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【VRChat】アバターを"使う"自由をアンケートから考察する

 最近の日本人VRChat界隈では、ふとしたきっかけで『アバターを選ぶ自由』が話題になっています。

 アバターを選ぶ自由は現状の日本人VRChat界隈に存在するのか。また、他人が自分の価値観から離れていたアバターを使っていたとしたら、それについてどう考えるのか。そういった点について、大雑把にでも状況を知りたいと思い立った私は、Twitterで簡単なアンケートを行いました。

 ツイートの拡散にご協力下さった皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございます。


本題に入る前に

このアンケート結果は日本人VRChat界隈の実情を完璧に示すものではない

 先に断言しておきますが、このアンケート結果が100%正しいものということはありません。VRChatを遊んでおり、フォロワーの多くがVRChatユーザーである私が発信したアンケートのためVRChatプレイヤーというバイアスはある程度かかっていると推測されます。
 しかし、アンケートを取った方法がTwitterの投票機能であり日本人VRChat界隈の全員に直接聞いて回ったものではない以上、VRChatで遊んでいるプレイヤーでなくとも、海外のVRChatプレイヤーであっても回答が可能です。
 
 そのため、あくまでもこの記事内で紹介するアンケート結果は大雑把な傾向を知るためのものであり、実情とは異なる場合があります。

 本記事内においても、アンケート結果はあくまでも "参考程度の情報" という扱いで考察を行います。本文中に不適切な点があった場合は別途ご指摘をお願いします。


状況次第ではこのアンケート結果が参考にならない場合があります

 私は今回の論点、もしくは皆さんが回答を判断する分水嶺となるキーワードの1つとして『見た目が周囲から浮いているようなアバター』という言葉を用いました。これは、意図的にこの表現を用いています。

 見た目が周囲から浮いているようなアバター、それは個々人によって基準が分かれます
 人の形に似ていないアバター、亜人種のアバター、ほぼ人間の形をしたアバター、etc. 様々なアバターがありますし、人それぞれ「あれは周囲から浮いていない」「これは周囲から浮いている」といった価値観、判断基準を持っており、それは人によって異なることでしょう。

 それだけでなく、状況や環境に適したアバターではないという意味で、見た目が周囲から浮いているアバターとして扱う/扱われる場合もあります。
 分かりやすい例を挙げれば、あるアバターAを改変した人々が集まる集会イベントのような場に、全く関係のないアバターBの人がいた場合、『見た目が周囲から浮いている』という扱いを受けることがあるでしょう。しかし、その人がアバターBの集会イベントのような場にいた時は浮いてはおらず、その場に馴染んでいると言えます。

 このように、『見た目が周囲から浮いているアバター』であるかどうかは人の価値観や考え方のみならず、状況や環境に適したアバターであるかどうかによっても判断が分かれます。
 しかし今回のアンケートでそれを網羅しようとすると質問の数が多くなりすぎてしまいます。おそらく皆さんに回答の途中で飽きられてしまうか負担が大きくなりすぎてしまうだろうと思い、あえて回答者の皆さんに想像を促すような言葉を選ぶことで質問の数をコンパクトにまとめました。

 そもそも『見た目が周囲から浮いているアバターかどうか』について明確な基準を定めてしまいかねないような質問を私のような貧弱一般VRChatterが投げかけようとするのは身の程知らずであり、怒りを買いかねない行為です。
 そういった理由もあり、明確な基準は皆さんにご判断して頂くことにしました。

 以上のような事情から、質問文に曖昧な部分があります。
 ただし仮に質問文よりも明確に文中の言葉の定義が明確になった場合、このアンケートの回答結果とは異なった傾向の結果が得られる可能性があります。そういった意味合いも含めて、このアンケートの結果は参考程度や大まかな傾向を知る一助程度に捉えて頂く方が無難です。


この記事またはアンケート結果の一部だけを切り取った情報を発信しない/鵜呑みにしない

 この記事やアンケートの一部を切り取り、あたかもそれが真実だとするような情報を発信しないでください。また、鵜呑みにしないでください。
 前述のような理由から、アンケート結果は学術論文のような正確性があるわけではなく、実情を100%示しているわけではありません。
 第三者から余計な誤解をされたり根拠に欠けると叩かれたり等でお互い苦労しないためにも、一連の情報をベースにした情報発信は感想程度に留めておいていただけると助かります。

