接続詞ラビリンス


分かれ道に行き当たった。


右手には「すると、」左手には「もっとも、」とある。


もっとも、これは執筆作業を迷路に例えているだけで、どちらを選んでも危険はない。迷わず左へ進んだ私の前に、

「ところが、」と「また、」が立ちはだかった。


ところが、たちまち2つとも消失してしまった。なんだったんだ。

と思ったのも束の間、今度は「しかし、」と「おまけに、」が降ってきた。


おまけに、「あるいは、」と「さらに、」が降ってきた。


さらに、受け止めようと手を伸ばした私の指と指の間から、

「さて、」と「なお、」と「ただ、」が滴り落ちてきた。


さて、もうそろそろ終わりにしようか、と思った。


「すると、」

選ばれなかった連中が追いかけてきた。


「また、」

いずれも怨みのこもった目でこちらを睨めつけている。逃げなければ。


「しかし、」

前方はどんづまりであった。


「あるいは、」

このお話の終わりが見えてきたのかもしれない。


「なお、」

このお話は、接続詞を使いこなせていない自分への課題として書いたもので、それ以上でもそれ以下でもない。


「ただ、」

せっかくだから面白く書こうと努めた。


おしまい





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