恭次郎さんと土屋文明記念文学館
最後に前橋に足を運んだのは二年前、二〇二〇年一月に前橋文学館のホールで行われたイベントでした。まだコロナウイルスが蔓延する前で、このときがかろうじて何も気を患うことなくできた最後のライブとなってしまったため、ことさら強く自分の心に残っています。
そのとき、イベントのテーマになったのが朔太郎さんと同郷の詩人・萩原恭次郎でした。僕はこのイベントで恭次郎さんの詩に曲をつけて歌ったのです。
恭次郎さんの詩集『死刑宣告』には度肝を抜かれました。その鋭い言語感覚もさることながら、詩の中に図形を組み込んだり、一部の文字だけ強調して大きくするなど、表現が多種多様で視覚的にも大変面白かったのです。
恭次郎さんの詩は前衛的な部分が多く、ことばに独特のリズムを持っており、メロディをつける作業は苦労しましたが、そのぶん、楽しい思い出としても記憶に強く残っています。
去年の六月に久しぶりに群馬を訪れることができました。感染対策のため、予約制になっていた前橋文学館には時間の関係で寄ることができなかったのですが、高崎にある土屋文明記念文学館を初めて訪れることができました。そのとき文学館では『わらう! 太宰治展』が催されていたのです。
暗いイメージがつきがちの太宰の、そのユーモアと滑稽の部分を掘り下げ、取り上げた楽しい展示でした。
文学館を訪れた後、高崎中央銀座商店街を散歩し、コンパルでソーダ水を飲みながら、手に入れた図録を読む時間は本当に嬉しく楽しいものでした。
11月27日に土屋文明記念文学館への再訪が決まりました。
朔太郎さんの没後八十周年を記念し、前橋文学館が中心となって全国で同時多発的に開催される『萩原朔太郎大全2022』のイベントの一環として、かの文学館でライブをすることになったのです。
ギター一本で歌えるという弾き語りの特性もあって、普段からライブハウスではない場所で歌う機会が多く、特に文学館や書店でのライブは自分のもっとも得意としているところです。
昔からフォークシンガーは詩人の詩に曲をつけて歌ってきました。
その系譜の先に今こんな歌い手がいるのだと、皆さんに感じていただける機会になったらいいなと思っています。
022年11月27日(日)土屋文明記念文学館(群馬)
『萩原朔太郎大全2022 私の同郷の善き詩人』
文士の作品に曲をつけて歌う「文学とフォーク」
14:00~14:40
無料 100名限定
要事前申込 先着順
世田谷ピンポンズ
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