器
少し普段より残業をしただけで。
少し普段よりも疲れただけで。
普段は流せるものが引っかかる。
いちいちモヤモヤしてしまう。
心から毒を吐き出す、膿を出さずにはいられない。
すぅーっと内側で消化できるほど心が満たされてはいない。
Instagramのストーリー。
見なきゃいいのに開いてしまった。
今日もセルフブランディングが並ぶ。
未就学の双子を連れて飛行機に乗る同級生。
わざわざANAのプレミアムクラスで食事している写真を使っている。
未就学児二人を加えた三人分のプレミアムクラスの運賃(お盆時期)、軽く払えるそうだ。
女子大卒でここまで到達すれば勝ち組なのかな。
もしくは、そう思い込みたいだけなのかな。
夏の甲子園、早実を応援に行った卒業生。
去年の慶應ムーブに続いて今年はこれ。
そのまま早大に通いつつ、乗馬を日常的に楽しんで、とても貧しくて大変な大学生活だったそうだ。
こんな感じの人から「学歴中心の履歴書から経験中心の履歴書へ」とかいう言葉が出てくるのかもしれない。
30歳でもこの器。
全く残念な大人になってしまったもんだ。
そんな感じでスマホを閉じて地下鉄を降りた。
雨上がりの夜は30℃を下回っていた。
これで涼しいと感じてしまうくらいには夏に侵されている。
月の色がやけに濃い。
少しだけ秋を感じた気がした。
そこから小さいときの記憶を思い出す。
マンションに家族4人で引っ越した季節も秋だった。
ニコニコドーで総菜を買って食べた。
昭和50年代からある店舗だったそうな。
4人で川の字になって和室で寝た。
早速破れた障子の隙間から綺麗な秋の月が見えて、虫の音が聞こえた。
ふぅ、少しは心が安らぎを取り戻したようだ。
熱くなってはいけない。
冷静にいこう。
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