 「じゃあなんでこんな事したんだ」とお考えになる方もいらっしゃるかと思います。いやもう、全くもってその通りです。
 ただ、この件については私個人の趣味かつ知的好奇心の範疇で、なるべく手間をかけずに精度よりも速報値を知り分析してみたいと考えたからです。本気で正確な割合を調べるとなると色々準備が大変なので……


アンケート① アバターを選ぶ自由はあるか

このアンケート結果は日本人VRChat界隈の傾向を完全に示すことは保障しておらず、実際の傾向とは異なる場合があります。

 VRChatの利用規約やコミュニティガイドラインに反しない限り、VRChatユーザーは自由にアバターを利用できます。また、Boothなどの外部サイトで無償・有償公開されている3Dモデルを入手し、それを改変して自分のアバターとして利用する自由も(3Dモデルそれぞれの利用規約等に反しない範囲で)認められています。

 とはいえ、回答者全員がこの質問に『はい』と答えたわけではなく、一部のユーザーはこの問いかけを否定しています。

 あくまでもTwitterのアンケート結果であるためイタズラ目的の回答が混ざっている可能性があります。
 そのことを念頭に置いたうえであえて考察するならば、ごく僅かとはいえ自分の意志だけでは自分のアバター(見た目)を何らかの理由で選ぶことができないと考える人がいることを意味します。

 当然文面からはその意図を読み取ることができません。
 その意図を推測いると、『自分の好きなアバターを選んだとしても、選んだものによっては何らかの不自由が生まれる場合があるので、それを避けるためには自分の意志を切り捨てるしかない』……といった考え方などが挙げられます。
 そしてこの推測はあながち間違いとも言えないことが、次のアンケート結果から分かります。

アンケート② アバターを使う自由はあるか

 このアンケート結果は日本人VRChat界隈の傾向を完全に示すことは保障しておらず、実際の傾向とは異なる場合があります。

 見た目が周囲から浮いているようなアバターを使うと、およそ55%の人が(表向きは敬う態度をしつつも)交流を避けることが『ある』と答えています。本当に正確な数字かは保障しませんが、だいたい半分以上の方はそういった考えを持っていることを意味します。

 アンケート①の通り、アバターを選ぶ自由は多くのVRChatterが認めています。しかしアンケート②の結果を真に受けるならば、見た目が周囲から浮いているようなアバターとして(相手の価値観、または状況や環境によって)判断された場合、他人と交流を持つという点について不利な状況に立たされる、ということになります。
 つまりこれは、アバターを選ぶのは自由だが、実際にそれを使う際に(相手の価値観、または状況や環境によっては)他人との交流で不利になる可能性が否めないことを示すのではないでしょうか。

 確かにVRChatにはアバターを選ぶ自由が存在するのでしょう。ですが、アバターを使う自由となるとそうはいかないようです。
 当然、VRChatの利用規約やコミュニティガイドライン、もしくは3Dモデルに設定されている利用規約などは最低限のラインとして守らなければいけませんので、それに該当するアバターは話の外に置いておくものとします。そういったルール等を守ってさえいれば、アバターは自由に使うことができるはずです。
 ところが、(あくまでも相手の価値観、または状況や環境によっては)使用すると他人との交流の面で不利になる可能性があるというのです。この状況下において、果たして本当にアバターを自由に使えると言い切れるでしょうか?

 アバターを自由に選べることと、それを自由に使えることは似ているようで異なります。
 既にさまざまな意見をTwitter上でも見かけますが、『見た目が周囲から浮いているようなアバター』を選んだ場合、相手の価値観、または状況は環境によっては周囲からは不当な評価のされ方をしたり、不当に扱われることがすでに起きています。

 もちろん、見た目が周囲から浮いているようなアバターを使うのが本当にふさわしくないと多くの人が判断する場面もあるのかもしれません。しかしながら、そう判断する必要がない場面にまでそうした考えを持ち込み、そのまま見た目だけで他人への印象を定め敬遠してしまっていないか?といった、自らの考え方を第三者視点で疑う視点は常に持っておきたいところです。

