見出し画像

私のヒーローの君へ

2021年の秋頃から、SixTONESが好きだ。
2021年に放送された第100作目の朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」は、ラジオ英会話と共に歩んだ祖母(安子)、母(るい)、娘(ひなた)の三世代の人生を描いたファミリーストーリーだ。和菓子を愛する心優しい安子は、ある時最愛の人と彼の愛聴するラジオ英会話と運命の出会いを果たし、後に娘であるるいを出産する。しかし、戦争とその後の悲劇により安子とるいはすれ違い、るいは生き別れた母と英語を憎む様になってしまう。時が経ち、最愛の人である錠一郎と彼の愛するジャズと出会ったるいは、後に娘であるひなたを出産する。父の影響により時代劇好きな娘に成長したひなたは、後に就職した太秦映画村に迫る危機をきっかけにラジオ英会話と運命的な出会いを果たす。そして確執を抱えたまま引き裂かれてしまった安子とるいは、ひなたの起こしたとある行動により再び巡り合う事になる。
そんな「カムカムエヴリバディ」にSixTONESのメンバーであるほっくんこと松村北斗が上白石萌音演じる橘安子の最愛の人である雉真稔役で出演していたのである。

かつて私はジャニーズが嫌いだった。
ジャニーズなんてどうせみんなチャラチャラしていると思っていたし、ジャニーズが好きな奴もみんなチャラついていると思っていた。顔がかっこいいから何でも優遇されるんだと思っていた。
朝ドラにジャニーズが出ると聞いて私はすっかりげんなりしていた。以前の朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」にKing & Princeの永瀬廉が出ていた事も、母を津波で喪い、自暴自棄になる父を支えながらヒロインであるモネこと百音に好意を寄せる難役を演じていた事も知っていたけれど、殆ど興味もなかった。どうせジャニーズなんて演技も下手なんだろうと斜に構えて見ていた(彼の名誉の為に言っておくと、大して興味を持っていなかった私が悪いというだけで、彼の演技は大変素晴らしいものだった)。
ある日、その年のベストアーティストを見る事があった。ベストアーティストが放送されたのは水曜日で、当時見ていた「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」の放送が休止されてがっかりしたのを今でも覚えている。その放送の録画を見る機会があったのである。
当時リリースされていたSixTONESの「マスカラ」を私は聞いた事があった。その前の「CDTVライブ!ライブ!」に歌手で俳優のいっくんこと山崎育三郎が「僕のヒロインになってくれませんか? feat.3時のヒロイン」という曲を歌う為に出演していたのを見ていた時、その1つ前に出演していたのがSixTONESだった。彼が放送後にInstagramで「大我(SixTONESのメンバーである京本大我の事、以前上演されたミュージカル『エリザベート』で山崎と京本は共演経験があった)見てたよ〜」と投稿していたのを私は見ていた。
意外と好きな曲調だったので何となく見てみる事にした。
名前も知らない人達の中に眼鏡をかけている人が居た。彼があの「稔さん」だとすぐわかった。
しかしながら、彼はあのさわやかな稔さんではなかった。あり余る色気を身に纏いながら歌い、踊る彼の事を、不本意ながら
「かっこいい」
と思ってしまった。
ちなみに私は、その暫く後に登場したNEWS(と当時放送されていたドラマ「二月の勝者」に出演していた子供達)の真ん中で堂々と力強い歌声を響かせる青年、NEWSのセンターであるまっすーこと増田貴久にも心を掴まれてしまう事になるのだが、それはまた別の話である。ありがとう2021年のベストアーティスト。また気が向いたらNEWSも呼んでやってください。

正直に言うと、私に稔さんはそこまで刺さらなかった。優しくて爽やか、賢くて骨もあるけれど、意外と打たれ弱いところのある稔さん。最愛の安子を置いて戦死した稔さん。良い人ではあったし、ドキドキする事もあったけれど、個人的には以前出演していた「パーフェクトワールド」の晴人の悪戯っぽい笑顔の方が好きだった。勿論視聴していた当時の私は松村北斗という名前は露ほども知らなかったのだけれど。

ある土曜日、「カムカムエヴリバディ」の番宣に出演していた彼がラジオの宣伝をしていた。
興味を持った私はラジオを聞いてみる事にした。それがニッポン放送で毎週土曜日の23時30分から放送されている「SixTONESのオールナイトニッポン サタデースペシャル」である。
偶然にもその日の放送には毎週登場しているメンバーの田中樹の他に松村北斗も登場したのだ。宣伝を聞いた新規が沢山聞きに来ると察していた彼はどうにかして猫を被ろうと努めていたのだが、そう簡単には上手くいかなかった。
事の発端は、静岡出身の松村が東海地方の方言である「ちんちん」という言葉を使ってしまった事だった。
彼はどうにか取り繕おうとしていたが、相方である田中樹は彼の事を煽った。結論から言うと、暴走した松村北斗は田中樹の股間の大切なものを握ったのである。その後は2人がお互いの大切なものを握り合うラジオが展開され、私は一体何を聞かされているのだろうと思いながら笑い転げる事となった。
簡潔に言うと、松村北斗という男は変わり者であった。

