街角にて

「あーもうすぐバレンタインだー」
「チョコ誰かにあげるの?」
「ねぇ知ってる?聖バレンタインがどんな人だったかとか」
「いやあんまり」
「だよねぇー。人は何故バレンタインで騒ぐんだろう」
「男は、女の子が告白してくれると思って期待したり不安になったりしてるんだよ」
「あーそうなの?…そんなに気になるの?」
「男の自信の根拠は、金、仕事、モテしかないからな」
「ふぅん」
「ピンと来ない?」
「よくわかんない。チョコが貰えるかってそんなに大事?聖バレンタインの日に?なんかそんなことよりもっと大切なことがない?」
「例えば?」
「うーん、好きな人がいるなら、その人との日頃の関係性が良いものかどうか、とか」
「ああ、そりゃまあ、大事だね」
「そんなさ、バレンタイン…とかクリスマスとか、イベントって大事なのかなあ、よくわかんない」
「きっかけって大事なんだよ」
「人生は毎日きっかけに満ち溢れていると思うし、だいたい自分ですぐ行動できないなら待ってても向こうから夢はやってこないと思う」
「まあ正論だなぁ」

「でもさ」
「何?」
「君、俺が今告白したらきっと誤魔化してはぐらかして逃げるじゃん」
「私のこと好きなのは知ってるよ」
「うん。だからさ、俺としてはもうチョコくれるの待つぐらいしか手が残ってないわけ」
「それは自分で選択肢潰してない?」
「じゃ、他のオプション言ってみてよ」
「私を見捨てて他の君を心から好きで結婚したいって女の子と付き合って幸せになるとか」
「君はどうすんの」
「私は一人でいつでも幸せ。誰かと付き合う方がしんどい」
「俺と付き合うの嫌?」
「その質問さ、イカサマじゃん」
「でも嫌なんだろ」
「さあ…付き合うって何かわかんない」

「例えば手を繋いで歩くとか」
「やだ」
「デートするとか」
「いつも似たようなものじゃん」
「俺の事何だと思ってるの?」
「ともだち」
「ともだちは嫌だ」
「じゃあ他人に戻る?」
「他人だったことある?」
「出会う前とか?」
「何年前だよ…」

「何で俺と付き合いたくないの」
「あーもう。君と付き合ったら結婚しなきゃいけないじゃん」
「そんなこといつ言った?俺」
「顔に書いてある」
「……。嫌なの?」
「あんまり、先のことって考えたくない。今さえずっと危うくて。それに君は私にちゃんと向き合ってはくれないし、私もそう出来そうにないし」
「……」

「あー、だからバレンタインって、嫌い」

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