百年後に滅びる地球で、僕たちは明日をも知れぬ日々を生きる #1

「じゃあまたな」
まだ酔いの残る徹夜明けの顔で、お互いかろうじて浮かべた微笑を交わして家を出る。
酔いと睡眠不足から来る猛烈な眠気。
気を抜けば山手線を何周もして、昼を迎えることになるだろう。
これから始発で帰って仮眠をとって、夕方からバイトだ。体調不良とか言って休もうか。
それでも良いかと思うくらいには鈍った頭で、よろよろと歩道を歩く。
街はすでに新しい朝を迎えた、パリッとしたスーツに身を包んだサラリーマンや、散歩に出かける老人、ジョギングする女性が往来する。
まだ昨日を引きずったままの僕の重い足取りとはまるで違う、軽やかな希望に満ちた足取り。
そんな風に感じて、僕はイヤホンで耳を塞いで、うつむきがちに駅徒歩15分の道のりを耐え忍んだ。
友人と徹夜で飲み明かした後の朝は、高揚感が地面に軟着陸するかのように、どこか伏し目がちな心地で、事務的に帰路に着くのだ。

ガタンゴトン、揺られる電車の中で、寝過ごさないようにぼんやりと見つめるスマホの画面。
『無事に電車には乗れた』『ねみー』
LINEに既読はつかない。今頃友人は深い眠りについていることだろう。
ぼんやりと眺めるTwitter。今朝の朝刊のニュースがトレンドとして流れてくる。
『このままでは百年後に地球は滅びると専門家が警鐘』
環境問題を訴える見出しだろうか。
百年後なんて知るかよ。
俺の明日を心配してくれよ。
ぼんやりとそんなことを思ったあたりで、僕の瞼は鉛のように重くなり、抗いきれぬ睡魔に引き摺り込まれたのだった。


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