SixTONESというグループが気になり始めた私はYouTubeを見始めた。
その頃のSixTONESのYouTubeは今ほど予算が潤沢ではなかったのか、小道具の様なものを用意して行うゲームが多く、私は非常に楽しんだ。
最初は松村北斗ばかりを追いかけていたのだが、その中にもう1人気になる人が居る事に気づいた。

更に1年ほど前、私は「エール」という朝の連続テレビ小説を視聴していた。
私はその番組に出ていた山崎育三郎の眩しい笑顔にしっかり心を奪われてしまい、長い事ドラマを視聴していた訳だが、そのドラマには歌手の森山直太朗とRADWIMPSのボーカルである野田洋次郎も出演しており、私は何だかこの3人の名前が兄弟の様だと面白がったものだ。

そんなある時、電車の中で「監察医 朝顔」というドラマの予告を見る事があった。
ぼんやり予告を眺めていて、ある出演者の名前に目が留まった。
彼の名前は「森本慎太郎」といった。その後についていた「SixTONES」をどう読むのかは知らなかった。兄弟みたいで面白いなと思った。
数か月後のある日、偶然見ていた「ザ!鉄腕!DASH!!」という番組で見覚えのある顔を見つけた。その彼こそが「シンタロー」ことSixTONESの最年少メンバーである森本慎太郎であった。
彼は真冬の東京湾に飛び込んで素潜りをしてしまうなど、豪快な行動を見せていた。また、別の回では他の視聴者が皆痛みに悶絶する中彼のみが平然とした顔で栗のイガを素手で掴んでいた。私からしたら彼は狂人にしか見えなかった。でも、その姿が愉快で面白かった。私の中で「鉄腕DASHのシンタロー」が「ちょっとおかしな面白い奴」として認知された瞬間だった。

当然、SixTONESのYouTubeに彼も出演している訳で。松村北斗をメインで追いながらも、彼の事も気に掛ける様になった。当時は大して興味があった訳でもなかったけれど、
「鉄腕DASHのシンタローだから」
というだけの理由で応援していた。

12月3日はSixTONESのメンバーの1人であるきょもこと京本大我の誕生日である。
そして2021年の12月3日は奇しくもSixTONESのYouTubeの更新日である金曜日だった。
そこで、2021年12月3日のYouTubeでは「きょも27歳記念」という事で人気YouTuberのHIKAKINさんとのコラボ企画動画をアップする事になった。SixTONESの6人はHIKAKINさんの暮らす大豪邸、通称ヒカキンハウスに赴き、動画を撮影したのである。そしてこれが私が初めて更新されたタイミングで見る事になった動画でもあった。
HIKAKINさんの待つ部屋にドヤドヤとやってくるメンバー達を見ていた時だった。一番最後に入ってきた森本慎太郎が開きっ放しになっていた扉をそっと閉めたのである。元来よりSixTONESのメンバー達は皆礼儀正しく、
「使った楽屋は使う前より綺麗にして帰る」
を信条としている様な人達なのだけれども、私にとってはその時の彼の行動がやけに目について見えたのだ。その姿が画角の隅も隅、カメラに映るギリギリの場所で行われた行動だったにも関わらず、である。
否、だからこそなのかもしれない。
彼の行動は明らかにカメラを意識した
「自分を良く見せよう」
という思惑から遠い場所にある行動だった。
そんな彼に、恋をした。
一生彼についていこう。その日私はそう決めた。
それから暫く経ったクリスマスイブにニッポン放送で放送された「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」で私は彼に対して益々惚れ込んでしまう事になったのだが、それはまた別の話である。

彼は不思議な人だった。
私が本気で落ち込みながらTwitterを眺めている時、彼はいつもタイミング良く目の前に現れた。
彼の太陽の様な笑顔や前向きな言葉、ふざけたダンスなどを見ているとどんな時でも何故か少し笑えた。そして
「あともう少しだけやってみるか」
と思う様になった。
その眩しさを疎ましく思う日もあったけれど、彼の明るさや眩しさは私の希望で光だった。
彼は私の太陽で、ヒーローだった。

