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「絵」に出来る事

まず始めに申し上げます。

この記事はボクが暇な時間にぼんやり頭の中で考えている事ばかりで他の人が見たら退屈かも知れません、注意です。。。


・2枚の絵

今から4.5年前です。
ボクは1枚の絵と出会いました。
ドラクロワ作「民衆を導く自由の女神」
という、フランス革命時代に描かれた絵です。
…精巧に作られたレプリカですけどね。
徳島県の大塚国際美術館で見た時に圧倒されました。
前置きしましたが当然革命の絵ですから扇動的で勇壮な内容です。
ですが

「自由と平等を勝ち取るために(※ボクの抱いた感想)」
という、作者が込めたであろう強いメッセージ性に心を打たれました。
こんなに人間が作った作品が、違う人間の心を揺さぶる力があるのかと感動した次第です。


そしてもう1枚は
「貴婦人と一角獣」という連作の巨大タペストリーです。
シンボリックな女性と、寄りかかるユニコーンという非常に謎めいた作品です。
そして仏語で「我が唯一の望み」と記されています。

未だにタペストリーにいる動物は何を表しているのか?
ユニコーンの意味は?
そもそも一体全体何の目的で製作されたか?

どれも憶測での話で真の意味は全く不明な
「異界」の様にも見えるタペストリー。

神秘主義な所があるのか、この「貴婦人と一角獣」のタペストリー群にも惹き付けられました。

そしてこの、後年まで謎のまま、それでいて人を惹き付ける不思議な力がある作品にボクは「美しさ」と「見た人に問う」事の大事さに気づかされました。


ボクの中ではこの作品達が猛烈に心を打つアートとなって、離れません。

そこで思ったのですが
「どうやら絵という物はとてつもないパワーがあるぞ」

何世紀にも跨いで人を惹き付ける作品を自分も描いてみたい。
こう思ってしまったのです。

・絵は生活必需品ではない

話は変わりますが、絵は生きるのに必要な必需品ではありません。
スーパーの特売で買える訳も無ければ、スナック菓子のように気軽に買う物でもないです(特に日本は住宅事情などがのしかかる)。
生きるのに必要でない物に何故人間は惹かれて、作るのか。
産業革命以降なら写真でいいはずですが、写実画は現物を超える不思議な魅力をはらんで今も作られています。

絵、アートは何故人間を惹き付けるのでしょうか?

どうして良い絵は人の心に残るのでしょうか?

例え話ですがこの世のありとあらゆる物、街中の看板からお菓子のパッケージや洗剤の入れ物など全てから「文化的なデザインやアート」を排除したとします。
音楽も小説も漫画も映画も何もかもが無かったら、それはとてもとても退屈かつ無機質かつ不気味な光景へ世の中が変わるでしょう。

人間には何故か文化、アートが必要なのです。
生きるためには衣食住があれば良いだけです。
では何故人間は生活を文化的な物で彩るのでしょうか。

ラスコーの壁画(※人類史の中で最初期の絵とされる壁画)を当時の人が生み出したように。


・文化や絵は何故生まれたのか?

昨今疫病や戦争や経済不安など不安定な世情を鑑みて思ったのですが、絵は

「祈ること」

から生まれたのではないか、とボクは考えます。
祈ると言っても特定の宗教の様式ではなく漠然とした、人間にはどうする事も出来ない定まった律のような者へ祈ることです。
先程文に挙げたラスコーの壁画には動物が描かれています。
きっと家畜でしょう。
大昔の大昔ですから今の様な医療もなければ立派な建物を作る機械も快適に過ごす為の電気も水道もガスもありません。
ありとあらゆる自然の猛威がダイレクトに人間に襲いかかってきたハズです。

ボクの推察でしかありませんが、壁画を描いた人は自分達の生活や家族や友人、世話をする動物など全ての無事と安寧を「祈って」あの絵を描いたのではないでしょうか。

人間は弱い生き物です。何かに縋りたいと感じるのは過酷な自然の中での生活では当たり前の感情です。
極めて日本人的な宗教観、価値観になりますが「万物に人智を超えた者」を見出して、それに祈りを込めたのが文化の始まりだと推察します。
文化と宗教の関係性については割愛しますが、ありとあらゆる文化的な物は宗教と密接にリンクして発展しています。

祈ること

広大で膨大な世界の前では人間ではどうしようも無い事物が多過ぎるので、人間は祈って何かを創るのではないでしょうか。
文化の原初はそこだとボクは思います。

・絵にできること

絵は誰かのお腹を充たすことはできません。
絵は怪我を治せません。
絵は戦争を止められません。
絵は無力です。

ハッキリ言います。
「絵に出来ることほとんどありません。」

けど誰かの心を充たすことはできると思います。
この病んで荒んだ世界で、欠けてボロボロになった誰かの心を充たせる絵を描けるように。

「大好きな人達が生きているこの世界をほんのちょっとだけ、絵で良く出来るように。」
残りの人生はそれに使おうと思います。

それがボクにとっての「絵に出来ること」で「アート」の答えです。

:2023年2月8日 加筆、修正

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