運命の馬車の手綱を握れ ミュージカル憂国のモリアーティOp.4 1/27ソワレ感想
アテンション
SWのオタクの口から出てる感想です。
ネタバレ配慮なぞない。
興奮で記憶が適当なのも初見パッションの記録として生ぬるく見てくれ。
はじめに
まずはミュージカル憂国のモリアーティOp.4「犯人は二人」、開幕おめでとうございます🎉🎉
そしてこんな超大作を作り上げて見せて下さり本当にありがとうございました。これから回を重ねるごとにさらに良くなるのを思うと素晴らしすぎて心臓が破けそうなくらいにすごかったです。
最後まで無事に走り切れることを心よりお祈り申し上げます。
1幕
イントロダクション、大英帝国の華やかな貴族たちとそれに虐げられ搾取される貧民たちの対立が最初からクライマックスの迫力。下層を虐げる悪い貴族(観念的存在)に女性貴族も加わってるのが印象的だった。最初にスポットライトで浮かび上がるのが貴族たちで、華やかな立ち振る舞いが舞台役者のようだなと思い、2の劇場で絵空事の悲劇に涙するのは裕福な奴らだというのを少し思い出した。
犯罪卿とは何者なのか……
犯罪卿を城に例えてその中でさまようシャーロック……お宝のある高い塔の1番上を探してるんです?カリ城のクラリス幻覚まだ引き摺ってていい?
シャーロックの力強い「I will」が最初「歩む」に聞こえて?とはなってたんですけど「闇(???)の谷を行く」云々言っててわはーーー!となりました。どんな死の谷を歩んだとしても……
シャーロックに己を終わりを望むウィリアム。直前までシャーロックが立っていた場所を照らすスポットライトに手を伸ばすのに胸がきゅっとした。
オープニングで両岸に立って向かい合い「地獄に響く闇と光の旋律」歌うのハァーーーーーーンなるわなったわ。
議員の爆破暗殺事件、民衆の中の挙動不審な男に「怪しいな……?」って思ってたら本当にただ挙動不審なだけで犯人は別だったのちょっと面白かった。
主任警部代理でホワイトリーに対応するレストレード、役者の都合ではあるけどこの時にはまだホワイトリーがどこまで見抜けるかとかどれだけの展望を持っているかが分かってないから、ひっそりウィリアム陣営なパターソンはまだ議員の前に出なかったのかなって。そういうの考えるのも楽しい。
「僕は大丈夫、全て上手くいくさ」って言葉で会話を終わらせて相手からの心を受け取らないウィリアム、ホワイトリー、そして最後のシャーロックという人物群ぇ……
兄様と大佐のウィリアムの真意を見抜いて、それが己の望みと反しても願うのなら叶えてやりたいというのがもう、空き家……空き家……。そして大佐のソロでお前の行く道を守る、例えそれがどんなものだとしてもというのがうわぁぁとなり、初っ端のシャーロックは「谷を行く」つってんだよなぁウィリアムの行く道と同じ場所を俺も行くってあれなんだよなぁわあ……となり。
公園の落成式でホワイトリーに光を見た瞬間を原作では目に光が指す絵で表してたので「こっち向いて!!」って思ったら向いてくれてニッコリなりました。喧喧囂囂の聴衆の中拍手するウィリアムが良かったしここら辺のウィリアムの声に出てる嬉しさがもう……
ウィリアムに似せたムーブする時にガチ宗教じみたことになる兄様ーーー!!!???オルガン初登場にもすげーびっくりしたんですけど「これは天の意思、剣を持て」と神の言葉を代理する神父してたのが本当にやばいのよ。幼少ウィリアムに運命を見たステンドグラスを映し出すんじゃないわよ。次回で初代教皇ペテロをオマージュして3度知らないを言うことになるやつでしょもうこれ。
議員に対する「自己顕示欲か平等の理想か」、それがめぐりめぐって「お前にあるのは強き悪を挫く正義では無い自己顕示欲だけのナルシストだ」という犯罪卿への糾弾になるのか……大英帝国に平等をもたらす救世主という表裏一体の存在……
ラスキン!!!ラスキンが実在してる!!!!!ホワイトリーを慇懃無礼に案内するラスキン……議員が触った手すりをペッって拭くラスキン……ミルヴァートンのパイプに火をつけるラスキン……やべぇ、やべぇ
ハリー達もあの胡散臭いというか唐突に「うわ悪いやつの手下じゃん」って分かる強めチンピラスタイル原作寄せで来て笑った。もうちょいリアルナイズドするかと……
