重力

僕はずっと
意義や意味や
中身や手応えを
探し求めてきた

それはある時には感じられ
ある時には気配もなかった

無数にある正しさの基準に
合わせて生きようとしていたら
僕はいつか時間に酔って
上下も左右もわからなくなっていた

ただここにいる僕を
僕は見つけることが出来ずに
空虚な胸のうちに
何か詰め込もうと必死だった

人を傷つけたことも
自分が傷ついたことも
どうもよくわからず
誰かの涙のワケも考えなかった

意味は決められたもので
存在するわけじゃない
記号と意味の関係は
恣意的なものじゃなかったのか?

誰もいない孤独の中で
僕は全ての繋がりを見失っていった
僕を殺そうとする全てから心を閉ざすために

ねぇそれでもいつでも
かろうじて生き残った僕に
世界は手を差し伸べてくれた
いつだってひとりのあとには
ひとりじゃないよ、が
待っていてくれた
僕はそれを知っていて
確かめ続けてきた

意味はまず僕が感じて
次にそれと記号の組み合わせを見つける
僕は僕の気持ちを
名付けようとすることで生きていける

全て与えられた借り物だから
僕自身など存在しないと嘆いてきた
僕の名前も体も感情も
全て誰かの所有物で
いつか返上しなければならないなら
僕は僕を一体どんな方法で
この世界に位置付ければいいの?

それは誰かの
君の名前と体と心
君は世界の一部じゃない
僕と同じなんだ
だから触れたいと思う
君の体に心に
君の名前を呼ぶために
僕の声はある

あとがき
車窓をふと見上げたら月がめっちゃ綺麗です。人類が月に到達してから、月を歌った曲がヒットしなくなったらしいですね。
では、この世からラブソングがなくならない理由は、誰も誰かに到達することなんて、出来ないからなのかも知れません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?