はじめての個展について
「何かを作ること」は、ずっとわたしと社会をつなぐ橋だった。
話し下手な自分。
人に嫌われたくないから外に出ない自分。
傷つくくらいなら、ひとりでいればいい。
でも、ひとりでいると寂しい。
そんな「誰かと繋がりたい」と思う自分と「ひとりでいたい」という自分の間で、わたしは何かを作ってきたのだと思う。
評価される世界の外側で自由にものを作っていた子供時代を通過し、才能という言葉の前で挫折した思春期も通過して、大人になった今、不思議なもので、また子供の頃のように自由に作りたいもののアイデアが浮かぶようになった。
17歳から、音楽を発表するようになってからずっと、わたしの肩書きはシンガーソングライターだ。30歳になり、10年以上も大好きな音楽に関われるわたしは幸せと思うが、正直なところ、音楽だけでは伝えきれない思いがある。だから、音楽からはみ出した思いをは絵や文章にして表現したりする。それらは、誰かと繋がりたいという抑えることのできないわたしの願望によって生まれる(生まれてしまう)のだ。
そうして、今年困ったことになった。
とあるテーマで曲を書かなくてはいけないのに、何も言葉が出てこないのだ。普段、わたしは歌詞から曲を作るので言葉が出てこないんじゃ何も始まらない。どうしようかな、困ったな、と思ったものの、締切にまだ余裕があることに甘えて紙に絵を描き始めた。「なんで絵?」と思われるかもしれないが、なんか楽しくなっちゃって‥という子供じみた理由だ。曲の締切はまだまだ先だし‥先だし‥うん、先じゃんか。という曲が書けないという現実から逃避するためでもあった。(情けない)
しかしやがて、絵を描いているとなぜか言葉のかけらが出てくるようになった。あれ、これもしかして歌詞できちゃうんじゃないの?と思ったわたしは調子に乗ってどんどん絵を描いた。コンビニで買った「おえかきちょう」や、キャンバスに毎日指で色を塗り続けた。(なぜ指で描き始めたのかという話は長くなるのでまた気が向いたら(需要があるのかわからないけれど)書こうと思う。)わたしの指の爪と肉の間が、絵の具で真っ黒になった頃には(それが全然洗ってもとれない)、驚くべきことに60点ほど絵を描いてしまっていた。確実に描きすぎた。捨ててしまうのも勿体無いし、友達に配るのも(絵のプレゼントなんて)気味悪がられるかもしれないし‥。結果、歌詞が書けなくて困っていたのに、この大量の絵をどうしようかという悩みまで追加されてしまった。あちゃー、と途方に暮れていた。
そんな時、非常に幸運なことに、描き上げた絵たちが「誰かと繋がる」チャンスをくれ、いくつかの出会いがあった。
元々iPadでイラストを描いていたとはいえ、シンガーソングライターのわたしからすると絵の個展は未開の地。作品に対するフィードバックやギャラリーの話など、知らないことをどんどん教えてもらえる出会いは、楽しく、刺激的だった。
2023年12月12日から23日までは東京、渋谷SACSで。
2024年2月後半ぐらいから、京都・香港・台北・マレーシアをわたしの絵がツアーをすることになった。
12月17日のワンマンライブは、渋谷の個展会場にて絵に囲まれながらのライブとなる。
東京だけならず、いろんな場所で開催ができること、尽力してくださった皆様に感謝します。
改めて、今回の個展は「絵を作る」ことで誰かと繋がることができたら‥そんなわたしの望みが詰まっています。入場は無料ですので、皆様、近くにお越しの際はぜひ足を運んでいただければ。(作品の販売もします)お待ちしています。
Ps.ちなみに無事新曲の方も言葉が出始め、制作中です。(ほっと胸を撫で下ろした)
来年の発表となりますが、引き続きシンガーソングライターSETAもよろしくお願いいたします。
「見ないで」SETA 画用紙 アクリル絵の具