ホワイトリー邸の惨劇本当に酷くてしんどかった……えぐい、本当にえぐい
「綺麗は汚い、汚いは綺麗」ミルヴァートンwithお供の禍々しくてめちゃくちゃ悪い純粋悪っぷりがほんまやばい。やばい。ピアノもおどろおどろしい音色してるし本当に怖かった。
ミルヴァートン陣営の禍々しくて悪辣でクソオブクソな音楽と所業が連ねられるといくらウィリアムが頑張っても「なんて高潔で清廉な音楽をしている人なんだろう」「なんて心優しい人なんだろう」「そんな人が苦しんでまで心を削り手を汚し嘆く声さえ潰して黙するなんてあまりにも悲劇的だ」となってしまうの、犯罪者の王とも呼ばれこの身悪魔と成り果ててもと覚悟した者にとってそれはどうなのよ?と思ったら後で見せてきた「だってウィリアムにはそもそもそういうの似合わないからさぁ!!!!」の全力主張対比の一環だったの、最高に制作の手の平でダンシングしてる実感持ったわ。
血に汚れた証拠封筒を奪って議員の手を握るウィリアム、これを見たかったオブザイヤー
議員の「不平等を正すために戦い続ける」のところの声のぶれ方が複雑な感情滲んでてうぉぁ……となり、スっと出てきて最高速で刺しに来た犯罪卿にうわぁぁぁ……ってなり。「捕まえられるものなら捕まえてみるがいい」、本当に力強いしょごさんの低めラスボス発声。グッときた、んだけど同時に「ミュウィリアムやっぱり似合わねぇなぁ犯罪卿としてやることやれてるんだけど……犯罪劇舞台役者として満点でさえないんだよな」と思わされるのがやばい。舞台役者的大仰口上が満点だったアニメウィリアムを知っているから尚更思った。
ホワイトリーの死に際から激昂する市民、いや国民で始まる1幕終わり曲、音楽も演出も本当に凄まじかった。市民のハンドクラップと足踏み、怒声に混ざる貴族、ふたつが合わさった糾弾の歌。怒り呪う民衆の声に腕にウィリアムが嬲られ突き飛ばされ罪の衣を重たく被せられる姿、本当にやばい。黒く長いたっぷりとしたマントと言えばファントムみたいな怪人とかロットバルトみたいな悪魔とかそういうものが着用しているもので、でもそういうのって舞台演出的に見栄えするような形にされていたりするはずで、今回ウィリアムが被せられたマントはまっっっったくスタイリッシュさもなく似合わない野暮ったくて重たくて美しくない布だったんですよね。それに1度えー、と思い、そもそも犯罪卿にマント?と思い、直前のホワイトリーの「罪の衣は重かろう(うろ覚え)」を思い出して「それやんけ!!!」で頭パーンしました。お前にはそんなもの似合わないんだよという演出の主張が激しい。
それでも最後に振り返った時のマントが体にまとわりついたシルエットはあまりにも完璧な怪人、犯罪卿で頭ぐちゃぐちゃになりましたよもう。
2幕
犯罪卿を捕らえろ!!!で開幕する2幕、つらい。
ホワイトリー刺殺の真相を見抜く時のシャーロックの推理過程は推理することだけが楽しい軽薄さみたいな声音してたのに「そうだよな犯罪卿」でグッと客席睨むシャーロックはあの学生の時のこと思ってんだろお前みたいなド重たい声しててピェってなった。「国より何より先にお前を捕まえなきゃならねぇ」と考えるところ好き。「犯罪卿の心当たりはW・J・M……」がなかったのは寂しかったけど心当たりで語るような過程なんてもうとっくに過ぎ去ってるもんなミュのふたりはと思うとそれもそう。
ジョンメアちゃん可愛いよぉ。シャーロックにツラ貸せやジェスチャーするハドソンさんめちゃくちゃ好き。
2幕前半は憂国のモリアーティの舞台というよりはホームズパスティーシュ、正典四つの署名翻案(フィーチャリング犯人は二人)としての出来がいい舞台になってるなって思いました。シャーロックの心の声がめちゃくちゃうるさい四つの署名翻案。ジョンくんの語りで展開が進んでいくのも正典作者のナレーション〜って感じで良かった。
ヴァイオリンピチカートだけを伴奏にして歌うのもほぼアカペラに合わせて伴奏するのもどっちも高等技術すぎてなんやそれ!?!?となった今回のシャーロック思考パート。林くんと背中合わせで考え続けるの名探偵のシャドウ〜〜〜ついにスポットライトの下にまで進出して来おったな……ってなりました。
女の子に圧をかけ続ける男、改めてやな奴すぎるなほんま