メンバーからすぐにメイク道具やお金を借りる人だった。寝坊も遅刻も割と多い。番組の収録中にうとうとしている時がある。
好奇心旺盛で多趣味だけれど飽きっぽくて、折角道具を揃えたのに使わない事があった。
金遣いが荒かった。
考えなしに行動してしまうところがあった。
せっかちな性格で、感情がすぐ顔に出た。物事が上手くいかないとわかり易く彼はイライラした。
正直過ぎるところがあった。私はそんな彼が苦手で、大好きだった。
彼は子供っぽいところが多々あったし、口下手で不器用だった。
けれど、彼は数々の短所を補って余りある魅力溢れる青年だった。
目鼻立ちがはっきりしていて、太い眉は彼の感情を乗せてよく動いた。瞳はビー玉の様にキラキラしていた。
「キャラメルボイス」と呼ばれる声は甘くてチャーミングで、周りの人を驚かせるほどよく通った。
彼は動物が好きで、海が好きだった。
行動は豪快で、無鉄砲なところがあったけれど、本当は繊細な性格でよく気を遣っていた。率先して人の為に動ける人でもあった。前述の「ザ!鉄腕!DASH!!」でTOKIOのリーダーである城島茂がそれなりの年齢を押して重機を操る姿に疑問を持ち、胸を痛めた彼は、彼の役に立たんと忙しい仕事の合間を縫って重機免許を取得してきた。彼は人を笑わせるのが得意で、率先してボケたりふざけたダンスを踊ったりしては他のメンバーの笑いを取った。1歳年上でボケるのが大好きなジェシーとのコンビネーションは抜群で、2人はチップとデールみたいだった。
彼は芸能界という華やかさと闇を抱えた世界で長い事生きてきたとは思えないほど純粋だった。
彼は人に嫉妬しなかった。彼は素直に人を尊敬できる人だった。
山里亮太という嫉妬をエネルギーに変えて生きてきた人を演じるにあたって彼は戸惑っていた。こればかりは本人にしかわからないけれども、彼は初めて心の中に生まれた薄暗い感情に飲まれそうになっている自分に戸惑い、怯えていた様に思う。山里亮太という人を知り、責任を持って演じ上げた彼は疲弊していたけれど、それでも少しだけ大人になっていた。
勉強は苦手だけれど聡明な彼は自己分析に長けていて、ほんの少しネガティブだった。それでも彼は愛されて育ったから、自己肯定感は割と高かった。
彼は真面目で努力家だった。あまり詳しくは知らないけれど、ボイストレーニングにも通っている様だった。
彼は曲がった事が嫌いで、過去にひと悶着あった彼の兄との関係を上手く再構築できていない様だった。
泣かない彼が好きだった。
かつて自分を芸能界という世界に引っ張り込んだ人の
「ステージ上では泣くな」
という教えを律儀に守って、5人が泣いていても1人で笑っている彼が好きだった。
その癖、アメリカに留学してしまう友達や自分の目の前に居る訳ではない何処かの困っている人達を思って涙を流す彼が好きだった。彼は優しかった。
彼は何処までも無邪気で子供っぽい様でいて、その目線はかなり達観していた。エリートとして扱われたと思ったら誰からも必要とされなくなった経験をした彼は、挫折の味をよく知っていた。彼は子供の頃の記憶がなかった。遠過ぎる過去だから思い出せないのか、辛過ぎる故に封印しているのかはわからなかった。

彼は照れ屋だった。
彼はファンにファンサをしない。手を振る事もしないし指差しもしない。
誕生日の時期になるといつもいそいそと質問箱を設置する癖に、質問箱に届いた質問に真面目に答えない。慎太郎とまっすーは似ている。彼らは年中短パンを穿くし、質問を募集しておいて、肝心の質問には真面目に答えないからだ。YOASOBIの「アイドル」という楽曲には、タイアップ先の「推しの子」に登場するアイドル・星野アイがファンからの質問を上手く躱す様子を表す歌詞として
「何を聞かれてものらりくらり」
という歌詞があるけれども、彼らの為にある様な歌詞だ。
それなのに、時々彼はファンにまるでファンを愛しているかの様な事を言う。
「慎太郎くんにファンができる事はありますか?」
という質問に
「あなた達が幸せでいなさい」
と言った事もあるし、
「ライクというよりラブです!」
と言ったり、
「目が合ってる事に気づいていますか?」
と尋ねる事もある。そんなの反則だろう、と思う。

