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かけがえのない日々よ ~SKE48『それを青春と呼ぶ日』~

2013年の春に、SKE48から9人のメンバーが同時に卒業するというできごとがありました。
卒業するメンバーの中には矢神久美や小木曽汐莉など選抜常連のメンバーも何人か含まれていて、かなり衝撃的なできごとでした。
それぞれ別々のちゃんとした理由があっての卒業ではありましたけれども、9人同時ということに驚かされた人も多かったのではないでしょうか。

この曲は、その9人の卒業生たちのために作られた曲になります。

歌詞を見てみますと、これはもうほとんどAKB48の『あなたがいてくれたから』の続編と言ってもいいような内容なのですよね。
どちらも、大切な場所や大切な人への思いを綴った曲。
ただ、『それを青春と呼ぶ日』のほうは、その大切な場所から旅立つことを歌った曲になっている。

1番Aメロ

誰もいない劇場(シアター)
灯りの消えた狭いステージ
客席の真ん中で
私は別れを告げる

卒業公演が終わって誰もいなくなった劇場の客席に、ひとり佇んでステージに別れを告げる。
もうこのステージに立つことはないのだと思うと、これまでのいろいろなできごとが心の中に去来してくる。
それを描いているのが、つづくBメロや2番のAメロやBメロの歌詞になるわけです。

1番Bメロ

同(おんな)じ夢を目指して
仲間と歌い踊り続けた
あの日の汗や
ひたむきさを
思うだけで胸が締め付けられる

2番Aメロ

客席から見えた
私は頑張っていたのかな?
ステージのその姿
誰かに誉めて欲しかった

2番Bメロ

自分の道が見えずに
何度も辞めようと思ったけど
他のメンバーの頑張りを見て
自分に足りないもの気づかされた

こういった内容は、実際にステージに立っていたメンバーたちにしてみれば、痛いほどよくわかることなのではないでしょうか。

1サビの歌詞の中にあるフレーズ

振り向けば
つらかったことさえ
輝いてる

嬉しいことや楽しいこともたくさんあったけれども、つらいことや苦しいこともたくさんあった。
もしかしたら、つらいことや苦しいことのほうが多かったかもしれない。
そういったつらいことがあったときには、それこそ辞めたいとか逃げ出したいとか思い詰めるほどだったけれども、今となっては、そういったことすらも愛おしい思い出になっている。

また、2サビの歌詞の中には次のようなフレースもある。

ゆっくりと目を閉じれば
きっと 思い出すでしょう
いつか帰って来るこの場所を

ここに出てくる「いつか帰って来るこの場所」というのは、もちろん劇場のことを指しているのですけれども、『あなたがいてくれたから』の歌詞の中にある「Hometown」と同じく、実際に足を運ぶ場所というよりも、何かあったときの心の支え、心のよりどころという意味なのですよね。
「劇場」という場所で象徴させていますけれども、単に思い出深い場所というだけではなく、そこで支えてくれた人々、スタッフや仲間やファンの人たちの顔や声、そこでひたむきに頑張っていたころの自分自身の姿なども含んでいるわけです。

そして、サビのラストに置かれたフレーズ

それを青春と呼ぶ日が来た

の「それ」とは、そういった劇場で過ごしたかけがえのない日々のことを指していて、今まさにその劇場を旅立つにあたって、そのかけがえのない日々こそが青春だったのだなと、あらためて思い至るわけです。

この曲は劇場からの旅立ちを歌っているだけに、おいそれといつでも歌えるというわけにはいかない。
なにせ、内容的に卒業を示唆することになりますから……。
そのため、ほとんど披露される機会がないのですけれども、曲自体は涙を誘うスローバラードの良い曲なのですよね。

引用:秋元康 作詞, SKE48 「それを青春と呼ぶ日」(2013年)


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