いつもの店

夢の中で、何度か行ったことのある店がある。

昨日また行った。多分、3度目だと思う。

そこは、東京の下町にあって、なぜだか塀に囲まれている地域の中にある。

店の人の話では、この塀で囲まれた地域は、街並み保存地区になっているから、いろいろと都合がよいのだという。

家は外からも内からも構造が見えなくなっており、いわば忍者屋敷のような感じらしい。

昨日の私たちは8人くらいで、仕事の外出の帰りにランチでもして行こう、確かこの辺りに店があったはず・・・とやって来たのだった。

店に着いた時、中は暗く、まだ開いていない気配だった。

私たちが中を覗き込んでいるとき、ちょうど店のお姉さんが自転車で現れた。

そうだ、この店は、お母さんと、その娘と見受けられるお姉さんとでやっているのだ。さらに、お姉さんの娘に当たる幼児がいるのじゃなかったか。

お姉さんが鍵を開けてくれ、すりガラスのはまった小さめの戸をがらっと開けると、目の前にコの字型したカウンターがある。

店内の色調は、一貫して暗い飴色に沈んだ古い木の色だ。

床も天井もカウンターも、カウンターのコの角に立った角柱も、全部暗い木の色。奥の壁には柱時計。鈍色した振り子がゆっくり揺れて時を刻んでいる。

奥からお店のお母さんも出てきて、注文を聞いた。

厨房は別の部屋にあって、カウンターの部屋には私たちだけが残された。

メンバーは私の同期たち。それも、昔々、私が新入社員だった時の。

でも私たちは今も一緒に仕事をしているようだった。

ここはパラレルワールド?

同期のSくんが、家を買う話をしていた。

こっちの世界では全く会っていないKくんもそこにいて、家を買う話について先行者として話していた。

店のメニューは天ぷら定食がメインで、天ぷら定食を頼んだ人たちには先に料理が来た。

やがて、私が頼んだとり天定食も運ばれてきて、私たちは食事をしながら話をした。

食べ終えると、私たちは一人ずつ会計をして店を出た。

すると、店の前の木陰に3本の柱が立ち、それぞれに深緑色の電動自転車の充電スタンドを示すステッカーが貼られているのが見えた。

「前こんなのありましたっけ?新しくできた?」

見送りに出てきたお姉さんに私が言うと、

「そうなのよー。この辺りも変わってきててねぇ・・・」

と、お姉さん。

「お店は変わらないでくださいね。 また来ます!」

と、私たち。

またいつかこの店に行って、とり天定食を食べる予感がする。

その時は誰と一緒だろう。

その時が楽しみだ。

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