No.35 園児の母になる。子供を通して経験すること
子供の幼稚園入園前、多くの母は裁縫マシンと化します。
わたしも例に漏れずやりました。作りました。作りまくりました。
手提げ、体操服入れ、上靴袋、運動靴袋、コップ袋、ランチョンマット、ティッシュケース、クレヨンと絵具と粘土それぞれのケースの蓋を止めるゴムバンド。あと目隠しも。新生児を抱えてこんなにたくさん作りました。
どんな試練……
既製品はNGで全て母の愛のこもった手作りの物を。
という、丁寧な幼稚園でした。
それぞれデザインと規格の指定があったけれど、慌ただしい中作ったので
計算を間違えたりして、いざ使ってみたら袋が小さいとか。
子供もただ入園するだけではないのだなと、初めて知った私でした。
まつり縫いくらいまではなんとかなるけれど、小物の裁縫などやったことがありません。
突然求められるレベルか高い……
「パソコンは、ネットショッピングとYouTubeを観るのに使ってます♪」
という新入社員に、
「その資料、ワードとエクセルで作ってください。
エクセルの数字は計算式でお願い。あ、そっちのはパワポで。
ここに見本があるので、参考にしてくださいね」
といきなり仕事をふるようなものです〜。
幼稚園小物の作り方が載っている実用書を買いました。
入園後、どの子も個性豊かな手作りの物を使っていたので、母たちは頑張ったのです。しかもめっちゃ凝っていた。裁縫スキル、すごかったです。
手提げは指定された紺の布があり、その紺に綺麗な刺繍がされていたり、
手が込んでいる……
新入社員でも、難なくパワポでプレゼン資料を作れる人もいるのと同じですね。
その幼稚園は「モンテッソーリ教育」を取り入れていました。
モンテッソーリとは何ぞや? でしたが、本を読み、その考えに共感したため入園を決めました。
ものすごく簡潔にいうと、
「子供自身がやりたいことを、好きなだけ気の済むまでやることが大切」
というのが基本の考え方でした。
モンテッソーリの教材を使い、その日その時にやりたい事を子供自身が選び、それに取り組みます。それを「お仕事」と呼んでいました。
「今日はどのお仕事やろうかなー」という感じです。
全ての教材は数に限りがあり、人気の「お仕事」は順番待ちです。
時には何日、何週間と、前の子が完成させるまで待つ必要があるものも。
それでも子供たちは楽しみにしながら待つのです。
そしていざ自分の番が来た時は、期待と喜びがMAXに膨らんでいます。
娘はモンテッソーリの「お仕事」にはまりました。
その幼稚園で大正解でした。
どのクラスも縦割りで、同じクラスには同級生が10人前後。
そのため、同年の園児は親子ともに仲が良く、
ここで私は良い友人たちに出会いました。
子供の通う幼稚園で、親の私に友達ができるという視点がなかったため、ありがたい誤算でした。幼稚園で親の私に友達ができるとは。
だいぶたってから知ったのは、どのクラスも親の人間関係が平穏というわけではなかったようです。私達親子は恵まれていました。
他のお子さんは末っ子か一人っ子で、赤ちゃん連れはウチだけ。
そんなこともあり、私は子育ての面で友人たちに随分助けられ、それがどれほどありがたかったか。
朝と帰りは保護者が我が子の送迎をすることになっていて、当時私は息子をベビーカーに乗せ、娘と二人で歩いて通園していました。
雨の日はベビーカーにカバーをかけて、傘をさして歩きます。
ほんどの家庭は自転車を使っていて、雨の日でもレインコートを着て逞しく疾走していました。
入園後しばらくたったある雨の朝、
「今日は私が娘ちゃんと一緒に幼稚園に行きます。
〇〇時にマンションの前で待っていますね」
と同じクラスの友人からメールがきました。
自転車通園の友人が、ウチの娘も一緒に送迎をしてくれるというのです。
「一緒に連れて行こうか?」ではなくて、「行くのでよろしく」と。
なんて思いやりのある言葉かけなのだろう。
しかもウチに寄ると幼稚園まで遠回りになるのに。
ありがたくてジンときて泣きそうになりました。
傘をさして、雨の降る中を、子供を乗せた重いベビーカーを片手で押すのはなかなか大変でした。片手ではハンドル操作も思うようにいきません。
想像でしたが、当時小学生の息子さんもいた彼女は、ご自身の経験からそれを知っていて、雨の日に私達親子のことを思い出し、そう声をかけてくれたのではないかと思いました。
ウチが自転車通園ができるようになるまで、その友人は、雨の日はいつも娘を迎えに来てくれて、帰りも家まで送ってくれました。
ある時「いつもありがとう。助けてもらってばかりで私は何もできなくて……」という私に、
「ううん。いいのいいの。私も娘が赤ちゃんの時は、助けてもらってばかりだったから~」
じーん……本当に優しい人でした。
娘たちが卒園をする時、年長では違うクラスになってしまっていたその友人に声をかけました。
「いつも助けてくれてありがとう。あなたの存在にどれだけ救われたかわからない。本当にありがとう。
4月には息子が入園するけれど、もしあの頃の私のような人がいたら、
あなたや皆んながしてくれたことを、今度は私が出来たらと思うよ。
同じクラスになれて良かった。楽しかったね。ありがとう」
卒園後はみな、進学先がバラバラになってしまいましたが、今も時々当時のことを懐かしく思い出します。
今日も幸せな一日でありますように。
Love & Peace,
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