アンケート③ 何も知らない初心者へどう伝えるか

 このアンケート結果は日本人VRChat界隈の傾向を完全に示すことは保障しておらず、実際の傾向とは異なる場合があります。

 アンケート②のような現状があるとして、それを何を知らない初心者へ真実を伝えるか、またそれをどう伝えるか。という質問です。
 ここでは『肯定するがアドバイスもする』が大半を占める結果であり、VRChatの事情を知らない人に対して、そのアバターを用いることを肯定はするものの何かしらのアドバイスはする人が大半であることが分かります。
 ここでいうアドバイスの具体的な内容については明示していないが、別のアバターを勧めることは他の選択肢に入っているため、おそらくこれは『そのアバターを用いることに何らかのリスクがある』ようなことを伝えるものと捉えた方が多いのではないでしょうか。

 この点についての考察は後回しにします。なぜなら、先にアンケート④の結果と比較して頂きたいからです。

アンケート④ 何も知らない初心者(ただし友人)へどう伝えるか

 このアンケート結果は日本人VRChat界隈の傾向を完全に示すことは保障しておらず、実際の傾向とは異なる場合があります。

  私にとって最も想定外の結果だったのは、何も知らない初心者が自分の友人かどうかで傾向に変化があると思ってこのアンケートを考えたのですが、アンケート③とアンケート④とで傾向がほとんど同じだったということです。

 肯定する側の人は90%にも上ります。しかしこれはアンケート②の『(表向きは敬うが)交流を避ける』の五分五分に近い回答と比較すると、少し不思議な感じがします。
 確かに、事情を知らない初心者には事情を教えたり、教えずとも肯定的ではあったりするのでしょう。しかし事情を知った上で尚も相手が周りから浮きがちなアバターを使い続けていると、次第に応対が変化するのでしょうか。

 これはもちろん、そのアバターがVRChatの利用規約やコミュニティガイドライン、アバターの利用規約に反するようなアバターであったり、もしくは他人に悪意をもって迷惑をかけるようなアバターなのだとしたら応対が変化して当然だとは思います。私もそうすると思います。
 ただ、そういったアバターが『人によって好みが分かれるアバター』だとしたら応対はどう変化するのでしょうか。気になる所です。

 アンケート③および④については『実際のところ初手でそういう(周りから浮きがちな)アバターを選ぶような初心者に出会ったことがない人がほとんどだと思う』という意見があり、それは確かにそうだ、と思いました。
 初心者案内を積極的に行うような人は一定数存在します。しかしVRChatter全体でみるとあまり大きい割合ではないだろうし、このシチュエーションに実際に遭遇した人はほとんどいないのかもしれません。


見た目だけで印象を決めつけがちな自意識を変えたい

 こうしたアンケート結果を受けて、果たして今の筆者自身は『アバターを使う自由』を他人に対して認めることができているのだろうか。様々想いを巡らせつつ、これまでの自分を振り返ることにした。

『見た目だけで判断しない』はVR空間にも当てはまるのではないか

 NHKが2021年頃に行った『外国人”依存”ニッポン』という特集において、『見た目だけで判断しないで』と題された記事がある。

 この取材では、日本人とチェコ人のハーフとして生まれた日本出身の女性が外国人と扱われるなどの苦悩について記されている。
 この記事の中で、私が特に目を惹かれたのが次の内容だ。

 やがて、自分なりの答えを見つけるきっかけが訪れます。
 6年生のときに家族でドイツに引っ越し、インターナショナルスクールに通うようになりました。
 そこには、さまざまなルーツを持つ子どもたちがいて、外見や出身を気にする人はいませんでした。

岩澤さん
「どこの国の人かは一切聞かれず、何が好きで何が得意かということにみんな興味を持っていて、人種やどこから来たかに全然関心がないのかなと思ってびっくりしました。その理由をひもといていくと、さまざまな人と交流することに慣れているからなんだと気付き、小学生のときのことは『不慣れ』が原因だったと思うようになりました」

