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歌を忘れたカナリヤは

今までノートに描きためてきたラクガキたちを本にして販売します。私の個展に来たことある方はご存知の、会場の部屋の隅に置いてある例の公開処刑ノートですね。本当は久しぶりに個展でもやりたいんだけど大変じゃないですか、個展を開催するって…。それでも何か外に発したいナァと思い「今までノートに描きためてきた絵ならまとめるだけだし、気楽に発表できるんじゃないか?」と思いこれに至ったワケです。展示会場に置いておいて色んな人のリアクションをこっそり観察しているのだけれど、まぁ評判もそこそこなんじゃねーかと勝手に自負していたりもするのですが…

今まで会場に置いていたのは2014年の4月以降に描いたものだったんだけど、どうせまとめるならこのノートを描き始めた大学時代の2011年の4月まで遡ってやろうということになり、実に12年分ものラクガキをスキャンし編集するハメになりました…もちろん全ての絵を収録しようと思ったらとんでもないことになってしまうので選定しながらの作業でしたが「これは人に見せたくないな、思い出したくないな」という理由で選考から外したりはしてません。むしろ積極的に載せています。「これは人前に出しても嫌われずにウケるはず」とかいう主観的な安心で固められた作品集なんて観てもクソつまらないじゃないですか。なので痛痛しい絵や詩もたくさんあるのですがそういうことです。

収録内容についてですが「ラクガキ集」と銘打っているので今まで発表してきた作品ではなく、本当にノートにフラッと描いたラクガキたちがメインの本です。まぁノリでちゃんとした作品もいくつか載せてはいるのですがあくまでラクガキが主体ということです。絵だけじゃなく詩というか日記というか文字もたくさん書いてあります。絵と一緒にそのときの想いを書き殴るのが癖というか習慣みたくなってしまっているので全ページが絵というワケではないです、そこら辺ご了承くださいませ。
それと今まで発表してきた作品のエスキース(着想や原案)だったり、あと壁サイズの絵だとさすがにスキャンできないので写真で撮影したものもあります。未発表作品もたくさん収録しています…って書きながら思ったのだけれど発表の機会がほとんどないのでほぼ未発表作品ですね(笑えない…)

それとタイトルについて。当初は「300ページくらいに収まるんじゃね?」と余裕こいてたんだけどスキャン作業が350ページを超えたあたりから「アレ…?まだ半分くらいしか終わってねーんだけど?」となり、400ページを超えたときに「さすがに厚すぎて読みづらいから2冊に分けるしかない…」となり、全ての作業を終えてみたら656ページという超ボリュームとなってしまいました、なので1巻と2巻の同時発売的な経緯になったワケでございます。

1巻のタイトルは当初から決まっていました。ノートには「Nothing」というタイトルで何度も詩が書かれていて、意識してたワケじゃないんだけどなんとなく自分の中で「何もない」ことに対する関心があったんだと思います。おそらく始まりは負の感情のほうで「何をしてもどうせ最後には何もなくなるのなら何をしても仕方ない」的な、あきらめの想いが綴られていました。でも面白いことにノートの後半のほうでは「何もなくなるのなら今を精一杯生きなければ!」的なことが書いてあって「じょ、情緒…」と自分で自分に突っ込みたくなるほどの巻き返しっぷりでしたが、おそらくそういうことなんだと思います。後付けでしかないのだけれど前者、後者のどちらの意味合いも含ませられるのでは?という、今と昔の自分を紐付けられるようなタイトルだと思ったので採用しました。

そしてまさか2巻に分けられると思っていなかったので安易に「Nothing②で良いんじゃね?」とも思ったんだけど、それだとこの先(作るか分からないけど)ラクガキ集のタイトルが「Nothing③、Nothing④…」で続くのもなぁ、一過性のタイトルでもあるし…と思い、前前から次の個展をやるならこれにしようと妄想していた言葉があったのでそれを採用しました。

「CANARY(カナリヤ)」です、小さい鳥ですね。「カナリヤ」という童謡の歌い出しに「唄を忘れたカナリヤは後ろの山に棄てましょか」という歌詞があります。それとまだガス検知器がなかった古い時代、炭鉱を掘削する際に鳥カゴに入れられた彼らに与えられた仕事は炭鉱内の毒ガスをいち早く感知し、己の身をもって人間に危険を知らせることだったそうです。呼吸数、心拍数が人間の数倍以上を誇る彼らは、人より早くガス中毒に侵されて鳴くのをやめざるを得なくなります。人間にとってカナリヤの美しい鳴き声が彼らの存在価値に繋がっていたんですね。
2020年以降色色あって絵を描く機会が減りました(というか意図的に減らしたんですが…これについては本の中に書いてあるので割愛します)「絵を描かない自分の存在理由ってなんなんだろう」と考えたとき、鳴き声に価値を見出されているのに唄を忘れたカナリヤと、描くことを忘れてしまった自分自身を照らし合わせてリンクするものがあるなと思って、こっちはこっちで採用することになりました。

長くなりましたね
というワケでホリウチヒロミ ラクガキ集
①Nothing(300ページ)
②CANARY(356ページ)
2冊同時発売です。それぞれ表紙と詩も新しく描き下ろしております。

興味があったら是非ご購入ください、詳細は近近お知らせできると思います。

今までの作品を形にできてよかったなぁ^^

1巻 Nothing 表紙
2巻 CANARY 表紙

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