何人目のわたし

ときどき、ほかのわたしは何やってるだろう、と考える。

あのとき試験に受かっていたわたし。

あのときピアノをあきらめなかったわたし。

あのとき仕事をやめなかったわたし。

あのとき彼と結婚して地方に移り住んだわたし。

新幹線がそばを通る小さな部品工場で検品の仕事をしているわたし。

海近くの街でカフェを開いて夜は文章を書きながら過ごしているわたし。

海外で結婚してハーフの子どもを産んで毎日田園風景を見ながら子育てに邁進するわたし。

あらゆる可能性があって、あらゆる選択や運命があって、わたしはいまここにいる。

一人で都会に住んで、ぴかぴかのエレベーターでオフィスに行く。毎日たくさんの人に会って、話したり、話を聞いたり、笑ったり、たたかったり、している。

たくさんの人に会うけど、本質的にはいつも一人でいる。

いまのわたしはベストな選択?

わたしは何人目のわたし?

もっとたのしいわたしがいるかな?

距離を超えて、時間を超えて、わたしはほかのわたしに想いを馳せる。

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