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孤独の海に沈潜する ~NGT48『暗闇求む』~

この曲は、NGT48の1stシングル『青春時計』のカップリング曲で、結成メンバー全員が参加している楽曲になります。

1番Aメロ

海を見てると(海を見てると)
切なくなるよ(切なくなるよ)
白い波が(白い波が)
寄せては消える(寄せては消える)
夕陽が沈む(夕陽が沈む)
砂の上で(砂の上で)
一人きりの(一人きりの)
時間潰した(時間潰した)

ここの歌詞だけを見ると、夕暮れ時の海辺に一人でやって来て、美しい景色を眺めながら時間を潰しているというふうに受け取れるのではありませんかね。
けれども、後に続く歌詞を見てみますと、この歌詞の主人公は、実は失恋の痛手を負って、ここに来ているわけです。
それをふまえると、夕陽が沈む海の美しさというのは、この主人公の寂しさや孤独感を際立たせていますよね。

広大な海は、この主人公にとって、自身の寂しさや孤独感を映し出している存在なのではありませんかね。
恋人と別れた主人公は、夕陽が沈む中、白い波が寄せては消えていく様子を眺めながら、切なさを噛み締めているのでしょう。

1番Bメロ

話したい誰か どこにもいないのは
僕のせいか?
君のせいなのか?

この海辺には、恋人と一緒に何度か来たことがあるのでしょう。
けれども、今はその恋人もそばにはいない。
失恋の原因は「僕」のせいだったのか「君」のせいだったのかと、自問自答をくりかえすばかり。
もしかしたらこの失恋は、「僕」が「君」に突然フラれたというパターンなのでしょうかね。
別れることになった原因がわからず、思いあぐねているといったところでしょうか。

1サビ

真っ暗になればいい
光はいらない
星たちよ(星たちよ)出て来るな(出て来るな)
今は
世界から 世界から 忘れられたいよ
ひとつの ひとつの 恋が終わった

「真っ暗になればいい」というのは、失恋の現実から逃げ出したいという気持ちの現れでしょうかね。

「光」は明るさや鮮やかさを、「星」は楽しさやにぎやかさなどを表しているのでしょう。
ひどく落ち込んでいるときには、そういったものは鬱陶うっとうしいだけですし、場合によると苦痛にすら感じてしまうものです。
できることなら、そういったものからは遠ざかっていたいということなのでしょう。

また、「今は 世界から 世界から 忘れられたいよ」というのは、失恋したみじめな姿を誰にも覚られたくないという、主人公のやるせない気持ちを表しているのではありませんかね。

2番Aメロ

岬を巡り(岬を巡り)
夏が近づく(夏が近づく)
風も潮(しお)も(風も潮(しお)も)
浮かれてるのに…(浮かれてるのに…)
人影のない(人影のない)
心の奥で(心の奥で)
淡い夢が(淡い夢が)
遠ざかってく(遠ざかってく)

岬を巡りながら、「僕」は喧噪けんそうの夏が近づいていることに気づくのですけれども、自分の気持ちはまったく浮き立たない。
むしろ、寂しさや孤独感が募るばかりといったところでしょうか。

「人影のない 心の奥で」というのは、「君」を失った寂しさを表しているのでしょう。
そして、「淡い夢」というのは、「君」と過ごした幸せな日々のことを指しているのでしょう。
つまりここでは、寂しさと孤独を抱えた「僕」の心の奥では、「君」との思い出が遠ざかっていくのを感じているということを言っているわけです。

2番Bメロ

帰りたい場所が どこにもなくなって
しゃがみこんで
ここを動けない

失恋によって、「僕」は「君」と過ごした場所や時間を失ってしまったわけです。
心の拠り所を失ってしまい、途方に暮れているのでしょう。

2サビ

真っ暗が楽なんだ
構わないでくれ
街灯り(街灯り)見たくない(見たくない)
ずっと
波音を 波音を ただ聴いていたいよ
孤独な 孤独な 恋の名残りよ

内容的には1サビと同じことを言っていますね。
失恋の痛みから逃れようと、暗闇の中に沈み込んで行こうとしている。
つまり、外界との接触を断ち、孤独な心の内側に閉じ籠ろうとしているわけです。
そして、その暗闇の中で、永遠に繰り返される波音だけをただ聴いていたいという。
その波音というのは、かつて「君」と一緒にこの海に来て耳にしていた波音なのでしょう。
「恋の名残りよ」とあることから、その波音が「君」との思い出を蘇らせるわけです。

Cメロ

こんな切なさを僕は知らなかった
瞼(まぶた)を閉じたままで涙

失恋によってもたらされた寂しさや孤独感を痛切に感じているといったところなのでしょう
もしかしたら、これほどまでの失恋は経験したことがなかったのかもしれませんね。
「瞼(まぶた)を閉じたままで涙」というのは、まさに暗闇の中に沈潜して、そこで涙を流すということなのでしょう。
この主人公の深い悲しみを表していますね。

ラスサビは、1サビの繰り返しになっています。

暗闇は、すべてを閉ざしてくれる。
何も目にしなくて済み、誰にも覚られなくて済む。
そんな暗闇の中に身を置きたいということでもって、失恋の痛みや孤独感の深さを、この曲は表しているのではありませんかね。

引用:秋元康 作詞, NGT48 「暗闇求む」(2017年)


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