メアリーちゃんの可憐で薄幸そうで聡明なところ、とってもヒロインあじがあってそれに似合う歌声してたなって。かわいい。ハドソンさんのお宝があったらソングの伸びやかっぷりも大好き。
グレッグソン警部補ネタちゃんとやってくれたの嬉しいしホームズハンドを手の甲にしたみたいなへんちくりんもちょっと笑ったんだけど、1、2の時みたいな憎めないちんちくりん感じゃなくて嫌味なやつみが強かったのだけ寂しかったな。
雑に逮捕されるサディアスが白崎さんだったから「また白崎さんが逮捕されてる……」って思っちゃった(3の貧民街の医師してた人)。
警部のいつもの日替わりコントの時間(場面転換時間稼ぎパートとも言う)がついに歌になっちゃったね。上手いのがおもろいのよほんと
船チェイスの演出にはへーとなり、トンガが撃ち殺されてない改変におぉとなり。
ミルヴァートンの221B訪問、原作から全く改変されてないのマジでびっくりした。ラスキンは改変するやろとばかり思ってたので……改変しないままあれやるんだ……
屋根に上がる時に「僕だけは」のイントロ流れるの明るくて大好き。結婚する理由と友情の話、原作でもめっちゃ沁みたところなのでミュの2人で見れたの本当に感無量。
憎悪が呪いが怒声が嘆きが耳にはびこり、手に滲む血肉の赤と匂いの幻覚が脳を苛む、そんなウィリアムの死への誘惑が語られる希死念慮ソングに「やっぱりミュウィリアムには死の擬人化存在と踊ってもらわなければ……」と思ったり「スーツ脱いだベスト姿は教授してる時(平和で穏やかで好きな物に邁進できるペルソナ)のスタイルだと思ってるからその姿で血と憎悪の幻覚に苦しんでるのしんどい」と思ったり。幻覚の中で苛まれどつかれ嬲られ頬を無遠慮になぞられるウィリアム、いけない色気がありましたね……。
そんなこんなしてたらウィリアムが机に突っ伏して兄様が出てきたので!?!?!?!?!となりました。西森さんなら先取りするって分かってたはずなのに兄様回想のウィリアムが出てくると全く想定してなくてすんごいびっくりした。いや回想されてる時期的にここら辺だから想定はできたはずなのに空き家回想部分の再構築で挿入される可能性をとんと忘れてた。
兄様のウィリアムを苦痛の運命に引きずり込んだ苦しい心情とそれでも言えることは「お前と共にある」しかない、というのに「私を呪ってくれ」って言ったの初めて聞く解釈すぎて脳が吹っ飛ぶかと思った。呪って欲しいんだ……そういう心の先でロンドン塔幽閉があるんだ……オワァ
「モリアーティが悪名となるのは計画だけれどウィリアムの名前だけが公表されるなんて」に対して「それでいいんだよ」とただ大丈夫、計画通り、それでいいだけで会話終わらせてもやもや貯めさせてるの絶妙な下手うちでこれは最後の事件で裏切ってでもされるわなってなりましたね。計画に関わる場所を分担してその部分だけ教えて全貌は分からないようにするのが手法とはいえ、「これで計画通りだよ」で言いくるめるにはウィリアムは愛されていたからな……。
ウィリアムへの思いを語るモリアーティ陣営ソングで「1人で死にたいというのなら自分がどれだけ苦しくてもその思いを尊重したい、お前が願うのなら叶えたい、その願いを守りたい」な兄様大佐と「兄さんのいない世界なんて嫌だどこにも行かないで」「あなたの夢見る世界に行きたいそれを作るヒーローのあなたがいなくなるなんてダメだ」のルイスフレッドのスタンスの違いが最後の事件と空き家でで各々がどう動くかの心情で、それを重たい旋律に乗せて歌われたのでもうしんどくてならない。
ミルヴァートン邸、影姿とそこから光に浮かび上がるウィリアムの演出がまず良すぎる。メインテーマの「地獄に響く闇と光の旋律 目覚めよ 真を見よ」のパートのピアノが後ろで鳴っているのがまたゾクゾクしました。闇と光が集まって真が現れた瞬間にそれか〜〜!!!と。拳銃向けて(ミルヴァートンが中にいるけど)向かい合う絵にはならないのがちょっと物足りなく思う。兄様と大佐もミルヴァートン邸襲撃に参加して殺陣を見せてくれるのいっぱいハッピー。ミルヴァートンオンステージがまじで長ったらしくて笑う。ミルヴァートンを注視しているようでいて2人で見つめあってんじゃねぇのかこいつらみたいな感じのウィリアムとシャーロックにもニヤッとなっちゃった。
