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文化観光高付加価値化リサーチ 第三章 地域文化の固有性

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日本の地域それぞれに地域ならではの固有な文化が存在する。地域固有の文化は長い歴史を持つ文化財から、今を生きる人々の日常の生活文化まで幅広くさまざまだ。それらを市場価値…
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#現代アート

向井山朋子(ピアニスト / アーティスト / ディレクター) - 回っていく、つながっていく、引き継がれていく人、場所、アーティストの信頼関係

関係性のなかで生まれる「信頼関係」が、文化の醍醐味 青森県八戸市にある八戸市美術館が新しく生まれ変わり、昨年11月に開館記念として、八戸に滞在しながら地域住民の方々と共につくった音楽パフォーマンス作品「gift」を上演しました。「おもい つつむ わたす うけとる つながり」をテーマに創作したこの作品は、「ギフト」というコンセプトを探求したものです。人のふるまいに帯びる礼節や歴史、想い、信頼を再考し、理解するためのワークショップを行ってみたかったのです。一般から募集した年齢も

吉川由美(文化事業ディレクター) - 地域の人々が生活から醸し出す不可視な文化、そこに触れる場所としての「美術館」

美術館を通して「地域の営み」を知る まちは何でできているかといったら、人でしかありません。その人々がつくる文化や風景が固有の魅力を生み出します。震災の津波でほとんどの家や建物、それに伴う風習などが失われた地域がありますが、それでも、人さえいればまちは続きます。人々の営みこそが地域の資産で、それをまとめたら百科事典クラスの分厚い本ができるし、世界の人がそれを見たら、暮らしの中に豊かな文化が共存していることにびっくりすると思います。 ですから美術館は、訪れる人にとって、地域の

杉本康雄(青森県立美術館長 / アートミュージアム5館連携協議会) - 地域の魅力を発見していく起点としての「美術館」

アートツアーのあり方が大きく変化していると感じます。デジタル化が急速に進み、データによる分析力、論理力を中心とする左脳中心の世界が強まっているイメージがあるかもしれません。それと同時に感性や創造性を中心とする右脳の世界やアートへの注目が強まっており、この傾向は新型コロナウィルスの登場によってさらに顕著になりました。これまで当然のものとされていた価値観が崩れ、自分がどう考えるのか、自分なりの答えをどう作っていけるのか感性や発想力が問われる時代に入っていると感じています。 しか

谷口弦(名尾手すき和紙 / KMNR™主宰) - 300年の歴史ある地域文化に、自身が取り組む意味とは

先人たちがいること 社会人になって1年半は大阪と福岡で働き、名尾和紙(※1)に帰ってきたのは23歳のときです。最初は毎日、紙を漉いて作業を覚える修業に取り組んでいました。そんな日々のなかで、他の和紙の産地や伝統工芸は今どういう状況にあるんだろうと周りを見ていろいろ調べていたら、自分が思っていた以上によくない状況にあることがわかりました。果たしてこのままやっていていいのだろうか?と思い始めたんです。「このままでは駄目だ、何かしなくては」と思っていたころ、ブランディングというア