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未来への扉

2019年5月12日にビストロ・レクレ・神戸を開業した。約1年前まさかこのような歴史に名を遺す事態になるとはもちろん想像もしていなかった。

店の扉のお話を少し。大切に保管されていた扉を木國堂という家具屋さんから譲り受けた。この扉は、旧神戸大丸の食堂の扉だったそうだ。ナショナルシティバンクオブニューヨークの神戸支店として1924年にウィリアム・メレル・ヴォーリーズ氏により建てられ、後に神戸大丸となった建築物にあったものだ。

ヴォーリーズ氏はアメリカ人建築家であり音楽家、社会事業家、信徒伝道者だった。自分がこの人物を知ったのは、兵庫県の誇る女流作家・玉岡かおる女史の著書「負けんとき: ヴォーリズ満喜子の種まく日々」を読んだことによる。決してその人生は順風満帆ばかりではなく幸せな時など数えるほどだ。

明治時代の日本において異国人が発信することは受け入れがたい土壌があったことは想像にたやすい。しかし、彼は多くの優れたことを発信し続けた人物。今も各地に残る西洋建築はヴォーリーズ建築と称され、その素晴らしさは今も評価は高い。戦後処理の中「天皇=国民の象徴」と主張し、天皇を守ったアメリカ人ともいわれている。

自分たちが店を立ち上げることを考え始めたとき、「何かを作っていく」「何かを発信していく」そんな理想を語っていた。その何かは単に料理やワインではなく、飲食人として食の文化を広めていくことだ考えていた。そんな時にこの店の扉が決まった。

もっと過酷な事もあるはず。コロナウイルス禍で右往左往していても違う角度の何かの影は忍び寄っているのかも知れない。それは日照り、大雨、台風、竜巻、それとも地震なのかわからないが常に平常心で望まねばなるまい。今できることを精一杯やり、1日も早く日常を取り戻せることを待ち望むだけです。


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