シャーロックの「良かったよお前で」のところの話し方があまりにも真剣な愛の告白のテンションすぎて2人だけの世界で、脅迫王が急にその場から閉め出されたの本当におもろなのよ。環境音さえ二人の世界から閉め出されたし。いやまぁ周囲の音が聞こえなくなって世界に響くのはあなたと私の音だけになるのは列車のCatch meとかもそうだったけども。それにしてもそこのセリフってそんな声で言う場面だった?なんかもっと狂喜って感じのあれだと絵及びアニメで思ってた……凄まじい声で「お前で嬉しいぜ」って言ってた……心から嬉しいような、心底絶望しているような、なんかすごい読めないけど感情バカでかいのだけわかる声してた……
ここら辺ウィリアムはセリフ少ないからというのもあるんだけど白いスポットライトの中静謐にミルヴァートンを見据える微動だにしない後ろ姿がすーごい美しかったなぁ。
ここの三重唱はもっとバチバチに、それこそ初演至高の誘惑5倍パワーアップみたいなの来ないかなと思ってたからあれ?とも思ったんだけど、思いっきり三つ巴する気がないシャーロックにバカウケした(ウィリアムに歩み寄るんじゃねぇよ)のでオールオッケーです。
「これは全て僕が企てたこと」いやだいぶ弄ばれたけどそれ全部引き受けて自分の筋道に直したが正解だろ。
シャーロックがミルヴァートンを撃ち殺す時にウィリアムが銃を下ろしながら初演ダブリン男爵と配下後ろとか2大佐とレイモンド後ろで歌ってたあのヴォカリーズ旋律歌っていたのが「犯罪卿の手繰る操り糸」「ウィリアムの手の平の上」感があって胸に来た。ここではまだシャーロックの前で人殺しができない(ここで捕まるわけにはいかないので現行犯するのはダメ)のでシャーロックにミルヴァートン殺してもらうしかないんですよねウィリアムは。それが出来てしまった(シャーロックが人を殺してしまった)のを見たから「シャーロックの倫理的ハードル越えが叶った場合」に思考が飛んで。ミュウィリアムは「1人殺せば2人殺すも同じこと」がめちゃくちゃ実感こもりすぎた言い方だったし死の誘惑が幻覚となって苛むから「僕の終わりは君がいい」「早く死んでしまいたい」あたりがごっちゃになって「殺してくれるはずさ」と擦り切れた夢をつぶやくように言うことになったんか……。これはこれでしんどくていい。
「Catch me, if you can Sherlock」が軽やかさも甘やかさもないセリフだったのおつらみポイント
僕を終わらせて、心は凍りついて罪深く呪われた僕を捕まえに来てと願うウィリアム……歌っている時は大きく手を広げてアグレッシブなくらいの動作していたのに膝を着いて座り込んだ時のちょこんとした感じがあまりにも幼くてひょえぇ……ってなった。
手を緋色に染めたことに後悔はないがジョンを祝福出来る立場じゃなくなったことを苦く口にするシャーロックの、それでも霧の先にいる犯罪卿を、その心を捕らえるのは自分だ、お前と同じ目線に同じ地平線に立ちたいんだと歌うのが力強くてすんごいバカでかいウィリアムへの矢印ソングでやばかった。「同じ目線で」というのはジョンくんにも言っていたけれど友情の形のひとつなわけで。友達だからあいつを救いたい……
運命の車輪は転がっていく、止まることはない。運命はクライマックスへと変転していくというところで終わるラストナンバー、つまりタロットカードの運命の輪(正位置の意味:転換点、幸運の到来、チャンス、変化、結果、出会い、解決、定められた運命、結束。
逆位置の意味:情勢の急激な悪化、別れ、すれ違い、降格、アクシデントの到来、解放。(Wikipediaより))
車輪は運命のアトリビュートですけど、車輪なら両輪揃えたら物を運ぶことが安定して楽になるしその進行方向に手を加えることだってやれるシロモノじゃないかなと思います。
運命の馬車の手綱を奪って思う方角に走り直すのは大変でしょうが、運命をも凌駕する魂の叫びを放った男ならウィリアムが死の運命(さだめ)に向かうのを止めて変革することも出来ると知っているので、最後の事件を楽しみに待ちたいですね。最後の事件ミュやります報告、大千秋楽でお聞かせ願えたりしませんかね?
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