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山盛り怪文書
2019年2月25日 15:31
アルフレート・ギューダは恋をする。アルフレート・ギューダ。女の住処は牢の中だった。銀の髪に白色コランダムじみた肌。きらめく瞳はサファイアじみて、襤褸の衣装をものともしない。アルフレートの生まれ持った肉体は美しいものだった。彼女が檻に入れどもそれ以上の理不尽を受けなかったのは単純に彼女が人間ではなかったからにすぎない。アルフレートは牢の格子を掴む。視線の先には看守がいる。アルフレートは恋をし
2019年2月25日 13:38
七番目(セブンス)。それが彼女の名前だった。もつれ気味な青紫の髪。七番目の色。夜に向かう空の色は凡庸な闇に溶け込んでいく。自由を。解放を。インフラストラクチャー(魔法)からはじき出され、望むように魔法を使うことの叶わぬ人間は沢山いた。セブンスもそのうちの一人だった。魔法の力は強大だ。誰もがそれを望み、道具を取り、魔法を手にした。魔法の力。それがこの時代における一つの正しさであった。魔法の使
2019年2月17日 00:53
ルイスは平均的な美貌を持つ男だった。王子様みたい、と言い出したのは誰だったか。転校生だった彼は学園の中で代えがたい存在になっていく。ルカは変化を見ていた。優秀な男だ、と思う。まるで最初からここに居たみたいだと思う。だからこそ変だ。美しいかと言われれば言葉に詰まる。しかし、しかしだ。そつが無い。あらがない。悪いところがあまりにもない。漂白されている。ルカにはどうしてかそう感じられた。教室で談笑す
2019年2月10日 20:10
思い出の詰まるあの家の中で独り、ガニュメートは死にかけている。だから自分が来た。自分は今死にかけている。笑えないな、とカロンは思った。時間を止めて塔へ来たまではよかった。途中、扱い辛い秀才男と遭遇したのは予想外だったが、それもまあいい。どうだっていいことだ。あの男はガニュメートの時計を直して持ってくるだろうか? 直らなければ可哀想な男が一人死に、いにしえの魔法に留められた夜は永遠に明けない。しかし
2019年2月10日 20:06
妙な夜だった。カチカチと響く時計の音が嫌味な夜だった。ルカの目はさえていた。湿った夜闇に回る針の音がいやにうるさく感じられた。漫然とした安心を得たくて握った杖から承認がなされないのが妙だった。だからルカは家を出た。ただただ据わりの悪い胸騒ぎがした。四辻からは誰かの気配がする。でも誰なのかはわからない。暗闇に潜む声が聞こえる気がする。それにしては静かすぎる。時計の針だけがやかましく回る。何もかもが奇