慎太郎は自分とファンの距離が近い様に見せるのが上手い。
だからこそ、実測の距離を知る度に思った以上の遠さで眩暈がする。とんでもなく落ち込んでしまう。私は愚かなオタクである。
私は彼の事を何も知らない。
彼がシェットランドシープドッグのシェリーを溺愛している事も、車ではSixTONESの楽曲「Call me」をよくかける事も、愛犬を車に乗せてよくドライブする事も、本当は結婚したいと思っている事も、
「とうもろこしは宇宙から来た食べ物だ」
なんていう訳のわからない都市伝説を信じてとうもろこしを決して口にしない事も(なのに「美味しいから」という理由でポップコーンは普通に食べる事も)、ユキヒョウが大好きな事も、夏が大好きな事も、時々ライオンみたいに髭を伸ばしてファンをギョッとさせる事も、酔っ払うと柱に抱きついてしまう事も、集合体恐怖症な事も、睡眠時間が取りたくて夕食を抜く事も、真面目な場面では絶対ピアスをしない事も、口笛が吹ける事も、結構上手にウインクができる事も。
私は彼の色々な事を知っている。それなのに、私は彼の事を何も知らない。
彼は私の知らないところで私の知らない人と笑っていて、そしてきっといつか結婚して、素敵な誰かと幸せになる。
すぐそばに居るみたいなのに、決して手は届かない。空から降ってきたキラキラの星。

ボケたがりで笑顔が似合う彼も、ネガティブで自信がない彼も、ブログで夢を長々語ってしまう彼も、手を伸ばせばきっと星に手が届く筈で、私はそれを望んでいて。
そしてそれは慎太郎だってそうなのだ。欲張りたれ、アイドル。星を手に入れずして、何がアイドルだ。
私は彼と、彼の一等大事な5人の仲間に星を手に入れて欲しい。ガラスでできた星飾りも、星の飾りのついたペンダントも、星型の宝石だって素敵だけれど、手に入れるなら光り輝く本物の星を手にして欲しい。
きっとアイドルにならなくても十分幸せになれた彼。世界中の人に愛される為に生まれてきた天使の様な人。「アイドルなんかじゃなかったら」、好奇の目に晒される事も、悪意に傷つけられる事もなかったんじゃないか。自由に夢を追い、自由に恋をして、何なら今よりずっと幸せだったんじゃないか。そんな嫌な考えが脳裏をよぎっては消えていく。彼を縛る枷は、他ならぬ私達自身なんじゃないか、と。
そんな私をよそに、彼は笑うのだ。
「今日も仕事が楽しい」
と。私はその言葉にいつだって救われて、彼を推している自分自身を肯定する事ができた。天真爛漫で明るく生きている様に「見せてくれる」人達のお陰で、私は今日も頭を空っぽにしてオタクをやれている。その大き過ぎる背中に何度も守られて、私は今日まで生きてきた。
欲望と悪意と、タールの様な闇に塗れた芸能界。プレッシャーや挫折、絶望に何度も汚されてもボロボロになっても、それでも光り続けた私の大事な宝物。
ならばせめて、「アイドルだからこそ手が届く」「私達には一生掴めない」本物の星を。それがきっと私の義務だし、その為なら私は幾らでも君達の梯子になろう。
いつか君が、君達がその星を首から提げて笑える日を願って。

最近巷にはやれ「完璧で究極のアイドル」だの「アイドルなんかじゃなかったら」だの「絶対アイドルやめないで」だのそういった言説(楽曲ともいう)が氾濫している。もしかしたら私が思っている以上に世間は「アイドル」というやつを求めているのかもしれないし、アイドルの「本音」が知りたいのかもしれない。
正直に言うと、私は推しにアイドルを辞めて貰っても構わないと思っている。否、嘘だ。私だって本当は
「絶対アイドルやめないで」
と心の中で思っている。でもそんな事、私には絶対言えない。アイドルを続ける事なんかより生きている事の方がよっぽど大事だ。
だから、もし君がその日を迎える事があったなら、私は涙を押し殺して笑顔で見送りたいと思っている。いや前言撤回。絶対泣くわ。多分何日も泣くし何なら何ヶ月も泣くわ。すまん。許せ。

でも、これだけは願っていても構わないだろうか。
「私の気が済むまで、私のヒーローで居て」
本人に向かっては絶対に言えない、エゴでできた私の我儘。
何処に居ても、何をしていても、笑っていて。幸せで居て。
世界に1人しか居ない、私の大好きなヒーローへ。
生まれてきてくれて、私達と同じ時代を生きてくれてありがとう。今年も元気にお誕生日を迎えた慎太郎に寄せて。

森本慎太郎くん、27歳のお誕生日おめでとう!

追記
2024年7月15日は、海の日である。
横浜某所出身で、海が大好きで、ある時はサーフィンをし、ある時はダイビングをして、ある時は仕事で海に赴き、彼はそうやって海と共に生きてきた。
そんな彼の誕生日が「海の日」とかち合ったなんて、偶然であるとはいえ、あまりにも出来過ぎているではないか。
彼は何処までいっても海に縁がある人間らしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?