 外国人や異国の文化と接する機会が少ないと無意識のうちに相手を区別し、傷つけてしまうのではないか。中学3年生で日本に帰国したあと、その考えが強まります。

見た目だけで判断しないで|外国人”依存”ニッポン, 2021年1月5日 NHK https://www3.nhk.or.jp/news/special/izon/20210105mitame.html  より引用
(2022年9月6日 閲覧)

 記事内で取り上げられている女性がインターナショナルスクールで通っている時に気づいたのは、異文化と接する機会が少ないと無意識のうちに相手を区別しかねない、ということ。
 この点は、『異文化』を『見た目が周囲から浮いているようなアバター』という言葉に置き換えると、今の自分にも当てはまることがあるのではないだろうか。


すでにVRという未知を"既知"としている

 しつこいようだが、状況や環境次第では見た目が周囲から浮いているようなアバターを用いることが本当に適切ではない場合もあることがあくまでも大前提である。

 しかしそういった状況があるということは、『最適は言い過ぎだけど、かといって適切ではないというのは当てはまらない状況』もまたあり得る。そうした時に、普段そういった人達と交流していないことがきっかけでそういった人々を無意識的に避ける癖がついていないだろうか?

 自分の行いを振り返ると、PublicやFriend+のようなインスタンスで『見た目が周囲から浮いているようなアバター』を見ると、うっ、と斜に構えたりしてしまうことがこれまでになかった、と言えば嘘になる。
 自分と知らない文化圏で過ごしている人々を見たり関わったりしようとするのは、少し怖気づいてしまうところがあったと思う。

 しかし、事実として自分はVRという未知のものにわざわざ興味を持ち、そこへ飛び込んだ。そこからさらに本来の自分とは異性のアバターを選び使用したり、それを通じて今まで知らなかった分野に関心を持つようになっていたりしていた。そうした過程は、未知のものを自らの既知としていることに他ならない。
 その過程で、VRに対する恐れや抵抗感のようなものは少しずつでも拭えていたはずだ(元々あまり抱いていなかった気もするが)。


まずは私自身から意識を変えたい

 VRを既知とした経験があるなら、自分にとって未知ともいえる『見た目が周囲から浮いているようなアバター』を既知とすることもできるのではないか?……と言うだけなら簡単だが、実際の所はそう易々とはいかない
 なぜならVRには少なからず興味を持って飛び込めたが、『見た目が周囲から浮いているようなアバター』には抵抗感や恐怖感があったり、興味を持てなかったりすることがある。いくらVRChatの規約などで目に入らずに済んでいるラインがあっても、それとは別に人間の本能的に無理、となってしまうラインがあるかもしれないし、そうでなくても個人的な好みのラインもあるかもしれない。

 そういったものを覆すことは容易ではありませんし、自分自身はともかく他人のそれを覆そうとしようものなら方々から反発を受けることは必至でしょう。

 結局のところ、私がこの記事を書いたところで(所詮説得力に欠ける調査方法だし)VRChat界隈が大きく変わることはなく、気がつけば別の論点が降ってきてあっという間にこの話題が忘れられてしまうのだと思う。
 よって、全体からみた『見た目が周囲から浮いているようなアバター』の肩身の狭さはそう簡単に変わるものではないとも思っている。

 こんな諦めにも似たことを書いていると、ふと、怪獣キャラが好きだった私の旧知の友人がある時VRChatに遊びに来てくれたものの、数日も立たないうちにぱたりとVRChatに来なくなっていたことを思い出した。
 結局彼がその理由を口にすることはなかったが、おそらくこの記事で私が思いを巡らせていたようなことに彼は早々に気づき、この場を去っていたのかもしれない。

 はっきり言えば、世の中の大きな流れを変えることは難しい。けれど、それと比べれば自分一人が変わる程度ならさほど難しいことではない(十分難しいが)。
 ならば自分が認知している範囲だけでも、アバターを使う自由を今よりも許容できる自分でいられるように努めていきたい。

 夏が壊され、変革が生まれ続けるVRChat。果たして人々の認知は変わるのか、そのままなのか。いずれにせよ、私は自分にできることから少しずつ始めることにする。


そういえば、くらげみたいなアバターってあるんだろうか。


記事サムネイル:Stable Diffusionを用いて、"Freedom of VRChat Avatar"というpromptで生成した画像。


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