一人
あなたさえ僕の孤独を抱いてくれるなら
僕は今すぐに救済されるというのに!
そんな悲しみ怒り悔しさ寂しさ
所構わず放射していたなんて

でもねこのシーンはどこかで見たことがあるんだよ
誰だってここに辿り着く
一番見たくないものを見て
一番聞きたくない言葉を聞いて
一番知りたくないことを知った時
その時にストーリーが動く

僕は守りたいものを守れる人間になりたいんだ
血脈は体温に敵うはずがない
いつでも今を生きるこの体と心が
僕を導き強くしてくれる

握り返した君の掌のぬくもり思い出す
言葉は要らない約束も要らない
そっと触れてこの頬に
そっと口付けて傷跡に

信じさせる前に感じさせて
生きていけると
生きていると

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