たとえ見果てぬ夢であったとしても ~STU48『無謀な夢は覚めることがない』~
この曲は、STU48の4thシングルの表題曲です。
実現困難な夢であっても、それをあきらめることなく追い求め続けることの大切さを歌った曲になります。
夢を抱いて何かに挑戦しようとしている人に勇気や希望を与えてくれます。
1番Aメロ
「遥かな大陸」というのは、大きな夢や目標を象徴しているのでしょう。
そして「海」は、その「遥かな大陸」と自分とを隔てる広大なるものということになるわけです。
「無限が横たわる」とか「銀河を飲み込んだ」とかといったフレーズが、その広大さをさらに際立たせています。
「夜明け前」というのは、今まさにこれから始めようとしているということを表しているのでしょう。
つまり……、
実現するかどうかもわからない大きな夢を抱いて、今まさに一歩を踏み出して挑戦しようとしている。
その大きな夢を叶えるために、どれほどの勇気と努力が必要になるのだろうか。
ということではありませんかね。
1番Bメロ
大きな夢であればあるほど、それに挑戦したときの先行きは不透明なものになってしまう。
やってみなければどうなるのかはわからない。
それを人からあれこれ聞くよりも、我が身をもって確認せずにはいられない。
それが若さというものなのでしょう。
1サビ
現実的には叶いそうにもない夢は、そうであればこそ、その夢への思いも強くなり、心の中でずっと燃え続けることになるものです。
そして、その夢を必死になって追い続けようとする。
どんな夢であっても、それを叶えることは、そんなに容易いことではないでしょう。
そもそも、その夢が叶うという保証など何もないわけです。
けれども、夢を叶えようと努力を続けることで、自分自身を成長させることができ、より豊かな人生へとつながっていくことになる。
たとえその夢が叶わなかったとしても……。
そこにこそ、夢を追求することの意味があるのでしょう。
さて、「希望という名の 言い訳しながら」ですけれども、通常であれば、「希望」というのは肯定的な文脈で用いられる言葉ですよね。
けれどもここでは、それを「言い訳」だと言い放っているのですから、なかなか挑戦的な物言いではありませんか。
一体どういうことなのだろうかと思うのですけれども、「希望」という言葉には、自分でどうにかしようというよりも、そうなってほしいと願ったり期待したりと、どこか他人任せのようなニュアンスが含まれているところがありますよね。
そこを指して「言い訳」だとみなしているのかもしれませんね。
現実の壁に阻まれて、挑戦することをやめ、ただそうなってくれたらいいなと望むだけで満足し、自らが夢を掴みに行くことを諦めようとする。
そういった姿勢を唾棄して、自分自身を奮い立たせているのではありませんかね。
続くフレーズで、人から愚かな奴だと笑われようとも前へ進め、と言って自らを鼓舞しているわけですから。
2番Aメロ
やる前から、うまくいかなかったときのことを想像して、恐れおののいているといったところでしょうか。
何事も、やってみなければどうなるかはわからない。
もしかしたら、うまくいかなくて打ちのめされてしまうかもしれない。
そのときはそのときで、存分に悔し涙を流せば良いではないか。
といったところでしょうか。
人の一生には限りがあります。
ましてや、体力・気力が充溢している青春時代など、あっという間に過ぎ去っていく。
年齢を重ねていくにつれて、自分に残された時間、自分が挑戦し続けることのできる時間を嫌でも意識し始めるものです。
なかなか手の届かない目指していたものは、さらに遠ざかっていくように感じ、あれほど憧れていた夢も、だんだんと霞んできてしまう……。
2番Bメロ
手に入りにくいものほど欲しくなるというのは、人間の性なのでしょうかね。
自分にどれほどの力があるのか試してみたくなるというのも、若さゆえなのかもしれません。
いずれにせよ、手軽に手に入るもので妥協して満足することなど、とうていできないわけです。
2サビ
大人になるということは、分別が付くようになって無謀なことを避けるようになることだと、普通なら思うところですけれども、ここでは、「無謀な旅で大人になりなよ」と言っているわけですから、逆説的な物言いですよね。
無謀な挑戦をすることで、いくつもの厳しい試練に見舞われることになるでしょう。
打ちのめされて落ち込むこともあれば、誤って遠回りをしてしまうこともあるかもしれません。
けれども、そういった経験が人生の彩を豊かなものにしてくれるわけです。
「夕焼けが美しい」というのは、そうした人生の充実感や達成感を表しているのではありませんかね。
現実的に手の届く範囲の夢を追えば、堅実に歩んで行くことはできるかもしれません。
けれども、そこから見える景色は、何も代り映えのしない退屈なものになってしまうのではないでしょうか。
そんな夢なら見るまでもないことだ。
といったところでしょうか。
再びBメロ
勝つか負けるかはともかくとして、困難な道を選んだ方が、喜びや悲しみ、楽しみや苦しみ、達成感や挫折感など、まさしく山あり谷ありのいろいろな経験ができて、人生をより深く味わえるのではありませんかね。
落ちサビ(1サビ前半と同じ)後の大サビ
「後悔するな」と言っているくらいですから、無謀な夢を追い求めてみた結果、失敗するかもしれないというのは織り込み済みということなのでしょう。
むしろ、失敗して夢を叶えることができない可能性の方が高いのかもしれません。
それでも良いではないかと言っているわけです。
成功することももちろん大事なことなのだけれども、それ以上に、挑戦することを通じて得たさまざまな経験や出会いこそが大事なのだということなのでしょう。
そういった経験や出会いの蓄積が、自分を大きく成長させ、強くしてくれるのですから。
ところで、「もし もう一度 やり直したって また同じ選択をするだろう」というフレーズは、まるで永劫回帰の思想を説いたニーチェの言葉のようですよね。
揺るぎなき自己肯定の言葉。
なんだか勇気が湧いてくるではありませんか。
それにしても、このフレーズといい、「希望は言い訳だ」だとか「無謀な旅で大人になれ」だとかいったようなフレーズといい、いかにもニーチェが言いそうなエッジの効いた言葉ですよね。
かように、この曲の歌詞には、自分を肯定して前向きに生きるというニーチェの思想が結構反映されているような気がするのですけれども、意図的にそうしたのか、それともたまたまそうなったのか……。
それはともかくとして、この曲の最後は、次のように締め括られているわけです。
誰かの無謀な夢が、新しい世界を切り開いていくことにつながる。
だから、迷わず前へ進め!
引用:秋元康 作詞, STU48 「無謀な夢は覚めることがない」(2020年)
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